RBCブルーベイが提供する2つの債券ヘッジファンド戦略は、いずれも相場の局面を問わず、プラスリターンを確保してきた実績を持つ。ブルーベイ・アセット・マネジメントの麻生航氏と大川畑聡氏は2023年6月2日、東京都内で開催されたJ-MONEYカンファレンス(主催:J-MONEY)で、不透明な時代を乗り切るために有効な投資戦略について語った。そのサマリーを紹介する。

シンプルで分かりやすい投資戦略

麻生 航氏
ブルーベイ・アセット・マネジメント・インターナショナル・リミテッド
運用部 ポートフォリオ・マネジャー
麻生 航

麻生 米国の金利動向は投資家の皆様にとって大きな関心事だと思うが、根強いインフレや賃上げの拡大、グローバリゼーションの後退など、金利低下を妨げる要因は数多く存在する。低金利環境を前提とした投資戦略だけに頼ることはできず、だからこそヘッジファンドへの注目や期待が高まっている。ただし、ヘッジファンドも問題がないわけではない。結局のところ、リスク資産をロングしているだけの戦略や、ロング・ショートと言いながらロングに偏った戦略が目立つからだ。

こうしたヘッジファンドの“ロングバイアス”に対して、英国系の債券ファームであるRBCブルーベイから2つの解決策をご提示したい。ひとつ目は「グローバル・ソブリン・オポチュニティ戦略」で、ショートにもしっかり振れる、国債に特化したロング・ショート戦略である。

最大の特徴は、きわめてシンプルかつ分かりやすい点だ。リターンの源泉は金利、国債スプレッド、通貨の3つのみ。それぞれについて世界各国の金融政策および政治状況を分析したうえで、マクロ経済見通しに基づいた投資を行う。先進国・新興国にかかわらず、グローバルに存在するソブリン債のあらゆる投資機会を生かして、絶対リターンを追求していく。

投資の内容は、現物のロングポジションに先物やCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)などのメジャーなデリバティブを使ってショートポジションを組み合わせている。運用者本人の言葉を借りるなら、「朝起きて前日のマーケットを確認したらパフォーマンスが想像できる」という分かりやすさで、ヘッジファンドとしては珍しい、透明性を重視した投資戦略だ。

伝統資産と低相関もしくは無相関

麻生 当戦略の米金利デュレーションの推移を見ると、プラス10年からマイナス10年まで、ロング・ショートにしっかり振れていることが分かる。トランプ・ラリーによって米金利が跳ね上がった2016年には、デュレーションをしっかりマイナスに振っていた。2021年も、米国はまだ利上げに踏み切っていなかったが、それ以前からインフレ率が上昇しつつあったため、近いうちに利上げが始まるはずと見込んで、やはりデュレーションをしっかりマイナスにまで引き下げていた。

パフォーマンスは2022年に20.8%のプラスを記録し、過去7年間の平均では年率7%程度のプラスとなっている。7年のうち5年はプラスリターンだったが、リスクオン・リスクオフや金利の上昇・低下といった相場局面の違いに関係なくリターンを稼げているのが特徴である。ファンドマネージャーのスキルに依拠した投資戦略であることの証と言えるだろう。

特に2022年は第1四半期から第3四半期まで、株式も債券も苦戦した局面だったが、当戦略はプラスリターンを記録した。第4四半期以降は株式、債券ともに盛り返したが、そこでもプラスリターンとなっている。これは当戦略と伝統的な資産クラスとの間で、相関が低いことの表れである。実際にインデックスとの相関性を見ると、MSCI世界株価インデックスから主要な債券インデックスまで、低相関もしくはほぼ無相関となっている。

国債に特化したヘッジファンドでありながら、債券インデックスとの相関が低いので、ポートフォリオの分散にも効果的だ。今後の景気減速に懸念を抱かれている投資家の皆様には、見通しが不透明な時期だからこそ、マクロ経済と真正面から向き合う当戦略が、ひとつの選択肢になるのではないか。

欧州の中規模案件に注目する

大川畑 聡氏
ブルーベイ・アセット・マネジメント・インターナショナル・リミテッド
運用部 ポートフォリオ・マネジャー
大川畑 聡

大川畑 2つ目の解決策として、「イベント・ドリブン・クレジット戦略」をご紹介する。欧州の社債やローンなどのクレジットを中心に、各種イベントが生じている対象に投資を行う戦略である。特徴が異なる5つのサブカテゴリーの投資戦略を活用し、経済情勢や金融政策の局面に応じて魅力的な投資機会を発掘する仕組みとなっている。

