3月「景気ウォッチャー調査」内閣府の先行き・基調判断では「緩やかな回復が続く」が消えて、「米国の通商政策への懸念」が加わる

宅森 昭吉
2025年3月の景気ウォッチャー調査で、現状判断DI(季節調整値)は45.1で、43.6をつけた2022年7月以来の低水準になった。先行き判断DI(季節調整値)は、2022年7月の43.2以来の低水準である45.2となった。
物価高の影響やアメリカの関税政策への懸念が高まったことなどから、現状判断DIは0.5ポイント、先行き判断DIは1.4ポイント2月から低下した。なお、これまで比較的堅調に推移してきた雇用の先行き判断DIが46.8と2月の50.0から大きく低下し、新型コロナウイルス禍にあった2021年8月42.9以来の低水準になったことは気懸かりな点と言える。
なお、原数値でみると、3月現状判断DIは前月差2.7ポイント上昇の47.8でこちらは上昇になっている。一方、先行き判断DIは前月差1.8ポイント低下の46.6と原数値でも低下した。
内閣府の3月の現状に関する基調判断は、「景気は、緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」で2月と同じだった。
一方、先行きについて、3月は「賃上げへの期待がある一方、従前からみられる価格上昇の影響に加え、米国の通商政策への懸念もみられる」と、2月の「緩やかな回復が続くとみているものの、引き続き価格上昇の影響等に対する懸念がみられる」から「緩やかな回復が続く」が消えて、「米国の通商政策への懸念」が加わり、先行きの判断が厳しくなったとみられる。
3月「価格or物価」関連判断DIは、現状39.4、先行き40.1だった。先行き判断のコメント数は395名でかなり多いが、2023年8月の404人以来の多さになった2月の400名からは5名少なかった。現状・先行きとも指数は低水準、コメント数は多めで、全体の判断DIの足を引っ張った。
トランプ米国大統領が就任したあと、毎日のように「トランプ大統領」や「関税」に関するニュースが流れる中、景気ウォッチャーの受け止め方がどんどん悪い方向に動いてきたという感じだ。調査期間が3月25日~31日で、4月2日(現地時間)のトランプ大統領の「相互関税」発表前の3月調査で「関税」関連先行き判断DIは37.5と2月35.7に続き2か月連続30台の低水準になった。

出所:内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成
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コメント数は68名で、24年12月7名、1月14名、2月35名と概ね月を追うごとに概ね倍々になってきた。また、「米国大統領」関連先行き判断DIは就任前の12月に50.0だったが、1月46.4、2月43.8、3月37.5と就任後は毎月悪化している。
「米国の景気悪化」、「関税引き上げを含む保護主義の高まり」が4月調査現在の2大リスク要因
ESPフォーキャスト4月調査(回答期間: 2025年3月27日~4月3日、回答者37名)で、2025年1~3月期の実質GDP(国内総生産)成長率(前期比年率)の予想平均は+0.08%と、前回3月調査の+0.16%から下方修正された。
民間消費がマイナス予想に下方修正されたほか、設備投資も下振れた。輸入の増加により、外需寄与度も下方修正となった。4~6月期は+0.79%に回復するが、2027年1~3月期まで0%台が続くというのが平均的予測だ。
消費者物価(生鮮食品除く)の前年比上昇率は、25年1~3月期に+3.02%と3月調査+2.96%を上回り3%台になった。その後は低下が続き、2026年1~3月期に+2%を割り込むのが平均予測だ。
日本銀行の金融政策については、2025年6月末の政策金利(現行0.5%程度)を「0.5~0.6%」、12月末の政策金利を「0.7~0.8%」とみる回答が最多だ。下半期に0.25%の利上げが1回見込まれている。米国の政策金利(現行4.25~4.50%)は、2025年6月末の最多回答が「4.0~4.25%」、12月末の最多回答が「3.75~4.0%」となった。上半期に1回、下半期に1回の利下げ予想となる。
半年から1年後の景気リスク(3カ月ごとに調査、3つまで複数回答)では、「米国の景気悪化」が32名と最も多く、前回1月調査の16名から倍増した。1月調査の1位から2位になった「関税引き上げを含む保護主義の高まり」は31名だが、1月調査の25名から増加した。この2つが4月調査現在、最大のリスク要因で注視していくことが肝要だろう。

※「関税引き上げなどを含む保護主義の高まり」の24年10月までは「保護主義の高まり」。「労働市場での人出不足」の24年10月までは「人出不足」。
※「円安・ドル高」の24年10月までは「円安」。
出所:日本経済研究センター
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