J-MONEYカンファレンス「ポートフォリオの“代替”から“本命”へ──オルタナ運用を軸とする次世代型運用戦略とは?」 【パネルディスカッション】今、機関投資家に求められるプライベート投資のトリセツ「負けない資産構成」へ全方位で分散〜将来のキャッシュフロー予測と管理が肝要
J-MONEYカンファレンス「ポートフォリオの“代替”から“本命”へ――オルタナ運用を軸とする次世代型運用戦略とは?」が2025年9月26日、東京・日本橋のベルサール東京日本橋で開催された。本記事では、前田建設工業企業年金基金の矢鋪英美氏、ラッセル・インベストメントの藤井春登氏、そしてJ-MONEY論説委員の阿部圭介氏ら3名が登壇した「特別講演」の概要をお伝えする。

【パネリスト】
前田建設工業企業年金基金
常務理事兼運用執行理事
矢鋪 英美氏

【パネリスト】
ラッセル・インベストメント
オルタナティブアドバイザリー部
シニア・プライベート・マーケッツ・スペシャリスト
藤井 春登氏

【コーディネーター】
J-MONEY 論説委員
(朝日新聞企業年金基金・前常務理事)
阿部 圭介氏
2012年にオルタナ枠を創設。現在は政策資産配分の35%
阿部 本日は前田建設工業企業年金基金の矢鋪さんをお招きした。矢鋪さんの基金は種々検討を重ねながら、プライベートアセットを含めたオルタナティブ投資を徐々に拡大してきた。また、ラッセルの藤井さんには、オルタナ投資が積み上がっていく際の課題や対策などについて詳しく説明いただく。そのあたりにちなんで、今回のタイトルを「プライベート投資のトリセツ」とさせていただいた。
矢鋪 前田建設工業は1919年の創業で、近年、建設事業とインフラサービスを融合させた「総合インフラサービス業」を標榜している。道路や空港といったコンセッション事業にも注力をしている。ちょっと変わったところでは、マジンガーZの格納庫を実際に建設すると仮定して工期と工事費を積算するという「前田建設ファンタジー営業部」というストーリーが2020年に映画化された。DVD化やストリーミング配信もされている。
本題に移りたい。前田建設工業企業年金基金の概要を【図表1】でお示しした。当基金では近年、加入者や受給権者に対する年金リテラシー教育にも力を入れている。また、現在の資産配分と過去からの変化を理解していただくために、【図表2】で2013年時点との比較をした。
・設立年月/2005年3月に代行返上、厚生年金基金から移行
・実施事業所/前田建設工業株式会社他4事業所
・資産総額/約500億円
・加入者/約3,400人 受給者/約1,700人
・予定利率/2.0% 期待運用収益率/約2.3%
・基金職員数/3名

出所:前田建設工業企業年金基金作成
2023年3月末基準の財政再計算とALM(資産・負債管理)分析を踏まえて、2024年4月に新たな政策アセットミックスに移行した。その際、債券と株式の内外区別を撤廃して「グローバル債券」「グローバル株式」に変更した。現在のアセットミックスではグローバル債券29%、グローバル株式24%、生保一般勘定10%、短期資金2%でオルタナティブ資産は35%としている。
オルタナティブ枠は2012年に設けた。実際の投資はまだ、オルタティブ投資という言葉が認知されていない2003年から始めており、直近までの推移は【図表3】の通り。ここでは、財政再計算のタイミングと合わせて示している。直近で33%となっている。

阿部 オルタナティブ枠が35%というのは、企業年金としては少し高めかなと。また、枠の設定も早い方だと思うが、どんな理由あるいは背景があったのか。
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。















