インフレ再燃の兆しや各国の金融政策転換などを受け、グローバル金融市場は金利の方向感が読みづらい“ボラティリティの時代”に突入した。揺れる金利に揺るがぬ戦略を──。長期マネーの機関投資家はいかに安定したリターンを確保し、リスクを制御すべきか。「金利変動耐性」をキーワードに、ポートフォリオの再設計のポイントを取材した。

世界的なインフレ再燃で日米とも利上げするシナリオ

TWT木村氏
タワーズワトソン・
インベストメント・サービス
代表取締役社長
木村 倫啓

日米の金利は方向感が読みづらい展開が続いている。日本銀行は2025年7月の金融政策決定会合で政策金利の0.5%維持を決めた。据え置きは4会合連続である。日銀は物価上昇を考慮して追加の利上げをうかがっていると言われ、0.75%になれば30年ぶりだ。一方、米国では、関税に伴うインフレを警戒するFRB(米連邦準備理事会)がFOMC(連邦公開市場委員会)において、トランプ大統領の金利引き下げ圧力をかわしながら、利下げを5会合連続で停止している。政策金利は4.25~4.5%で、今回を除くと2007年以来の水準にある。

「当社の向こう3年のベースシナリオは『日本は利上げ、欧米は利下げ』だ。ただし、米国関税政策の影響、地政学リスク顕在化に伴うエネルギー価格上昇といった世界的なインフレ再燃も考えられるため、『日本は利上げ、欧米も利上げ』シナリオも捨てきれない。年金基金などの機関投資家は、今後も複数のシナリオに備えたポートフォリオの検討・構築が求められる」(タワーズワトソン・インベストメント・サービス 代表取締役社長の木村倫啓氏)

同社では、70~80の年金基金に複数年契約の運用コンサルティングサービスを提供している。顧客の年金資産額規模は100億円前後から数千億円まで多岐にわたる。この10年ほどは資産規模を問わず、円資産の比率を減らして米国などのプライベート資産を採用した顧客が多かった。しかし、2024年に金利ある世界が復活し、日本株市場が上昇したこともあり、最近は円資産を再検討したいとの声を耳にするようになったという。

「もともと一般的な年金基金の期待リターンは2.5%程度とそれほど高くない。実際の収益率も当社の最新のサーベイ結果では2.1%だ(図表1)。多くの顧客のポートフォリオは、ヘッジ外国債券、実物資産、PD(プライベートデット)などを組み入れ、すでに分散されている。ただし安定運用志向ゆえに、目標リターンが低い部分では米国のダイレクトレンディングなど特定資産頼みのケースがみられる。今回の金利上昇をきっかけに資産内容を見直したい顧客には、質的な分散を重視しながら、一つの選択肢として、残存期間が5年以下の割安銘柄を投資対象とした債券持ち切り戦略といったシンプルなアプローチの提案もしている」(木村氏)

■図表1:国内年金基金の収益率の推移(ユニバース中央値)
国内年金基金の収益率の推移
※推計運用利回りの算出は、約100社が参加しているタワーズワトソン・インベストメント・サービスのサーベイ・データの直近の資産配分データを基に、市場指数を乗じて行っている
出所:タワーズワトソン・インベストメント・サービス

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