年金資産運用・基礎の基礎 【プライベートアセット再整理】第7回ポートフォリオどう構築【前編】〜ベンチマーク「不在」、投資家自身の理念と「軸」重要
この連載では、プライベートアセットの代表的な資産について5回にわたって説明し、前回の第6回で普及の現状や背景を考察してきました。では実際にプライベートアセットのポートフォリオをどのように構築していけばよいのか。留意点は何か。今回から3回連続で、ラッセル・インベストメントの山浦厚能さんに解説していただきます。
プロスポーツのチームづくりと共通点
意外だったのですが、山浦さんは結構なスポーツファンらしいですね。
山浦 はい。気の早い話ですが、来年2026年は野球のWBC、サッカーのワールドカップといった世界大会が開催されます。野球もサッカーも、世界を驚かせる結果を出せるだけの潜在能力があると期待しています。
ところで、こういったプロスポーツのチームづくりと、資産運用におけるポートフォリオ構築には類似点があるのです。プロスポーツでは、選手一人ひとりのユニークな特性と能力を深く理解し、それらを最大限に活かしながらチームを構築することが肝心ですよね。資産運用を行う投資家も「チームの監督」という立場で適切に「選手」を選択し、長期的なビジョンを持って「チーム」の新陳代謝を図っていくわけです。
株式や債券といった伝統資産と、プライベートアセットでは「チーム編成」に違いが出てくるのでしょうか。
山浦 大事なポイントです。プライベートアセットは、伝統資産といくつか異なる特徴があります。その違いを理解した上で、ポートフォリオを構築する必要があります。踏まえるべき重要な特徴を3つご紹介します。
信頼できるインデックスは存在せず
特徴の第一は何ですか。
山浦 まず、プライベートアセットではベンチマークといった座標軸が存在しません。
例えば、株式では、「大型・小型」と「バリュー・グロース」という特徴を持ったアクティブファンドを組み合わせてポートフォリオを構築します。ポートフォリオ構築の基本形は①スタイル分散②スタイル内の最良マネージャーの発掘③確信度に応じた配分比率の特定──といったものになります。そしてポートフォリオは、ベンチマークを基準にしてどの程度の乖離があるかについてスタイル分析や、ベンチマークとのリターンの差を標準偏差で示すトラッキング・エラーで定量的に測ることが可能です。
| インフラ・不動産 | PE(プライベートエクイティ) | PD(プライベートデット) |
|---|---|---|
| コア・コアプラス | ベンチャーキャピタル | シニアローン |
| バリューアッド | グロースエクイティ | メザニン |
| オポチュニスティック | バイアウト | ディストレス |
| セカンダリー | ||
| 共同投資 | ||
出所:ラッセル・インベストメント作成
ところが、オルタナティブでは信頼に足るインデックスファンドが存在しません。何を基準にしてポートフォリオを構築すれば良いのか、判断するための「ものさし」がないわけです。例えば、資産クラス別に【図表1】のような代表的な戦略に区分はできます。また、おおよそのAUM(運用資産残高)比率といったデータも取得可能です。しかし、それを基準にしてポートフォリオを構築することが「正解」というわけではありません。これは戦略だけでなく、地域やセクターについても同様です。
投資機会を幅広く、柔軟に検討
では「ものさし」を欠いた状態で、どのようにファンドを選んでいけばよいのですか。
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