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年内利上げ期待は後退も日銀を巡る不確実性は一層高まる
新たな金融政策ガイダンス

調査本部長 チーフ・エコノミスト
馬場 直彦
2025年5月1日の金融政策決定会合で日銀は現状維持を決定した。もっとも、金融政策ガイダンスに変更が加えられたほか、「展望レポート」では経済見通しが大きく下方修正された。これに伴い当社は、従来7月としてきた追加利上げ予想を2026年1月に先送りした。ただし、年内利上げの可能性も相応に残り、日銀を巡る不確実性は一層高まっている。
金融政策ガイダンスは、「経済・物価見通しが実現していけば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げる」となった。利上げ路線自体は維持されたが、「経済・物価情勢の改善に応じて」との留保条件が加わった。
一方、「展望レポート」では、トランプ関税を主因に、経済見通しが大きく引き下げられ、それと連動して物価見通しも2026年度に2%未満へと下方修正された。基調的なインフレ率が2%に収束する時期も後退した。これらを組み合わせると、日銀は追加利上げの判断を、成長率が回復パスに復するのを確認した上で行いたいとのメッセージが浮かび上がる。そして、今回可能な限りダウンサイドを織り込んで、次回上方修正に転じるタイミングで利上げしたいというのが日銀の狙いと思われる。
日銀が特に注目しているのは、関税の企業収益ひいては2026年度春闘への影響だ。対米交渉を経て関税の最終形が明らかされた上で、年内いっぱい程度かけて企業収益への影響を判断する方針ではないか。なお春闘への影響については、1月の支店長会議に向けた企業ヒアリングで十分把握可能だ。これらが、1月利上げを新たな標準シナリオとした主因だ。
年内利上げの可能性も相応に残る
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