コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツ 本邦投資家は代替資産のさらなる分散を。APACでは日本株への投資拡大に熱視線
グローバルで株式やクレジット、オルタナティブ資産の運用ソリューションを提供しているコロンビア・スレッドニードル・インベストメンツ。新年を迎え、同社のアジア太平洋地域責任者のジョン・アレン氏と、欧州不動産運用責任者のジョセフ・ヴロ氏が1月初め、J-MONEYのインタビューに応じた。
欧州不動産で分散拡大

アジア太平洋地域ヘッド
ジョン・アレン氏
2025年に入ったが、今年も不確実性の高い1年になりそうだ。
アレン 不確実性に拍車をかけているのが、米国における第2次トランプ政権の誕生だ。グローバル経済に多大な影響を及ぼす関税・サプライチェーンや、米国国内の税制および規制にどのような変化があるかが注目される。また新政権の下でインフレや雇用統計がどういった推移を辿り、FRB(米連邦準備理事会)の金融政策にどう作用するかは、目下、市場関係者の関心の的だろう。予想外に米国金利が下がらない市場環境を踏まえ、株式や代替資産への投資配分の拡大を検討する動きも散見される。
新政権のスタンスや実際の影響が明らかになるまでは、アジア太平洋地域(APAC)の機関投資家は「様子見」を選択し、資産運用における戦略的な意思決定はいったん落ち着くとみられる。当社でも、こうした変化がもたらす影響をマクロとボトムアップの両面から分析していくつもりだ。具体的な影響が明らかになり次第、ポートフォリオを個別証券単位で精査し、必要に応じて積極的な変更も行う。ただし、それなりに時間を要するだろう。
こうした環境で、顧客へはどのようなアドバイスをしているか。
アレン 不確実性の高い運用環境だからこそ、基本に忠実になることが大事だ。顧客には、国内資産を超えて積極的に分散投資を拡大していくように伝えている。株式比率が高まってきた中では、債券などクレジット投資とのバランスを意識すべきだ。
日本の機関投資家はAPACのほかの地域に比べて特に債券投資における自国バイアスが低いため、「国内資産を超えて」は当てはまらないかもしれない。その場合は、いっそうオルタナティブ分野の分散を拡大していくことに注力すべきと考える。既にオルタナティブ投資は日本の機関投資家のポートフォリオに浸透しているものの、オルタナティブ・ポートフォリオをよく分析してみると、実は分散が十分でなく、エクスポージャーの偏りがあることが多い。特に不動産分野は、米国への偏りが極端になっている機関投資家が大半との印象だ。
不動産投資の分散を高める上で注目できる投資先は。
欧州 不動産ヘッド
ジョセフ・ヴロ氏
ヴロ 欧州不動産への投資は注目に値するだろう。欧州は多様な地域、経済、商習慣の集まりだ。様々な特徴を持った不動産に投資できるので、分散を効かせやすい。また、欧州の多くの地域では物価に連動して不動産賃料が見直される仕組みのため、インフレ環境下でアウトパフォームする期待が高い点も追い風だ。
米国不動産と比較した時、欧州不動産の明確な特徴となっているのが、占有率の高さ。例えば住宅セクターを見ると、需要に対して供給が圧倒的に足りていない。ほかにも、EC(電子商取引)の拡大で新規に物流関連施設を建設する需要が高まっていることや、郊外にリテールウェアハウスと呼ばれる新たな形態の大規模小売店の建設が相次いでいる。新しい建物に対する需要の強さが欧州不動産の成長のドライバーになっている。
ただし、米国不動産から欧州不動産へ単純に資金をシフトしろと言うつもりは毛頭ない。ポートフォリオに追加して、分散効果を高める一選択肢として検討してほしい。
一変した「除く日本」
APAC機関投資家の動きでほかに注目している点は。
アレン 世界的な分散投資の流れの中で、株式への配分と代替資産への投資拡大が引き続き重要視されている潮流は、しばらく変わらないだろう。この点について特に注目すべきは、APACの機関投資家の中で日本株への関心が高まってきていることだ。
これまでは「除く日本」の株式インデックスを通じたグローバル視点での分散投資が主流であったが、足元では、日本株を独立した投資対象として捉える動きが出てきている。日本経済の活性化や日本企業の変化が認識され始めたことの表れと捉えていいだろう。
資産運用ビジネスの観点でも、日本市場が外資系資産運用会社に対して門戸を広げていることが注目されている。
アレン 当社も「資産運用立国実現プラン」の下、日本オフィスを開設し、日本市場との関係を深めてきた1社だ。運用では足元の金融市場の不確実性への対処には時間がかかると述べたが、それでもタイムリーな情報収集が重要であることに変わりはない。グローバルで200名以上のアナリストが在籍する当社のリサーチ・ネットワークを通じて、日本の機関投資家の皆様に、いま市場で何が起きているのか、情報を届けていくことが当社の付加価値の1つだと自負している。