ジェラルド・フランシス
ブルームバーグ LP
エンタープライズデータ
グローバル責任者
ジェラルド・フランシス

サプライチェーン管理に必要な情報の分散は、あらゆる業界において数十年にわたる課題であった。複数のデータソース、情報の質のばらつき、広範にわたる検証が必要な不揃いなデータが、非効率な作業とリスクを生み出してきた。

金融機関においても、データ調達・供給におけるソースや質の分散は、近年、強化されている規制などが追い風となり、すぐにでも見直されるべき喫緊の課題の1つという認識が広まっている。同時に、データ管理の最高責任者であるCDOという役職を設け、データソースの質と信頼性の向上に注力することで、分散の解決のみならず、ビジネスを次の段階に成長させるインサイトを導く流れが多く観測される。これまで取り扱いが困難であった膨大なデータが、人工知能などの活用により、新たな価値を創造する宝の山になりつつあるいま、その流れはさらに加速しているように見える。

データの収集、管理、分配のプロセスは、下流における質、一貫性、コスト、価値に大きな影響を及ぼす。より多くのデータと大量のコンテンツを送り込むためのシステムが溢れる今日、データ収集の初期過程における効率化が企業の将来の成功に不可欠になっている。

ドッド・フランク法、MiFID II、一般データ保護規則(GDPR)、BCBS239といった規制が導入されるなかで、アジアにおいてCDO職はいまだ新しく、形成期にある。ブルームバーグがグローバル規模で実施したCDOを対象とした定性的調査によると、アジアのCDOが現在取り組んでいるのは、データ品質、ガバナンス、コンプライアンスの重要性についての社内主要ステークホルダーによる理解促進といった内容であることがわかった。

また、CDOという役職がアジアでも確立し、企業が規制要件を把握し適切に対応するようになるにつれ、欧米で見られるように、CDOの焦点がデータから価値、ビジネスインサイトを見出すことへ移行するようになることが明らかになった。結果、データの分散により、源流から発生する問題への取り組みがより注目されるようになってきている。

一方で、データのサプライチェーンを統括するCDOは、分散されたデータ特有の課題があると指摘している。

例えば、データソースによって記号と識別子が異なる。基本的なデータ構造およびデータセットが異なるため、それらを統一するために多大な時間と労力、分析的計算能力を必要とする。

データに一貫性がない、あるいはそれぞれのデータセットが異なる頻度で組み込まれている場合、金融機関の資産評価やリスク計算には矛盾や不一致が発生しうる。もしトレーダーとリスクオフィサーが異なるリスク値を持っていた場合、両者は効果的に機能することはできないばかりか、本当のリスクが見過ごされてしまう可能性がある。

複数のデータソースによる矛盾に対処する過程で、フロント、ミドル、バックオフィス間の業務フローの断絶を引き起こす可能性がある。複数のソースによるデータは、結果として経営リスクとコストの増加へとつながる。