例えばサブカテゴリーの「クレジットショート/マーケットヘッジ」は、景気が悪化して金利が下がる局面で、割高になった債券などをショートする戦略である。「ストレスト」と「ディストレスト」は、金利上昇や景気悪化の局面で、業績や財務の悪化から割安になった企業や、リストラによって回復が見込める企業などに投資する戦略だ。

コロナ禍においては、企業の事業環境が著しく悪化するなかで、中央銀行による急激な利下げや各国政府の資金サポートが行われた。結果として、企業の実力や業績に対して割高と考えられる債券が増えたため、クレジットショートのポジションを拡大させた。

現状では、世界的な金利の上昇および欧州経済の悪化を受けて、欧州のレバレッジドローンすなわち負債比率の高い企業のデフォルト率が上昇傾向にある。格付け機関の予想では、2024年から25年にかけてデフォルト率は4~6%程度と大きく上昇する見通しだ。こうした観点から、今後はストレストとディストレストの投資機会が広がっていくと考えられる。我々は特に高いリターンが見込める案件として、欧州の中堅企業を対象とした中規模案件に注目している。案件ごとの金額が小さいため、大手プレイヤーが参入しづらく、案件獲得やプライシングの競争環境が緩やかという魅力がある。

ディストレストの具体例として、ノルウェー企業の投資事例を紹介したい。この会社は2隻の海上建設船を所有し、2017年と19年に債務リストラを実施。RBCブルーベイでは船の売却益がリターンにつながると想定して、2021年にリストラ後の担保付債券に投資した。仮に売却が進まなくても、そのスクラップ価値からダウンサイドは限定的と判断した。

想定通りに2022年から23年にかけて船を売却すると発表があり、債券価格は大幅に上昇。RBCブルーベイは投資元本の5倍程度のリターンを確保することができた。欧州の中規模案件には、このようにリスク・リターンが優れた魅力的なケースが数多く見られる。

「イベント・ドリブン・クレジット戦略」は運用開始後2010年1月から、手数料控除後で累積200%超のプラスリターンを記録し、ヘッジファンド指数やグローバル債券指数を大きく上回っている。これは年率換算で8.8%のリターンに相当するが、一方でリスクは年率6.5%と低水準になっている。また、2021年までの上昇相場のみならず、22年に株式や債券などの伝統資産が下落した局面においても高いリターンを確保しており、上昇相場と下落相場の両局面に対応できる点が強みである。

投資家の皆様が他の資産クラスと組み合わせることで、ポートフォリオ全体におけるリスク・リターンの改善に寄与すると期待される。

本記事は2023年6月2日に実施した「J-MONEYカンファレンス」の内容をもとに再構成しました。なお、文中言及されているRBCブルーベイの運用戦略及び運用実績は、情報の提供のみを目的として紹介されたものであり、特定の運用商品やサービスの提供の勧誘又は推奨を目的とするものではありません。また、それらの運用戦略の将来の運用実績を示唆・保証するものではありません。また、過去と同様の規模の投資先を対象として同様の投資分散や資産配分が行われ、同様の投資戦略及び投資アプローチを用いて投資目的を達成することを示唆・保証するものではありません。投資元本や運用成果は保証されておらず、投資先の将来の業績、市場環境等により変化することが予想されます。このため、運用成果は記載された投資目標と大きく異なる可能性があります。投資対象とする有価証券等の価値の変動により運用資産の総額は変動するため、投資元本を割り込む可能性があります。当社が提供する投資一任業に関してご負担頂く手数料や費用等は、お客様に委託された運用金額や運用戦略ごとに、あるいは運用状況等により変動いたしますので、その金額若しくは上限額又は計算方法を表示することができません。なお、当社との投資一任契約は、原則、運用戦略に応じた外国籍投資信託を投資対象とします。上記手数料には、お客様から直接当社にお支払いただく投資顧問報酬、外国籍投資信託に対して投資した資産から控除される運用報酬が含まれます。
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ブルーベイ・アセット・マネジメント・インターナショナル・リミテッド

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