米国を発端とする市場不安の中、急激なボラティリティの上昇が懸念される。こうした状況下、2025年6月6日に開催された「J-MONEYカンファレンス」(主催:J-MONEY)において、キャプラ・インベストメント・ジャパンの伊﨑彬晃氏が登壇。同氏は上昇局面では「攻め」も期待できる一方で急落時には「守り」としてヘッジ効果を発揮する、収益性と安定性を兼ね備えた戦略を紹介した。

米国を震源地とした不確実性の高まりと資産運用における示唆

伊﨑彬晃氏
キャプラ・インベストメント・ジャパン
インベスターリレーションズ
シニアディレクター
伊﨑 彬晃

第二次米トランプ政権の関税政策や防衛政策の動向はグローバルな政治・経済の構造的な変化に繋がる可能性も指摘される中で、様々な観点で不確実性を高めている。こうした状況を受け、金融市場においても今後ボラティリティが過去と比べて高い水準で推移することが想定される。
 
また新型コロナウイルス禍以降、インフレ懸念がくすぶる局面では中央銀行は景気動向や株価だけを見て利下げを行うことが難しく、インフレ抑制のためには景気や株価を一定程度犠牲にしてでも政策金利を高位に維持する必要性も高まってきている。結果として、コロナ禍以降では「株式と債券の逆相関」が必ずしも成り立たない状況が続いている。
 
よりミクロの観点では、例えば米国株式市場においては一部テック銘柄群(マグニフィセント・セブン)の動向が株式指数全体の動向を決めてしまうような状況が続いており、アクティブ株式戦略の観点からはこのような銘柄群の高値を積極的に追い求めることができるか否かで運用の成否が大きく左右される格好となっている。こうした市場構造の観点からも株式市場のボラティリティは高まりやすくなっていると考える。
 
資産間の相関が高まる局面では複数の資産を併せ持つことによる分散効果が低下し、各資産固有のリスクとリターンの優劣がポートフォリオ全体の運用実績に、一層大きな影響を与えてしまう。このような環境下、伝統的資産の中で最も期待リターンとリスクが高い株式投資においては、ポートフォリオにおける役割期待を果たすべく「上昇局面での収益獲得(攻め)」と「下落局面での損失抑制(守り)」の両立という、シンプルかつ困難な課題に取り組むことが求められている。

株式の下落リスク抑制・分散手法

株式下落リスク抑制・分散手法については例えば以下の4つのような手法が挙げられるが、それぞれに利点と課題がある。
 
①株式配分の削減
下落リスクを着実に低減できる一方で、アップサイドも犠牲にせざるを得ない。

②株式と債券の逆相関を活用
一般に市場危機時には株と債券は逆相関となる傾向にあるが、インフレの影響などにより、近年では株式と債券の逆相関が成り立たない局面も増加。

③CTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザー)やグローバルマクロ戦略等の活用
一定のリスク分散効果が期待されるが、運用戦略やマネージャーの力量への依存度が高いため期待通りに下落リスクをヘッジできないケースも想定される。

④オプション取引の活用
当社が注目する投資ツール。株価急落に伴い株価の変動性は高まる傾向が強いため、ボラティリティのロングが株価下落に対して逆相関となる蓋然性は相応に高いが、一般にコストがかさむ傾向にある。例えばVIX指数(S&P500指数のボラティリティを示す指数)のロングポジションを2018年初来保有し続けた場合のリターンを分析すると、2020年のコロナショック時は150%を超えるリターンの獲得となりヘッジツールとしての有効性が確認できる。一方で、以降2025年5月まで継続保有した場合は高いキャリーコストが影響し累積リターンはマイナス97%という悲惨な投資結果になってしまった。

キャプラ・ディフェンシブ・エクイティ戦略

 
こうしたボラティリティ・ロングの特徴を踏まえ、当社が提供する『キャプラ・テールリスク・ヘッジ戦略』は平時におけるキャリーコストを極力抑えつつ、市場危機時にはヘッジ機能を果たすことを目的として設計されており、キャプラの旗艦戦略においてもその運用実績を着実に下支えしてきた。
 
例えば2020年3月のコロナショック時や2025年4月の米国関税ショック時の年初来のキャプラ・テールリスク・ヘッジ戦略の運用実績は、それぞれ株価急落が発生するまでは概ねゼロに近い運用実績となっているものの株価急落時には損失の大部分をカバーできるプラス寄与となり、株価下落リスクに対する有効性を示すことができた。
 
そして、この先進的手法を駆使したテールリスク・ヘッジ戦略を株式指数と組み合わせて運用するのが、『キャプラ・ディフェンシブ・エクイティ(以降DE)戦略』である。株式投資戦略におけるリターン獲得(攻め)とリスク抑制(守り)という、しばしば相反する要素を両立させるという点で不確実性が高まる市場環境において極めて有効なアプローチであり、次世代の株式投資と位置づけられると考えている。

■キャプラ・ディフェンシブ・エクイティ戦略の比較
キャプラ・ディフェンシブ・エクイティ戦略およびS&P500指数のパフォーマンス推移
出所:キャプラ・インベストメント・ジャパン
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DE戦略では投資家の「攻め」と「守り」のバランスに対するニーズに応じて次のようなバリエーションが用意されている。
 
まず(1)「DE戦略(保守型)」は、下落リスクの抑制をより重視した設計である。長期(2010年3月来)で見た運用実績は株式指数(以下、本稿ではS&P500指数の意)と概ね同様の水準となる一方で、最大下落率やボラティリティは他の類型対比で最も抑制されている。
 
(2)「DE戦略(中立型)」は株式指数と比較して下落局面でのリスクを抑えながらも、上昇相場では魅力的な超過収益を獲得することを目指す運用である。「攻め」と「守り」のバランスが取れた戦略であり、長期では株式指数対比で下落リスクやボラティリティを抑制しつつも年率でプラス2.5%強の超過収益率を獲得している。下落リスクを抑制しつつ魅力的な超過収益の獲得が期待できるという意味で、「DE戦略(中立型)」は株式ポートフォリオのコアとして運用実績に貢献できる運用であると考えている。
 
(3)「DE戦略(積極型)」はより「攻め」を重視した運用であり、株式指数並みの下落リスクにて株式指数対比で相応に高い超過収益獲得を目指す。長期で見ると概ね設計通りの運用実績となっており、当該期間では年率でプラス4.5%程度の超過収益を獲得できた。「DE戦略(積極型)」は株式ポートフォリオの資金効率を高める観点での活用も期待される。
 
さらに、(4)「ダイナミック・DE戦略」は、定量的な指標に基づいてヘッジのオン・オフを切り替える仕組みを備えており、ヘッジにより獲得した利益の確定を通じて魅力的なリスク調整後リターンの獲得が期待される。
 
最後に(5)「アクティブ・DE戦略」では、一定のルールに基づき株式リスクの配分を機動的に調整する柔軟な運用が行われる。運用実績では超過収益率は概ね「DE戦略(中立型)」に近い水準となる中、下落リスクやボラティリティの水準はより低位となっている。
 
このように、DE戦略は、株式投資におけるシンプルかつ困難な課題である「攻め」と「守り」の両立を目指しており、不確実性と資産間の相関が高まりやすい今後の市場環境においては、ポートフォリオの収益ドライバーおよびヘッジツールとしてその有用性はますます高まっていると考えられる。株式インデックスも投資家ニーズに応じて選択可能なので、アクティブ株式戦略の選択肢の一つとして戦略の活用をご検討いただきたい。

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