RBCブルーベイの『クレジット・アルファ・ロング・ショート戦略』は、徹底したボトムアップ分析に基づく相対価値取引で、市場の方向性に依存しない収益を追求するヘッジファンドだ。RBCブルーベイ・アセット・マネジメントの帆足望氏は2025年6月6日、東京都内で開催されたJ-MONEYカンファレンス(主催:J-MONEY)で、同戦略の魅力や特徴を説明した。

投資妙味の高いBBB・BB格に投資

帆足望氏
RBCブルーベイ・アセット・マネジメント
運用本部 ポートフォリオ・マネジャー
帆足 望

2001年に英ロンドンで設立されたブルーベイ・アセット・マネジメントは、ヘッジファンドの運用会社としてスタートし、2010年にカナダロイヤル銀行(RBC)の傘下となった。現在はブランド名である「RBCブルーベイ」としてグローバルな債券運用を行っており、運用資産残高は約20兆円に上る。

金融市場の不確実性が高まる中、投資家に求められるのは守りを重視しつつ安定的なリターンを確保する戦略だろう。当社が提供する『クレジット・アルファ・ロング・ショート戦略』は、主に先進国社債のロング(買い持ち)とショート(売り持ち)のポジションを通じて、ボラティリティを年率6%に抑えながら、年率8%(ネット値、米ドルベース)のリターン獲得を目指す戦略だ。

2011年の運用開始来の実績値は年率ボラティリティ4.71%に対し、年率リターン8.66%を記録。過去一度もマイナスリターンとなった年はない。直近の2024年度は8.97%(ネット値、米ドルベース)のリターンであり、また2025年4月には、米国の関税政策が発動された中でもプラス1.47%の月間リターンを達成した。
 
当戦略は、大別して「クレジット戦略」「金利戦略」「通貨戦略」の3つを収益源としているが、その中核をなすのはクレジット戦略(※)だ。クレジット戦略では、先進国の社債およびソブリン債のロング・ショートポジションを組み合わせることで、市場全体の方向性に依存しないリターンの創出を狙う。

ここで特徴的なのは、投資対象の約80%をBBBおよびBB格銘柄としていることだ。BB格銘柄については、発行体格付けが投資適格級の企業の発行するハイ・イールドの劣後債が中心となる。これらは純粋なハイ・イールド債と比較して相対的に信用度が高いものの、銘柄間のスプレッド差異が大きいのでロング・ショートの双方で収益機会を見出しやすい。最も投資妙味が高いゾーンと言えるだろう。

当戦略では、銘柄間のファンダメンタルズの差異がより大きい市場でこそ、ボトムアップによる銘柄選択が効果を発揮するとの考えに基づき、トップダウンやマクロ・ビューよりもボトムアップによる銘柄選択を重視している。

独自システムを用いた規律的な運用

ここからは、当戦略の特色を3つのポイントに絞り、さらに詳しくご説明したい。

まず1つ目は「規律あるチーム運用と厳格なリスク管理」だ。当戦略ではアナリストやポートフォリオ・マネジャー(PM)が積み重ねた投資アイデアを基に銘柄選択をしている。具体的には、当社が独自開発した専用システムに、各アナリストとPMが投資アイデアを入力。分析時の債券価格、目標価格、ストップロス(損切り価格)を設定するほか、ファンダメンタルズやバリュエーション、テクニカル、ESG(環境・社会・企業統治)の項目について確信度をスコア化する。明確で規律ある投資プロセスを徹底することで、スタープレイヤーに依存しない再現性の高い運用を実現できるのだ。
 
なお、あらかじめ定めたストップロス水準に達した場合は、アラートが通達される仕組みになっている。月初来リターンがマイナス2.5%に到達した場合は運用チームから独立したリスク委員会から運用者の裁量に基づくリスク削減が求められるなど、ポートフォリオレベルで厳格なリスク管理体制を整えている点も強調したい。
 
2つ目のポイントは「ベータ・リスクを抑え、社債の相対価値ポジションをコアとする商品設計」だ。先述の通り、当戦略では市場全体の方向性に賭けるのではなく、個別銘柄間のスプレッド差という“相対価値”に着目し収益を狙う。

例えば、2018~2020年にかけて米中貿易摩擦の激化などにより米国の自動車産業全体が強い下押し圧力を受けていた際は、ゼネラルモーターズをロングし、赤字に転落したフォードをショートするペアトレードを実施した。その後、コロナ禍でフォードのスプレッドが大幅に拡大したタイミングでポジションをクローズし、収益を獲得できた。
 
