予定利率は2.0%―2.5%が大半

大浦 裕一郎
ラッセル・インベストメント
コンサルティング部
コンサルタント
大浦 裕一郎

ラッセル・インベストメントでは、公的年金・私的年金のお客様を中心に資産運用コンサルティングサービスを提供している。この連載では、主に企業年金の資産配分や採用戦略の動向、そこに認められる課題や考え方をご説明したいと考えている。

企業年金は、制度上設定されている予定利率を資産運用で長期的に達成する必要がある。この予定利率は金利水準や企業の運用リスク許容度の低下、運用環境の変化ともに引き下げられており、現在2.0%―2.5%の範囲で設定している企業年金が大半を占める。

連載初回の本稿では、上記のような動向に合わせて、企業年金が資産配分をどのように変化させてきたかをおおまかに振り返りたい。2000年代以降の企業年金における資産配分の変化は、一言で表すと、株式比率引き下げや低金利化による期待収益率低下を他の資産で代替するべく投資対象を拡げてきたGo to オルタナティブ(代替)の歴史と言える。

企業年金の投資対象資産は拡張してきた

具体的には、下図の通り株式への配分比率は徐々に引き下げられ、替わりにオルタナティブ投資が増加した。債券運用においては国内金利の低下から長短スプレッドを狙ったヘッジ付き外国債券への配分が促され、最近では国債だけでなくクレジット債を構成銘柄とする指数を政策ベンチマークとして用いたり、以前は企業年金では一般的な投資対象でなかった非投資適格級の債券戦略を組み入れたりする動きもみられる。株式においてはホームカントリーバイアスの是正(下図では国内株式比率引き下げが外国株式より進んだことが明白だろう)や新興国株式投資など投資対象のグローバル化が進んだ。

【図表】ラッセル・インベストメントのコンサルティング顧客の基本資産配分(単純平均)の推移

【図表】ラッセル・インベストメントのコンサルティング顧客の基本資産配分(単純平均)の推移
出所:ラッセル・インベストメント「クライアント・ユニバース レポート」 2020年3月末時点

オルタナティブ投資で採用戦略が多様化

とりわけ資産クラス内で採用戦略が多様化したのが、オルタナティブ投資と言える。オルタナティブ投資の一つであるヘッジファンド投資は、ファンドオブヘッジファンズを通じて行うことが主流だったが、同戦略の運用実績不振などもあり、企業年金が自身のリスク特性に合ったポートフォリオを構築すべくシングルヘッジファンドの組み合わせに移ってきている。

プライベート資産は、元々国内不動産やPEが主要な投資対象だったが、グローバルで低金利が進むにつれ、インカム確保を狙うテーマから海外の不動産やインフラストラクチャー、最近ではファンド投資としての歴史が比較的浅いと考えられるプライベートデット戦略への投資も拡がった。

新型コロナウイルス感染拡大による、いわゆるコロナショック後、株価水準は堅調に推移しているが、一時的にであれ、株価の大幅な下落は年金財政や母体企業会計に影響を与えうる。今後も多様な投資対象への分散の重要性は変わらないだろう。