日本は言語の障壁によって独自の経済市場を形成し、恩恵を受けてきた面が少なくない。ただし、「ガラパゴス化」などといわれるように、そこには弊害も多いのが事実だ。

オルタナティブ投資の世界的なデータプロバイダーであるプレキンは、日本の銀行や保険会社、年金基金を対象に「国内機関投資家動向調査」を集計している。同社は2023年1月に、同調査の結果を基に、オルタナティブ投資を手掛ける海外のファンドマネージャーが日本の機関投資家にアプローチする上で重要なポイントを、「資金調達ガイド:日本からの資金調達」というレポートにまとめてリリースした。

「資金調達ガイド:日本からの資金調達」レポートの試し読み用の抜粋版「サンプルページ」はこちら(プレキンHP)

いわば日本の機関投資家の「取り扱い説明書」であるが、同レポートでは、日本の機関投資家は、ファンドマネージャー選定時に懸念するポイントとして、「報告・開示要件を満たしていないこと」「不十分な実績」の次に「日本語での対応がない」ことを挙げているとの結果が報告されていた。

ただでさえ日本の機関投資家は、ファンドに対して詳細な報告と開示を要求する傾向にあり、同レポートでは、その基準は世界的に見てもハイレベルだと言及されている。レポーティングや開示資料作成の対応で膨大な手間が発生する上に、日本語でのコミュニケーションが必須となれば、海外ファンドの日本への参入障壁はかなり高くなっていると言えよう。

投資規模において日本の機関投資家はある程度の存在感を誇るため、前述のようなハードルを越えても一定のファンドマネージャーが日本市場に参入してくる。しかしながら、運用環境が複雑化する中であらゆる投資機会を検討することが求められる昨今、日本語という参入障壁の内側の限られた選択肢に満足せず、その外側にも可能性を求める重要性が高まっているのではないか。そんなことを、プレキン社のレポートを見て感じた。

偉そうに書いてしまったが、かくいう私も金融専門メディアの編集に携わる者として、世界中の金融ニュースをAI(人工知能)のぎこちない翻訳を介さずに理解したり、すらすらと取材を行ったりできる英語力の必要性を痛感しつつ、まだ遠く及んでいないと自認している。

そもそも、日本語でも理解が難しいことがあるのが金融や経済の話題だ。正直、英語だと理解する大変さに嫌気がさすこともある。

ただ、学問に王道なし、である。小さな一歩を積み重ねることが大切だと自分に言い聞かせて、密かにスマホのメモアプリに作った「分からなかった英単語・英語表現ノート」をコツコツとしたためる毎日である。