4~6月期実質GDP前期比年率+1.0%、8月「ESPフォーキャスト調査」の予測総平均値+0.37%を上回る

宅森 昭吉
2025年の4~6月期実質GDP(季節調整値)第1次速報値は前期比+0.3%、前期比年率+1.0%。過去の数値が改定され5四半期連続でプラスとなった。一部で懸念された2四半期連続マイナス成長は回避され、にわかに景気後退説が出ることもなく、「緩やかな景気回復」を裏付けた。
実質ベースの内訳では、個人消費は前期比+0.2%の増加、夏物商品や自動車への消費が増加した。ソフトウエア投資が伸びたとみられる設備投資は前期比+1.3%の増加だった。財貨・サービスの輸出が前期比+2.0%の増加となった。
GDP公表日の2日前、2025年8月13日に発表された8月の民間エコノミストのコンセンサス調査である「ESPフォーキャスト調査」では、4~6月期実質GDP前期比年率の予測総平均値は+0.37%だったので、実績の+1.0%はこれを上回ったが、高位8機関の予測平均値+1.36%は下回った。
なお、低位8機関の予測平均値▲0.36%とマイナスだった。1~3月期実質GDPは第2次速報値時点では前期比年率▲0.2%だったので、場合によっては2四半期連続マイナスという、海外の判断だと景気後退となってしまう可能性もあったが、こうした悲観シナリオは回避された。
景気動向指数の機械的判断が5月速報値で景気後退の可能性を示唆する「悪化」になったが、結局一時的で、5月改定値で「下げ止まり」に戻ったように、紙一重で最悪事態は回避される状況が続いている。なお、景気動向指数の機械的判断は当面「下げ止まり」で安定的な状況が継続しそうだ。
実質GDP成長率は2016年7〜9月期から18年4〜6月期まで8四半期連続でプラスだったが、2024年4〜6月期から25年4〜6月期までの5四半期連続プラス成長はそれ以来の長さである。
25年4〜6月期の名目GDP年換算額は史上最高の633.3兆円になった。実質は563.0兆でこちらも史上最高だ。但し、4〜6月期の個人消費年換算額は、名目は340.1兆円で史上最高だが、実質では300.8兆円で史上最高だった消費税8%へ引き上げ前の2014年1~3月期310.5兆円を上回れ得ない状況が続いている。

名目の史上最高は2025年4-6月期は633.3兆円。
出所:内閣府
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名目の史上最高は2025年4-6月期は340.1兆円。
※2025年4~6月期第1次速報値現在
出所:内閣府
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悲観的な見通しでも、思ったほど悪い数字にはならなくなった25年度の実質GDP成長率予測
8月「ESPフォーキャスト調査」(回答期間:2025年7月30日~8月6日、回答者37名)で、2025年度の実質GDP成長率予測総平均値は+0.51%となった。7月調査の+0.48%から上方修正された。
7月「景気ウォッチャー調査」は、現状判断DIが45.2、先行き判断DIが47.3でともに3カ月連続改善した。この調査期間は7月25日~31日。7月23日(日本時間)の日米間税合意もあり、7月「景気ウォッチャー調査」ではトランプ関税の悪影響による経済の下押しは比較的軽微にすんだ。「米国の関税問題が一段落し、若干ではあるが先行きの見通しが立つようになっている」という北陸の一般機械器具製造業・総務担当のコメントがあった。
8月「ESPフォーキャスト調査」で、25年7~9月期の実質GDP・前期比年率の予測総平均値は+0.01%、低位8機関平均は▲0.75%となっている。低位予測はトランプ関税の影響が7~9月期に設備投資や輸出に表れるという悲観的な予測だ。
実質GDP・前期比年率の予測総平均値は10~12月期+0.65%、26年1~3月期+0.88%だ。15日に発表された25年4~6月期実質GDPを予測総平均値で延長すると、25年度実質GDP成長率は前年度比+1.1%となり、8月に発表された内閣府年央試算の+0.7%を上回り、昨年末の政府経済見通し+1.2%に接近する。
また、実質GDP・前期比年率の低位8機関予測平均は10~12月期+0.14%、26年1~3月期+0.31%だ。低位8機関予測平均で4~6月期実質GDPを延長すると、25年度実質GDP成長率は前年度比+0.6%となり、8月7日に発表された内閣府年央試算の+0.7%に接近する。悲観的な見通しでも、思ったほど悪い数字にはならないと解釈されよう。
令和7年度内閣府年央試算(令和7年8月7日)

(注)民間平均は令和7年8月ESPフォーキャスト調査
出所:内閣府、日本経済研究センター