このような同一セクターにおける取引の他にも、同一発行体における相対価値取引や構造的なトレンドに着目した取引も行っている。債券は、中長期的に見ればファンダメンタルズに見合った適正な価格に収束していく傾向がある。綿密な分析に基づいて価格の歪みに着目できれば、ロングとショートの双方から安定的に収益を積み上げることが可能だ。

コロナショック時もプラス収益

 
最後のポイントは、市場のショック時こそ元本毀損を防ぐことに注力する「ダウンサイドを抑える運用」だ。当戦略が非常に良好なリターンを上げた期間の1つであるコロナショック時を例に挙げると、2020年1~3月期にグローバル株式が20%強、グローバル社債が約4%下落したときも、7.17%の収益を生み出すことができた。

■ダウンサイドを抑えた運用(コロナショック時)
ダウンサイドを抑えた運用
出所:Bloomberg、RBCブルーベイ
グローバル総合:Bloomberg GlobalAgg Index USD hedged、グローバル社債:Bloomberg Global Aggregate – Corporate Index USD Hedged、グローバル株式:MSCIワールド指数、当戦略:クレジット・アルファ・ロング・ショート戦略のネット値(米ドルベース)パフォーマンスを使用
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コロナショックなど市場が大きく混乱する局面では、企業の債務不履行などの信用リスクを対象にしたCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)より現物債のスプレッド幅が大きくなる傾向にあるため、現物債をショートできることが運用の強みとなる。コロナショック時はディフェンシブ銘柄をロング、シクリカル銘柄の現物債をショートしたことで、ショートサイドからロングサイド以上の収益を生み出すことができた。
 
他方で、コロナショック時に優良企業が流動性を確保するためにスプレッドがかなりワイドな水準で新発債を発行したことを受け、高格付け銘柄に機動的に投資した結果、2020年4~6月期の回復局面においても良好なリターンを稼ぐことができた。平常時には過度に市場ベータのリスクをとらないが、市場が大きく動く局面では、マクロチームとの意見交換などを通じてディレクショナルなポジションを取ることで、より高いリターンを目指していく柔軟性も持ち合わせている。
 
当戦略のパフォーマンスの大部分は社債から生み出されており、他のマクロ戦略を取り入れた多くのクレジット戦略とは一線を画していると言えるだろう。日本の投資家向けには円ヘッジクラスも提供しているので、ぜひご検討いただきたい。

本記事は2025年6月6日に実施した「J-MONEYカンファレンス」の内容をもとに再構成しました。なお、文中言及されているRBCブルーベイの運用戦略及び運用実績は、情報の提供のみを目的としており、特定の投資商品の取引や資産運用サービスの提供の勧誘又は推奨を目的とするものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。本資料は信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、当社がその正確性、完全性、妥当性等を保証するものではなく、その誤謬についての責任を負うものではありません。本資料に記載された内容は本資料作成時点のものであり、今後予告なく変更される可能性があります。また、過去の実績は将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。なお、当社の書面による事前の許可なく、本資料の全部又は一部を複製、転用、配布することはご遠慮ください。当社との金融商品取引契約の締結にあたっては、下記の投資リスク及びご負担いただく手数料等について契約締結前交付書面等を十分にお読みいただきご確認の上、お客様ご自身でご判断ください。■投資リスク 当社との投資一任契約に基づく運用においては、原則、外国籍投資信託を通じて、主に海外の公社債、株式、通貨等の値動きのある資産に投資しますので、基準価額が変動します。従って、契約資産は保証されるものではなく、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は全てお客様に帰属します。主なリスクとして、価格変動リスク、為替変動リスク、金利変動リスク、信用リスク、流動性リスク、カントリーリスク等があります。また、デリバティブ取引等が用いられる場合、デリバティブ取引等の額が委託保証金等の額を上回る元本超過損が生じることがあります。なお、投資リスクは上記に限定されるものではありません。■手数料等 投資一任契約に係る費用として、投資顧問報酬をご負担いただきます。また、投資先外国籍投資信託において、運用報酬、管理報酬、信託事務に関する費用等が契約資産から控除されます。これらの費用は、契約内容や運用状況等により変動しますので、その料率、合計額、上限額又は計算方法等を表示することができません。

RBCブルーベイ・アセット・マネジメント

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