2022年6月16日のFOMC(連邦公開市場委員会)で75bp(ベーシスポイント)の利上げが決定されました。これで3月の利上げ開始以降、利上げ幅は合計150bpに及び、さらに市場では2022年内に200bpに近い追加利上げが織り込まれています。
目下インフレリスクとそれに対する当局の対応が市場の最大の関心事ですが、本稿では金利上昇リスクに対する見解と、投資家にとって有用な対応について考えてみたいと思います。
急速な金利上昇と株価調整が同時進行する「インフレタカ派相場」に移行
6月のFOMCでは、金融引き締め継続姿勢とともに、2022年と2023年の米国経済成長率見通しはいずれもプラス1.7%と引き下げられました。
半年前の2021年12月のFOMCで2022年の経済成長率見通しがプラス4.0%と潜在成長率を大きく上回る見通しであったことを考えると、FRB(米連邦準備理事会)はインフレ抑制を最優先して金融政策姿勢を大きく転換し、巡航速度を下回るまでの経済成長の抑制を容認したことに他ならない、と解釈すべきです。
我々投資家は、2つの大きな局面転換が生じたことを認識しておく必要があるでしょう。まず市場サイクルで見ると、2020年初めの「新型コロナウイルス・ショック」により株価が急落し金利も大きく低下した後、2020年半ば以降はコロナ禍からの回復、特に経済正常化に伴ってペントアップ需要(リベンジ消費)に対する期待から、緩やかな金利上昇と株価上昇(リベンジ相場)が続きました。
ところが今年に入って以降、インフレ懸念の本格化から各国中央銀行はインフレ対応を最優先に金融引き締め姿勢を急速に強め、急速な金利上昇と株価調整が同時進行する「インフレタカ派相場」に移行したと見られます。
次に中長期的に見た市場パラダイムを考えると、グローバルでほとんどインフレの兆候が見られないなか、特に株式市場に配慮した緩和的な金融政策が続き、極めて投資家フレンドリーな状況が続いたいわゆる「ゴルディロックス相場」はすでに転換した、と見ておくべきでしょう。本格的な「インフレタカ派相場」の到来は、3代前のグリーンスパンFRB議長時代の1990年代半ばまで遡ることになります。
次に金利上昇の目途について見ておきたいと思います。ここまで150bpの利上げが行われたのに対し、米国10年金利の昨年末来の上昇幅は約170bpでした。この先は「景気減速も辞さない」利上げが見込まれることから、イールドカーブのフラット化も予想され、仮に200bpの利上げが行われても長期金利の上昇幅はそこまでには達しないと見られます。
一方で図表3は米国の名目GDP成長率と10年国債金利の関係性を示しています。2022年から2023年にかけて7%程度の名目GDP成長率が見込まれる(実質経済成長率2%程度プラスGDPデフレーター5%程度)中、4%を超える長期金利は違和感なく、その程度の長期金利上昇は念頭に置いておく必要があると見ています。