学校法人・金融法人の担当者必見! 機関投資家ゼロからの資産運用 【もっと知りたい!債券】第3回 エマージング債に2つの「顔」〜外国通貨建てと現地通貨建てで大きな違い
【もっと知りたい!債券】第3回の今回は「エマージング債」です。通常あまり深掘りされませんが、通貨建てに2種類あり、利回り構成など特性が大きく異なるようです。投資するうえでのポイントなど、ラッセル・インベストメントの金武伸治さんに解説していただきます。
高い利回りが投資魅力
昨年(2024年)10月に公開した【株式編】第6回で「エマージング株」を採り上げました。その中で、代表的なエマージング債券インデックスが、「エマージング国」の定義として「1人あたりGNI(国民総所得)が一定以下の国」としていることを知りました。こうした開発途上的な国々の債券に投資する意義は何なのでしょうか。
金武 エマージング債(以下、EM債)の投資魅力、つまり主な投資意義や目的は相対的に高い利回りの享受です。
その意味では、第2回で説明した社債投資と同じです。社債のリスク源泉は企業クレジット、つまり個別企業の信用リスクであり、EM債のリスク源泉はソブリン・クレジット、つまり個別新興国の信用リスクとなります。このため、広義のクレジット債投資におけるリターン源泉の拡張とリスク源泉の分散という投資意義もあります。
発行形態の違い=利回り構造の違い
EM債には「2つの顔」があるとか。
金武 そうです。EM債には「外国通貨建てEM債」と「現地通貨建てEM債」があります。EM債にも国債や社債などが存在しますが、今回は国債をベースにしてお話しします。
【図表1】でイメージを示しました。外国通貨建てEM債とは、新興国が米ドルや欧州ユーロなど外国通貨建てで発行する債券です。このため発行国は外貨を調達し、クーポンや償還元本も同じ外貨となります。
現地通貨建てEM債とは、新興国が自国通貨建てで発行する債券です。例えばブラジルであれば、自国通貨であるブラジル・レアル建てで発行する、といったことになります。
この発行形態の違いが、利回り構造の違いを生み出しています。
【図表2】をご覧ください。外国通貨建てEM債の利回りは、例えば米ドル建ての場合、残存年数に応じた「米国国債利回り+発行国の信用スプレッド」で構成されます。

前回の第2回で、社債の利回りが「国債利回り+発行企業の信用スプレッド」と説明しました。その構造と全く同じで、発行体が企業から新興国に変わっただけです。
一方で、現地通貨建てEM債の利回りは純粋にその国の金利となります。つまり残存年数が5年のブラジル国債の場合は、その利回りは5年ブラジル金利となります。
外国通貨建ては低格付の傾向
外国通貨建てと現地通貨建て。それぞれのエマージング債の「構造」の違いは分かりました。では、それによる「特性」の違いはあるのでしょうか。
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