外需が下押し、1~3月期も低成長にとどまる見込み

角田 匠(信金中央金庫)
信金中央金庫
地域・中小企業研究所
上席主任研究員
角田 匠

2023年5月17日に公表される2023年1~3月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比0.1%増、年率に換算して0.6%増と予測している。2022年10~12月期の前期比年率0.1%増に続いて横ばい圏の動きにとどまる見通しである。

2023年1~3月期の個人消費は前期比0.4%増と回復基調を維持したとみられる。新型コロナウイルスの感染が沈静化し、人流が上向いたことで外食やレジャーを中心としたサービス消費が回復したためだ。供給制約の緩和を受けて自動車販売が持ち直してきたことも個人消費の回復に寄与したとみられる。

一方、世界的な製造業の減速が日本経済の下押し要因になった。生産用機械などの資本財輸出が落ち込んだほか、半導体サイクルが下降局面に入ったことで電子部品・デバイスの生産や輸出も振るわなかった。1~3月期の輸出は前期比2.4%減と6四半期ぶりの減少が見込まれる。

1~3月期は個人消費の回復を支えに内需が実質成長率を前期比ベースで0.4ポイント押し上げる要因となるが、世界経済の減速に伴う輸出の落ち込みで外需が0.3ポイントの押し下げ要因になったとみている。

家計行動は正常化に向かうも物価高が消費を下押し

世界経済の減速は日本経済の下押し圧力となっているが、個人消費の持ち直しがカバーして景気を下支えしている。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同等の5類に移行されたことで、感染への警戒感は今後一段と後退するとみられ、コロナ禍で落ち込んだ個人消費は引き続き回復基調で推移しよう。

もっとも、コロナ禍前の消費水準には依然として届かない。1~3月期に持ち直した個人消費は、4~6月期にはやや回復ペースを高めるとみているが、その場合でもコロナ禍前の2019年の水準を0.6%下回ると予想している。

コロナ禍前の水準を取り戻しきれない最大の要因が物価高だ。日銀から公表されている消費活動指数をみると、感染に対する警戒感の後退を反映して実質サービス指数は回復基調で推移しているが、非耐久財指数は弱い動きになっている(図表)。非耐久財指数の主要品目は食料品と電気代など光熱費であり、物価高の影響で2022年後半から水準を切り下げている。

【図表】消費活動指数の推移
消費活動指数の推移
(注)非耐久消費財にはGDP統計で半耐久消費財に分類される衣料品などが含まれる
出所:日本銀行「消費活動指数」

景気回復持続のカギは物価の動向

この先も、日常を取り戻そうとする家計行動が個人消費の回復に貢献するとみているが、値上げの影響で食料品や日用消耗品などの消費が抑制されるため、消費全体としては緩やかな回復にとどまると予想される。

世界経済も力強さを欠いた動きが続く見通しである。ゼロコロナ政策を解除した中国経済は持ち直しているものの、生産活動の回復は遅れており、対中輸出の回復を経路とした日本経済へのプラス効果は限定的にとどまるだろう。

今後も外需の停滞を個人消費が支える構図が続くと想定しているが、足元のインフレ圧力は予想以上に強く、個人消費への下押し圧力は増している。日本経済の行方を展望する上では、世界の経済情勢に加え当面の物価動向も重要なファクターになると考えられる。