J-MONEYカンファレンス・レポート スポンサーセッション 平均残存期間「0.3年程度」。効率的かつ安定したリターンを創出アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパン
多くの資産のボラティリティが上昇している現在、ポートフォリオ全体の運用の安定性を高めると注目を集めている戦略が「アリアンツ・ワーキング・キャピタル(以下、ALWOCA)」だ。アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの神頭大治氏は、2023年7月11日に東京都内で開催されたJ-MONEYカンファレンス(主催:J-MONEY)で、他のオルタナティブ戦略との違いとそのポイントを語った。
年率ボラティリティは0.4%程度
2022年は全ての資産のリターンがマイナスだった。特に債券は、米欧の金利上昇による価格下落と日本との金利差によるヘッジコストの増大で、日本の投資家にとってダブルパンチだった。2023年になり株価は上昇したものの、債券は前年の損失を取り戻せていない。
各資産について、36カ月の月次リターンを使った標準偏差を12カ月でローリングしたデータでボラティリティを見ると高止まりしたままだ。日本国債と各資産の相関係数もプラス方向にとどまっている。米国の量的緩和縮小や利上げなどのマーケットイベントと、新型コロナウイルス禍およびウクライナ危機といった社会的イベントが重なり、足元では各資産のボラティリティが上昇し、かつ、伝統的資産間の相関係数が上昇傾向にある。
今後もマーケットイベントや社会的イベントが継続、または不定期に出現する可能性がある。このような状況下では多くの資産が同じ方向に傾斜し、ポートフォリオ全体が不安定な状況に陥るだろう。ボラティリティが相対的に低く、一定のリターンを安定して創出するような資産を取り入れ、ポートフォリオの安定性を向上させる必要がある。
そこで我々から提案させていただきたいのが「ALWOCA」だ。2019年4月の運用開始以降、米国債務上限問題やコロナショックとそれに伴うサプライチェーンの混乱をはじめとした様々なイベントに直面した。しかし、運用報酬控除後のリターンを見ると2020年は1.14%、2021年は1.80%、2022年は1.33%と安定している。さらに設定から2023年5月までの年率ボラティリティは0.38%とかなり低い水準にとどまっている。
各資産の過去20年間の年率実績値と比べると、設定来から2023年5月末までのALWOCAは、当該期間では円債より低いリスクで、米国投資格付け債(円ヘッジ)と同程度のリターンを獲得している。2019年4月を100とした時系列の運用実績では、欧州投資格付け債や米国高格付け証券化商品などの資産が各種イベントに敏感に反応して価格が上下に振れたのに対し、ALWOCAは安定した右肩上がりを描いた。
近年、投資家が自らのポートフォリオの収益性もしくは安定性を高めるために活用している資産はどうだろうか。2023年5月末時点の過去20年間のシャープレシオは、いずれもインデックスベースだが、ヘッジファンドの絶対収益型(レラティブバリュー)0.75、短期ハイ・イールド0.71、バンク・ローン0.40、証券化商品0.28だった。一方、2019年4月以降のAGIトレード・ファイナンスは4.08と、投資効率の高さが際立つ。
実質的な与信対象は先進国の大手企業
ALWOCAが様々な経済・金融環境の下で一定のリターンを安定して創出してきた理由は、その仕組みにある。トレード・ファイナンスは、商流ファイナンスとも呼ばれる。商流、つまり企業どうしのビジネスでは、契約→発注→納品と取引の段階ごとに資金の流れが生まれる。こうした過程で発生する企業の在庫、売掛金、手形などの資産を活用して、金融機関が企業に運転資金を提供するのがトレード・ファイナンスだ。
金融機関が商流のどのプロセスに依拠して融資を行うかによって、同ファイナンスにはいろいろな種別が存在する。「仕入れ~受注」の過程に着目し、財・サービスの売り手企業が保有する在庫を担保としたローンの形で資金提供を行う「在庫ファイナンス」や、企業が取引開始時に受け取った受注書を将来収入の権利の査証とみなし、引き換えに資金を提供する「受注(PO=PurchaseOrder)ファイナンス」といった具合だ。
ほかにも、商品が買い手企業の元へ渡った後の下流では、売り手企業には財・サービスの対価を受け取る権利の「売掛金」に資産が変わる。この売掛金を担保にしたり買い取ったりする形で、売り手企業に融資するファイナンスが「売掛金ファイナンス」だ。このようにトレード・ファイナンスには様々な種類が存在し、融資対象企業の所在地、規模感、取引内容によってリスク・リターン特性が大きく異なる点には注意が必要だ。
ALWOCAは、商流の下流、つまり「納品・検品」後のファイナンス案件にフォーカスする。売掛金ファイナンスを中心に、買い手企業の買掛金ファイナンスなど納品・検品以降の融資案件を主体的に組み入れている。納品・検品を超えたということは、財・サービスが売り手企業から買い手企業に適切に提供されたことを意味する。よって、売掛金を元に融資した金融機関など資金の貸し手側から見れば「商品・サービスを納品できない」といった売り手企業のクレジットリスクを取らなくて済むことになる。
さらにファイナンス案件は先進国がメインとなっている。金融機関などの融資相手が中小企業だったとしても、基本的には買い手となる大手企業が実質的な与信対象企業となるため、運用対象資産の安全性が高いといえる。
与信対象を納品・検品後の買い手企業にフォーカスするため、ファイナンス案件の満期までの期間が短いのもリターンの安定性に大きく寄与している。ALWOCAでは、組み入れている全ファイナンス案件の満期までの長さを示すデュレーション(平均残存期間)は0.3年程度だ。一般的なバンク・ローンのデュレーションが5~7年、ダイレクト・レンディングが4年程度と考えると、この期間の短さはオルタナティブ資産の中でも非常に短いものに分類されるだろう。同じく企業の信用力を重視する社債では、通常、年限が短いほどボラティリティは小さい。加えて、2022年8月末までの過去20年間のデュレーション毎の投資効率は、年限が短いほど高くなっている。このことはALWOCAの安定性を説明する一つの要素となっている。
待機資金の一時的な運用先にも
ポートフォリオの運用利回りを向上・安定させるには、基本的には、①長期債券への配分比率の増加、②信用リスク量の拡大、③流動性のギブアップ、④債券との相関が低い資産への分散の4つしかない。ただし、金融機関のポートフォリオで①を採用すると負債サイドとのデュレーション・ギャップによる金利リスク増大の可能性がある。
ALWOCAはデュレーションが短いため、金利リスクを想定以上に増大させない。実質的な与信対象を先進国の大手企業に絞ったファイナンス案件が組み入れの中心であり、信用リスクも抑制している。月次の流動性の提供と伝統的資産との相関性の低さにより、③と④の条件も満たす。ポートフォリオ全体の安定性向上や、待機資金の一時的な運用先としても、ご活用いただきたい。
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