DC運営 基礎の基礎〜新米担当者が「ゼロ」から学ぶ 【第7回】海外と日本のDCを徹底比較 〜「老後の所得確保」の目標設定が曖昧な日本
日本に確定拠出年金(DC)が導入されてから25年あまり。多く利用されるようになりましたが、海外のDC制度と比べると特徴的な違いがあるようです。今回は、木須貴司さんに米国や英国、オーストラリアなどの制度や事例を紹介してもらいながら、日本のDC制度を俯瞰してみたいと思います。
海外でもDC制度を選好
これまでの回でも、海外のDC制度をある程度紹介してもらいましたが、今回は改めて日本と比較しながら教えていただけますか。
木須 海外のDC制度と日本との比較の概要を【図表1】にまとめました。
注2: 現状はDBおよびハイブリッド型だが今後、DC等に移行する予定
注3: 円換算は2025年8月末の為替レートに基づく
出所:各種資料よりかもめリサーチ&コンサルティング作成
日本に限らず多くの国で少子化・長寿化が進んでいます。そのため、長寿リスクがある終身年金のDB(確定給付企業年金)や賦課方式の年金よりも、DCが選択される傾向が世界全体に広がっています。
【図表1】の中でも、ドイツは最近まではほぼDBか、受け取る金額に最低保証がついたDC制度が中心でした。しかし2017年の法改正以降、最低保証がないDC(普通のDC)が広がっています。オランダも現時点ではDBが中心ですが、DCおよびDBとDCの要素を組み合わせた「ハイブリッド型」制度へ全面的に移行する法律が成立しています。また、この表にはありませんが、中国でも大都市で実験的に実施されていたDCが、今年からは全国展開されています。
掛金額や運用手法が日本と異なる
【図表1】を見ると、米国や英国、オーストラリアと比べて日本のDCの規模が小さいことが分かります。
木須 歴史の違いもありますが、それに加えて①米国などは日本より掛金額が多い②運用手法が違う。日本は保守的、元本確保中心なのに対して、海外は株式配分が高め――といった理由もあります。
米国ではインフレ調整で掛金引き上げ
特に米国の401(k)とIRA(個人退職勘定)との差は大きいですね。
木須 米国の場合、COLA(Cost of Living Adjustment)と呼ばれるインフレ調整の仕組みで、掛金額が毎年自動的に引き上げられています。さらに50歳以上であれば、十分に掛金枠を使いきれなかった場合、一定の範囲内でキャッチアップ拠出も認められています。米国で投資信託が発展した背景には、確定拠出型の個人年金の401(k)や、退職後の個人積立制度であるIRAがあるとも言われているのです。資産運用業界にとっても401(k)/IRAは極めて重要な存在となっています。
資産配分の75%以上が株式
資産運用の手法、そして対象資産の点で、日米のDCでどのような違いがありますか。
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