日本のPE(プライベート・エクイティ)ファンドは、その存在感を着実に増して来ている。第5号目のファンドで過去最大規模の1,500億円の調達に成功した、ポラリス・キャピタル・グループ代表取締役社長木村雄治氏に、日本、そして海外における日本のPEファンドへの評価と今後の戦略について伺った。

PE市場を切り開いてきた

木村 雄治氏
ポラリス・キャピタル・グループ
代表取締役社長
木村 雄治

2019年12月に募集を開始した第5号ファンドが、過去最大規模の投資を集めた。

おかげさまで、第5号ファンドでは1,500億円を資金調達することができた。内訳としては3分の2が海外の投資家で構成されている。国内の投資家に加え、欧米の年金やアジアのFoFs(ファンドオブファンズ)、ソブリン系など、内外の投資家から幅広く投資いただけた。今回は海外の投資比率を増やそうという狙いはあったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で活動が制限され、最終確定するまでに時間がかかってしまった。ようやくここまで来られたと感謝の気持ちで一杯だ。

当社が歩んで来た道のりを振り返ると、やはり感慨深い。2004年9月の創業と同時に第一号ファンドを募集した。このときの調達額は296億円。国内の機関投資家のみで調達したファンドだった。その後、第2号ファンドは319億円。第3号ファンドから海外投資が入り520億円、第4号ファンドでは投資額も750億円と大幅に増えた。海外の投資家比率は約半分になり、大きな成果になった。

日本のPEファンドが海外市場で存在感を示すには、当然だが実績を積まなければならない。当社の場合、新しいファンドを設定する度に、過去のファンドのパフォーマンスを評価していただき、顧客も増えて行った。当社の評判を流して下さる投資家も増えていき、国内外において当社の存在感も高まっていった。海外の投資家からは投資ファンドの中立性、客観性が求められるが、当社は役職員で自社株を100%持つ完全な独立系の運用会社として、ニュートラルな存在であることも、好感されているようだ。

ポラリス・ファンドの変遷

「選択と集中」が加速する

着実に投資の規模が大きくなっている。どのような手法で投資を行っているのか。

当社では、中堅・中小企業の事業承継や大企業からの子会社・事業部門のカーブアウト(切り出し)を主なテーマに投資を行って来た。日本の企業は、いずれのケースも周囲を取り巻く“しがらみ”によって、本来の力を発揮できていないことが多い。私たちは、そのような企業の中に潜在する本当の強みを評価し、経営に深くかかわるハンズオンという手法で経営の中核に入っていく。企業の魅力を最大限発揮できるように、パートナーとしてコミットメントしていくのである。私自身が日本興業銀行出身で、企業を長期的に支えるDNAを当社の社員も継承している。

敵対するのではなく、企業に寄り添い、企業価値を向上させていくバイアウト。実績を積み重ねながら、コツコツと市場を開拓してきた。現在は事業承継に悩む中堅・中小企業にとって、一つのソリューションとして定着していると思う。

第5号ファンドの資金調達の際に大企業の経営陣から「日本でも、そろそろ投資額の大きいファンドをつくっても良いのではないか。御社にぜひ挑戦して欲しい」と背中を押していただいた。日本では1,000億円という調達額は一つのハードルだった。

投資家からのニーズに応えるためにも、PEファンドは必要。

そう思う。今後は「選択と集中」が進んで行くだろう。コーポレートガバナンスコードの実効性を高めるために、スチュワードシップコードが2020年3月に改定されるなど、投資家の責任も問われている。経営者は企業価値を向上するために、ポストコロナの世界で、どの分野が経営のコア、又はノンコアになるのかを改めて問い直さなければならない。デジタル化を背景に数年後に何が残るのかを見極め、ノンコアの部門は売却する。また、最近、出てきているのが親子上場している企業の案件だ。受益者へのリターンを考えれば、解消するべきではないか、と投資家から疑問の声が上がっている。こうした状況のなか、M&A案件はさらに増えて行くだろう。PEファンドへの期待は高まっている。他の運用会社にもぜひ、積極的にファンドを組成していただき、切磋琢磨しながら日本のPE市場を盛り上げていきたいと願っている。

ポストコロナとプライベート・エクイティ

存在感のあるファンドを

国内外のPE市場について、どう見通しているか。

国内の、都市銀行が中心になっている。地方銀行ではオルタナティブ投資の経験がない銀行もあり、慎重な姿勢を崩さないことも多い。年金や生損保についても開拓の余地がある。一方で、海外の投資家からは、日本のバイアウト、カーブアウト投資はバリューアップのポテンシャルが高いと評価されている。問い合わせも増えており、関心の高さがうかがえる。現在も、カーブアウトの大型のファンドが動きつつある。事業承継も400~500億円の案件が出てきつつある。いずれご案内できることになるので、期待していて欲しい。

投資分野としては、5G(第5世代移動通信システム)やIoT(モノのインターネット)などのデジタル関連に注目している。コロナ禍によってあらゆる分野でデジタル化が促進されるなか、ビジネスモデルを変革する際に必要な資金調達手段としてPEファンドの経験やノウハウを提供できる。

今後の戦略については。

日本におけるPEファンドのリーディングファームとして、地盤を固めていきたい。国内最大級の投資ファンドをつくったアドバンテージを活かしていく。国内のファンドのサイズ感には限界があるという常識を壊せるように、チャレンジを続けて存在感のあるファンドを設定したいと思っている。

当社ではIRをとても大事にしている。情報の透明性を常に保つようにしており、投資家の皆様には、四半期ごとにファンドの運用状況を報告している。日本のPEファンドは定性的・定量的にも、海外にも劣後しないレベルまで高まって来ている。私たちもさらに進化して、投資家のみなさまの期待に応えていきたい。

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