2026年7月の「骨太ショック」を経て、長期金利は約30年ぶりの水準に達した。取材からは、さらなる金利上昇、AI(人工知能)需要の失速、中東発の物価上昇という3つのリスクシナリオが浮かぶ。各シナリオから逆算したとき、ポートフォリオのどこに弱点が潜むのか。エコノミストと運用コンサルタント4氏の見立てを基に、備えの要点を整理する。
全天候の土台をシナリオで点検。金利急騰なら円債シフトに試練

代表取締役社長
チーフエコノミスト
加藤 出氏
2026年6月末に政府が「骨太の方針2026」の原案をまとめた。これが財政健全化姿勢の後退や日銀の利上げを牽制する内容と受け止められ、国債売りと円安が進んだ。この「骨太ショック」により、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは7月9日、一時2.9%と約30年ぶりの水準まで上昇した。円債では十分な利回りを期待できず、外債に向かわざるを得なかった状況は一変し、相対的にリスクの低い国内債券で利回りを確保できる時代が再び訪れたかのように映る。
もっとも、先行きには少なくとも3つのリスクシナリオが横たわる。さらなる金利上昇、AI需要の失速、そして中東発の物価上昇だ。ラッセル・インベストメント シニアコンサルタントの高橋克典氏は、「特定のリスク環境を想定して部分最適を図るのではなく、どのような市場環境にも耐えられる堅牢なポートフォリオを構築することが第一だ」と指摘する。本特集では、この全天候型の発想を土台に、3つのシナリオから逆算して弱点を洗い出し、必要な調整を探る。
第一のシナリオは、さらなる金利上昇である。東短リサーチ 代表取締役社長の加藤出氏は、日銀の政策運営がなおも緩和的であり、金融引き締めが物価上昇に後れを取る「ビハインド・ザ・カーブ」と、それに伴う急激な金利上昇のリスクを否定できないと指摘する。同氏が注視するのは、円安を通じた輸入物価の上昇だ。
新型コロナウイルス禍前の2020年初から2026 年7月までの原油(WTI)価格の推移を通貨別で見ると、米ドル建てでは約30%の上昇にとどまるものの、円建てでは約94%に達する。トウモロコシの先物価格も、米ドル建ての約12%上昇に対し、円建てでは約67%も値上がりしている(図表1)。エネルギーも食料も、円安がその負担を押し上げている格好だ。「日々円安水準が切り上がっているにもかかわらず、日本の政策金利は名目で1.0%。名目政策金利からインフレ率(生鮮食品と特殊要因を除いたCPI総合)を差し引いて算出される政策金利でみれば、-1.7%程度と、主要国のなかで最も低い水準にある」(加藤氏)。

加藤氏がとりわけ注視するのが、日銀政策委員会の構成だ。内田眞一、氷見野良三の両副総裁が2028年3月に任期満了を迎えるなど、委員の顔ぶれは2027年から2028年にかけて相次いで入れ替わる(図表2)。「委員会の顔ぶれ次第では、市場は日銀の独立性に疑問符をつけかねない。日本国債の利回りがこれだけ高い水準になっているにもかかわらず、なお債券売り・金利高が止まらないのは、投資家がこうした人事的な背景を意識しているからだと見ている」(加藤氏)。

オックスフォード・エコノミクス在日代表の長井滋人氏も懸念を共有するが、これを日本固有ではなく世界的な潮流ととらえる。
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