機関投資家向けのESG(環境・社会・ガバナンス)運用戦略で、「地球環境へのインパクト」「リターン」「ポートフォリオのリスク管理」の同時実現を目指すアプローチとして注目を集めているのが、HSBCアセットマネジメントの『自然資本投資戦略』だ。概要と特徴を、機関投資家営業本部 自然資本投資スペシャリストの加藤秀一氏に聞いた。

土地の価値と長期の生産性を向上させるプロジェクトを支援

加藤 秀一氏
HSBCアセットマネジメント
機関投資家営業本部
自然資本投資スペシャリスト
加藤 秀一

2021年11月のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)や2022年開催予定のCOP15(国連生物多様性条約第15回締約国会議)第二部によって、気候変動緩和と生物多様性回復の重要性が改めてクローズアップされている。世界の公的・私的年金や金融機関の間でも、地球環境対策への貢献と投資リターンを両立する運用ソリューションを求める機運が高まっているといえるだろう。

その解の一つとして、HSBCアセットマネジメントが提供するのが『自然資本投資戦略』だ。「同戦略は、主に先進国における持続可能な農林業などへの投資によって、気候変動の緩和や生物多様性回復への大規模なインパクトと収益性を同時に追求します」(機関投資家営業本部 自然資本投資スペシャリストの加藤秀一氏)。

同戦略では、10~20の持続可能で環境再生型のプロジェクトを支援する(図表1)。例えば、化学肥料や農薬により土壌劣化が進行した農地を購入。近隣の農地を加えて作付面積を大規模化したうえで、経験豊富な現地事業者とのパートナーシップを通じ、環境再生型農業を実践する。土壌を復元し、土壌に固定可能なCO2(二酸化炭素)や、土壌微生物を増加させるなどインパクトの改善を図りながら、オリーブやアーモンドなど多年生作物の有機栽培を行うことで、土地の価値と長期の生産性を向上させる。さらに、これは地域の雇用創出にもつながる。

【図表1】『自然資本投資戦略』が支援するプロジェクト例

『自然資本投資戦略』が支援するプロジェクト例
出所:クライメート・アセット・マネジメント、2021年12月現在

このように自然を基盤とした解決策を積み上げる同戦略を自らのポートフォリオに組み入れることで、投資家である公的・私的年金や金融機関などの機関投資家は大きく3つのメリットが期待できる。第1が、気候変動緩和や生物多様性回復へのストレートな貢献だ。持続可能な農林業の実践や沿岸におけるマングローブ再生といったSDGs(持続可能な開発目標)に着実に取り組んでいるとのメッセージを、社内外のステークホルダーに発信できるのはもちろんのこと、CO2吸収や生物多様性をポジティブに向かわせる資産を直接保有することが可能になる。

第2が、持続可能な実物資産から創出されるリターンだ。「当戦略のリターンは主に3つの要素に分解できます。まず、持続可能な農地・林地からの生産物の売買などで得られるインカムで、リターン構成の中心となります。続いて、カーボンクレジットなど当該自然資本に付随して生じるインカム、3つ目が農地や林地など実物資産そのものの価値上昇です。保守的な実物資産を対象とし、インカム収益と資産価値の上昇により、リターンを創出することを目指します」(加藤氏)。

ターゲットとする地域を「先進国」に設定しているのも、このリターン構成と関係する。加藤氏は「対象地域は、北米、欧州、オーストラリア、ニュージーランドを想定しています。これらのエリアは他の国・地域に比べ環境規制が厳しい半面、炭素税や排出量取引制度などのカーボンプライシングの導入が進んでいます。厳しい規制で守られた農地や林地は昆虫や微生物が増え、土壌が肥沃になります。先進国市場は、このような生物多様性がもたらす生態系サービスと炭素市場の収益からのアップサイドの可能性が高いといえます」と解説する。

株式や債券と低相関でインフレ局面への備えも可能

そして機関投資家が期待できる3番目のメリットが、ポートフォリオのリスク管理に有用な点である。

「例えば、米国の農地指数と米国株の代表的指数であるS&P500の値動きの相関性を見ると、1970年から2019年の間では約マイナス0.28。かなりの低相関です。同期間の米国10年物国債とは約0.17で、こちらも決して高くはありません。一方、同じ期間の米国CPI(物価上昇率)とは0.7程度でプラスの相関にあります。つまり、自然資本資産は、株式や債券との相関がマイナスまたは低いディフェンシブな資産であり、かつ、インフレーションに負けない価格上昇が期待できる特性を持ち合わせています。機関投資家の皆様は当戦略をご自身のポートフォリオに組み入れることで、伝統的資産のリスクヘッジとインフレ局面への備えができるといえるのではないでしょうか」(加藤氏)

同戦略の実際の運用は、HSBCアセットマネジメントとグローバルな気候変動のアドバイザリー・投資会社のポリネーションのジョイントベンチャーであるクライメート・アセット・マネジメントが担当する。クライメート・アセット・マネジメントは、グローバル規模での自然資本資産をベースとしたESGおよびSDGsに関連する投資戦略を得意とし、第1弾が今回フィーチャーした『自然資本投資戦略』であり、第2弾の『ネイチャー・ベースド・カーボン戦略』は現在、開発中である。

加藤氏は、「ネイチャー・ベースド・カーボン戦略は、CO2排出削減義務を負う企業や投資家などに、質の高いカーボンクレジットの提供を目指します。私たちは、両戦略に代表されるように自然資本ならびに新たな持続可能な資産クラスを有効活用して、大規模なインパクトと運用リターンの実現を目指します」と語る。

【図表2】『自然資本投資戦略』のインパクト・フレームワーク

『自然資本投資戦略』のインパクト・フレームワーク

『自然資本投資戦略』のインパクト・フレームワーク
出所:クライメート・アセット・マネジメント、2021年12月現在

■当資料でご紹介する運用戦略は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象としており、当該資産の市場における取引価格の変動や為替の変動等により損失が生じる可能性があります。従いまして、投資元本が保証されているものではありません。

■この運用戦略のご紹介においては運用に係る具体的な手数料・費用等の金額および計算方法等を予め示すことはできませんが、一般的には、以下のような手数料がかかります。

・投資信託にて運用する場合:一般的には、購入時には購入時手数料、保有期間中は運用管理費用(信託報酬)と監査費用、換金時に換金手数料、信託財産留保額がかかります。監査費用は、信託財産の中から日々控除され、間接的に受益者(投資者)の負担となります。その他に有価証券売買時の売買委託手数料、外貨建資産の保管費用、信託財産における租税費用等が実費としてかかります。詳しくは「投資信託説明書(交付目論見書)」等をご覧下さい。
・投資一任契約や投資顧問契約の場合:個別契約毎に運用報酬や投資信託への投資に係る費用が発生します。詳しくは「契約締結前交付書面」をご覧下さい。

HSBCアセットマネジメント

HSBCアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第308号
加入協会 一般社団法人投資信託協会/一般社団法人日本投資顧問業協会/日本証券業協会
お問合せ先 機関投資家営業本部 Tel:03-3548-5689 ⁄ 5611