地球温暖化を受けて、欧州を発端として機関投資家に対して持続可能な社会の実現に向けた取り組みが期待されるようになった。そのための有効な手法として、ESG(環境・社会・企業統治)に関する定性的な価値判断を投資に組み入れるアクティブ運用の重要性が高まってきている。独自のESG格付けとエンゲージメントを活用し、経済的なリターンと持続可能な社会の実現の両面を目指すフィデリティ投信に、現在金融市場で用いられる主なサステナブル債券投資戦略が抱える課題や、機関投資家の運用ニーズに沿った戦略の見極め方について伺った。

フィデリティ投信 戸田 淳氏 八代 功氏
フィデリティ投信
機関投資家営業部長
戸田 淳氏(写真左)
運用本部
インベストメント ディレクター
八代 功氏(写真右)

数値だけで投資対象外とせず、対話で改善余地の企業を発掘

運用環境面から持続可能な債券投資を行う上での課題とは何か。

八代 金融市場において現在用いられている主な環境関連の投資戦略は、まずグリーンボンドが挙げられるが、市場規模は相対的に小さく流動性が限定されており、グローバル社債全体と比較して利回り妙味は低い。また、ESGの取り組みは進んでいてもグリーンボンドを発行していない企業もあり、それらを一律に対象外とするのは疑問が残る。

次によく耳にするのは化石燃料関連企業からのダイベストメント(投資撤退)だが、実のところ投資ユニバースを歪める懸念が大きい。炭素強度(排出量を売上で除した値)が高いエネルギーセクターなどを除外すると、炭素関連リスクの計測が難しい金融・消費者セクターへの集中度が高まる。エネルギーセクターには、再生可能エネルギーの活用をはじめ、投資に値する企業が一定数存在する。そこで、一義的にダイベストメントするのではなく投資ユニバースに含めておき、エンゲージメントなどでESGの取り組みを後押しすることは、気候変動リスクの低減にも寄与すると考える。

最後に、低炭素指標データの単純なスクリーニングでは、全体像を捉えることができない点だ。主な指標に炭素強度が用いられるが、事業活動の構成や国の価格規制、会計ルールなど複数の要因により、この指標がうまく機能しないことがある。

戸田 こうした課題面を考慮し、脱炭素社会の実現への貢献とグローバル社債投資による長期的な投資収益獲得の両立を追求する運用戦略として開発したのが、『サステナブル・リデュースト・カーボン・ボンド戦略(フィデリティ・炭素排出量削減グローバル債券戦略)』だ。

SFDR(サステナブルファイナンス開示規則)8条適合戦略のアプローチについて。

八代 当戦略の脱炭素アプローチは、セクターやユニバースの中でESG評価の高い優れたプロファイルを持つ企業群を「クライメート・リーダシップ」として主軸に据える。もう一つの軸足は、現状のESGスコアが少し低水準でも将来的に改善余地のある企業群の「クライメート・トランジション」だ。後者は特にエンゲージメントの真価が発揮される。不十分とされるESGの取り組みを議論によって明確化しサポートすることで、長期的リターンの向上と低炭素社会の実現につなげていく。

【図表1】 『サステナブル・リデュースト・カーボン・ボンド戦略』における脱炭素アプローチ

『サステナブル・リデュースト・カーボン・ボンド戦略』における脱炭素アプローチ

定性評価を考慮した格付けで内容把握と将来性をカバー

機関投資家が運用ニーズに合ったサステナブル戦略を見極めるには。

八代 ポイントは3つある。1つめは、投資目的の明確化だ。業界全体でESG評価のインテグレーションは進んでいるものの、運用会社によって取組手法や投資哲学は少しずつ異なる。機関投資家は自身の投資哲学や考え方と合致する戦略に投資するために、まずは投資の目的を明確に整理する必要がある。

2つめは、運用会社のESG評価の手法と質だ。運用プロセスを見れば、運用にESG要素をどう適用しているかを確認できる。例えば、企業の開示情報をベースにESG格付を行う場合は、その企業のESG要素が将来どう変化するかといった要素は十分には含まれておらず、アクティブ運用戦略の視点では、特に留意する必要がある。ESGの取り組みに欠かせない経営陣のコミットメント度合いなどは開示情報では見えにくい。

将来性を加味した定性評価を取り込むには、運用会社独自の格付けが重要性を増してくる。当社は従前からのリサーチで企業との対話を重ねてきており、ESGのエンゲージメントにも同じフレームワークを活用することができた。公開情報のみに依存していないため、より先を見据えた判断に基づく投資が行える。加えて、当社が望む形で完全な銘柄のカバレッジも可能となる。

見極めポイントの3つめは、投資家にとっての実態の把握だ。運用会社による機関投資家に対する情報開示が不十分では成果の評価もできない。戦略・商品を通して提供される情報量は投資判断を左右するだろう。

戸田 言うまでもないが、機関投資家は受託者責任の観点から経済的リターンは決しておろそかにできない。また、ESG評価による経済的なリターンの時間軸は概して長期的との認識も必要。ESGを考慮した運用戦略が増えるなか、日本でも、まずはその運用会社の取り組みや運用戦略が経済的リターンを獲得する力を備えているかは精査したい。次にその運用戦略の採用は持続可能な社会の実現につながるかという視点で、運用商品を選別していくステージも近いのではないか。

【図表2】エンゲージメントのテーマ別アプローチ──現実的な目標設定と成果のモニタリングに重点

エンゲージメントのテーマ別アプローチ

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