ETF需要が最高値更新を牽引

森田アソシエイツ 代表 森田 隆大
森田アソシエイツ
代表
森田 隆大

2025年に入り、金価格は50回ほど最高値を更新した。2025年3月に史上初めて1オンスあたり3000ドルを超え、そして10月に4400ドル近くまで急騰した後、10%ほどの急落に見舞われた。それでも、2025年初来の上昇率は50%を上回り、他主要資産のパフォーマンスを圧倒した。

一方で、金相場がピークを超え、転換点に差し掛かったとの意見も聞かれるようになったが、価格上昇を支えてきたファンダメンタルズ要因は変化していないため、長期上昇エネルギーがまだあると思われる。

4000ドルを大きく超える今回の最高値更新を牽引(けんいん)したのは、これまでの長期保有が基本の中央銀行や消費者に加え、ETF(上場投資信託)投資家が大きな役割を果たした。特に欧米市場では、マクロ環境の不確実性の上昇がプラス要因として評価されるものの、経済指標を重視して取引するETF投資家も多い。実際、2021年にFRB(米連邦準備理事会)がテーパリングを開始すると、金利高・ドル高を背景に欧米のETF投資家は2024年上半期まで売却に走った(図表)。

その後、多くの金融当局における金利政策の反転を受け、ETFに再び資金が加速的に流入し、最高値更新に一役買った。しかし、短期収益志向が強い欧米ETF投資家の存在もあり、市場ボラティリティも上昇した。

■金ETF需要の推移
金ETF需要の推移
出所:ブルームバーグ、会社発表、ICEベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル
ディスクレーマー:https://www.gold.org/terms-and-conditions#proprietary-rights

ファンダメンタルズ要因は健在

確かに金価格はいったん急落したものの、2025年初来の上昇率は50%を超え、過去最高レベルで推移している。価格高騰を支えてきた要因が引き続き健在しているからである。

まず、地政学リスクは低下傾向に向かう様子は見られない。ガザにおいて停戦が合意されたものの、まだ状況は不安定であり、平和への長い道のりは始まったばかりである。ロシア・ウクライナ戦争も、トランプ米大統領の努力にも関わらず、終結が遠のく一方である。麻薬問題をきっかけとした米国とベネズエラの対立など、地政学リスクはむしろさらに蓄積される感がある。

次に、世界経済はトランプ関税や貿易政策の影響も受け、減速傾向にある。IMF(国際通貨基金)は2025年および2026年の世界経済成長率が3.2%と3.1%に鈍化すると予測している。不確実性の長期化、保護主義の拡大、移民政策の厳格化による労働供給不足などにより、下振れリスクがさらに増幅する可能性があることも指摘されている。

インフレ率の上昇や高止まりも多くの国において共通の悩みである。つまり、スタグフレーションが発生するリスクが高まっており、こうした状況においてセーフヘブン資産としての実績がある金への注目は高まると思われる。

さらに、長期化する米国政府機関の閉鎖、急速に膨らむ米国の財政赤字、トランプ大統領によるFRBの独立性への政治介入、自国第一主義の拡大などにより、米国・米ドルの信頼性・安定性に関する懸念が増幅している。米国発のリスクを米国資産でヘッジすることが難しいことも影響し、米国・米ドル離れの流れが加速しており、代替する安全資産としての金の地位を押し上げている。

加えて、グローバルベースで政府債務が急増していることに対する投資家の警戒が高まっている。2024年末における世界の政府債務が累積で1000兆ドルを超え、対世界GDP(国内総生産)比で93%に達しており、現在も加速的に増加している。

他に、株式のオーバーバリュエーションに懸念を持つ投資家や、株式と債券の相関が高い環境でポートフォリオの一層の分散を図りたい資産運用者が増えていることなども、金の資産保全機能に対する期待が高まる要因になろう。これらは、金価格がさらなる高みに挑戦するエネルギーがあることを示唆しているのではないだろうか。