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商業用不動産を巡るリスクの総点検・第1回 商業用不動産市場の概観
米欧を中心に商業用不動産(CRE)市況の悪化やそれに伴う銀行の経営不安などが懸念されています。2024年2月には米地銀ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)やCRE向け融資専門の独中堅ファンドブリーフ銀行で関連損失が明らかになり、市場に動揺が広がりました。また、米連邦準備理事会(FRB)が2023年10月に公表した金融安定報告書の中でも金融システムに対するリスクとして、インフレと並んでCREが挙げられました。市場でCREに関するリスクが懸念されている一方で、多くの取引がプライベートであることや様々な資産クラスやセクターが関係することも相まって、その全体像を見通すのはなかなか容易ではありません。
本連載ではCRE市場と関連する資産クラスの動向について解説することで、そのリスクの所在と大きさをできるだけクリアにしたいと考えています。第1回ではまずイントロダクションとして、CRE市場の全体像を概観します。
1.CREの定義・市場規模
まず、CREの定義や市場規模から確認していきましょう。CREとは個人が所有する居住用不動産以外の不動産を指し、様々な不動産がCREに含まれます。一般にREIT(不動産投資信託)が投資するような不動産は全てCREになります。2023年10月のFRBの金融安定報告書によると市場規模はおよそ24兆ドルで、米国債に匹敵する市場規模であることが分かります(図表1)。セクター構成は分散されており、主なセクターとして集合住宅、オフィス、商業施設、ヘルスケア、ホテル、物流施設などが挙げられます(図表2)。
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