10~12月期は2四半期ぶりのプラス成長

角田 匠(信金中央金庫)
信金中央金庫
地域・中小企業研究所
上席主任研究員
角田 匠

2023年2月14日に公表される2022年10~12月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比年率1.7%増と2四半期ぶりのプラス成長を予測している。国内金融機関およびシンクタンクのエコノミストの事前予測は、前期比年率で1~3%増程度と直前予測にしては幅があるが、マイナス成長だった7~9月期からは持ち直すとの見方は一致している。

2022年10~12月期は個人消費が前期比0.4%増と7~9月期の0.1%増から伸びを高めたとみられる。全国旅行支援の効果で宿泊旅行が回復したほか、外出機会の増加で遊園地などの娯楽や外食といったサービス関連の消費が底堅かった。

その他の需要項目は設備投資が前期比0.5%増とプラスを見込むが、在庫投資や公共投資が押し下げ要因となり、内需寄与度は0.1%ポイントにとどまる見通しである。

成長率の押し上げに寄与するのは外需で、前期比寄与度はプラス0.3%ポイントと予想している。中国向け輸出は大きく落ち込んだが、水際対策の緩和によるインバウンド需要の回復などが寄与したとみられる。

前月までの想定に比べて力強さを欠いた回復に

2022年10~12月期のGDP成長率はプラスに転じるものの、マイナス成長だった同年7~9月期からの反動を考慮すると力不足感は否めない。筆者もメンバーになっている日本経済研究センターのESPフォーキャスト調査によると、2023年1月調査では2022年10~12月期の実質成長率は前期比年率3.3%、個人消費は前期比0.7%増と予測されていた。

2022年12月分の統計が出そろった段階で、筆者も前月から予測値を引き下げており、2023年2月9日に公表されるESPフォーキャストの予測平均値も下方修正されるとみられる。

下方修正の主因は個人消費である。2022年11月頃から新型コロナウイルスの感染が再拡大したためで、感染への警戒感から同年末にかけて外出行動を控える動きが広がった。

内閣府の「V-RESAS」による移動人口の動きをみても、今回の感染「第8波」がピークとなった年末にかけて人流が落ち込んでいる(図表)。

【図表】移動人口の動向(2019年同週比)とサービス消費の推移
移動人口の動向(2019年同週比)とサービス消費の推移
出所:内閣府「V-RESAS」、日本銀行「消費活動指数」
※実質サービス消費指数(2015年基準)はコロナ禍前の2019年を100として表示

政府による制限措置の発動は見送られたものの、家計の自粛行動がサービス消費の回復を阻む要因になった。

2023年1~3月期は強弱要因がせめぎ合う展開に

足元では「第8波」の感染が沈静化に向かっており、人流は上向いている。2023年1月後半以降の寒波と大雪の影響が懸念されるが、気温が上昇する3月にかけて人々の外出行動が持ち直し、サービス消費も回復の勢いを取り戻すとみられる。全国旅行支援が延長されていることで、宿泊旅行も底堅く推移する見通しである。

一方、製造業は全世界的に減速傾向にあり、生産用機械などの資本財輸出に下押し圧力がかかる。半導体サイクルは既に調整局面に入っており、電子部品・デバイスの生産や輸出も振るわない状況が続く。

ゼロコロナ政策を解除した中国経済の持ち直しはプラス要因だが、日本経済に波及してくるのは2023年4~6月期以降と予想している。

製造業を中心とした輸出や設備投資の減速が続くことで、国内景気は方向感を見極めにくい展開が続くとみられるが、日常を取り戻そうとする家計行動を支えに、緩やかながらも回復基調を維持すると予想している。