ククレブ・アドバイザーズ 3,800社の開示資料をAI分析。ビジネストレンドを掴むホットワード
業界研究や競合比較の際に有用なプラットフォームが無料で公開されている。「CCReB GATEWAY(ククレブ・ゲートウェイ)」は上場企業の中期経営計画書などをAIで解析し経営のトレンドを明らかにするデータベースと、最新のCRE(企業用不動産)情報を融合させた画期的なサービスだ。その真価と狙いを代表者に聞いた。
自社の経営戦略の策定を効率的に検討できる
「CCReB GATEWAY」とは何か、まずは聞かせてほしい。
上場企業3,800社が2018年1月以降に開示された中期経営計画書と有価証券報告書、プレスリリースの内容をテキストレベルでデータベース化したもので、大きく2つの機能があります。
1つはプレスリリースの検索機能です。こちらは企業が開示するリリースを対象にしていて、例えば「コーポレート・ガバナンス」に関するリリースを横断的に集めたいといったニーズの場合、従来なら各社のサイトを訪問して取得しなければならないところ、当サイトを利用すれば、一覧表示で素早く調べることができます。リリースの案内を主眼とした東証のTDnet(適時示情報伝達システム)とは設計思想が異なり、利用者に立ったインターフェースで日常使いが容易です【図①】。
【図①】IRストレージの検索画面
もう1つが中期経営計画書と有価証券報告書の分析機能です。AIによる独自の分析エンジンにより、企業が注力していることや新たな経営目標をホットワードとしてワードクラウド形式で示すことができ、世の中の最新トレンドを瞬時に掴めます【図②】。さらには企業が開示した両資料をアーカイブから取得することもできます。将来的には過去からのトレンドワードの変遷を分析、学習することで、次のトレンドを先回りして予測していきたいと考えています。
【図②】ホットワード分析の表示画面
利用者はこうした機能を、どのように活用できそうか。
一般事業会社の経営企画部門の方であれば他社との違いを確認しながら自社の経営戦略の策定を効率的に検討することが可能であり、営業部門の方なら特定のホットワードを掲げる企業をセグメントすることで、対象をリストにできます。
当社ではこれまで、シンクタンクやメディアからも分析の依頼を受けており、金融業界を含め企業調査や業界研究に寄与できると考えています。仮に上場企業で1,000社程度が中期経営計画書を公表した年があったとしても、すべての内容を1人で読みこなすのは現実的ではありません。光が当たらない企業の情報は埋もれたまま。これは営業提案を求めている一般事業会社にとっても損失です。
大量の不動産情報から該当エリアのニーズ探る
CREのサービス事業者として、なぜこのプラットフォームを提供したいと考えたのか。
不動産業界は営業手法1つ取ってみても勘や経験といった属人的な傾向が強く、テクノロジーを通じた効率化の余地が大きいと考えています。そもそもCREは明確な市場があるわけではなく、定義もあいまいな領域です。私自身、Jリートでの物件取得の法人営業に長年携わってきた経験から、企業の開示資料を効率よく調べて営業できる一連のプロセスが欲しかったという思いが原点にあります。
当社は2019年の設立以来、不動産法人営業支援テック「CCReB AI(ククレブ・エーアイ)」と不動産マッチングテック「CCReB CREMa(ククレブ・クレマ)」を不動産会社のお客様向けに提供してきました。不動産の活用に関心の強い企業群を可視化するシステムに対し評価の声をいただきましたが、お客様にとっては一般事業会社との接点で課題は残ります。以前ならメインバンクを確認し紹介をお願いするアプローチがありましたが、コロナ禍ではそれも難しい状況です。一般事業会社の方にも価値あるサービスを提供することが、不動産会社との懸け橋(ゲートウェイ)につながると考えました。
懸け橋として、どのような工夫を持たせているのか。
開示情報のデータベースだけではなく、最新のCRE動向を提供しているのが大きな特徴です。これは一般事業会社の総務部門や不動産会社の方を対象としたコンテンツです。既に提供するマッチングテックに蓄積された大量の不動産情報からバブルマップ形式で該当エリアの売買や賃貸のニーズを探るのに適しています【図③】。土壌の調査会社のデータベースとも連携しているので、その土地のリスク情報を地図画面から簡単に得ることもできます。
【図③】バブルマップによる不動産情報の表示画面
一般事業会社にとってCREは、BS/PLの改善のみならず次の経営戦略に深く関わり、その手法も単なる遊休地の売却やセール&リースバック取引だけでなく多様化しています。不動産活用の成功事例など、最新の情報を共有できるハブ機能として「CCReB GATEWAY」というプラットフォームを多くの方に活用いただき、利用者同士の交流の場として広げたいと考えています。