知りたい!隣の企業年金・第35回 積水ハウス企業年金基金——「マルチオルタナ」で収益源泉を分散・拡大〜株式と債券すべてパッシブに変更
「累積建築戸数で世界一」という大手住宅メーカー、積水ハウスの企業年金基金を訪ねました。資産運用の責任者である奥村兼也(おくむら・けんや)運用執行理事は、母体企業の財務部でコーポレートファイナンスのグループリーダーも務めています。超多忙の中、資産配分をゼロベースで見直したり、オルタナティブ投資の一層の分散と収益源泉の拡大を企図して「マルチオルタナ」という受け皿を新設したりしています。その発想と実践を詳しく伺いました。

母体の財務部と基金を兼務
この連載で40社近くの企業年金の運用責任者やOBに取材してきました。相当数の方が母体の財務部の出身でしたが、財務を現役で兼務しているケースは初めてです。めちゃくちゃ忙しいのじゃありませんか。
奥村 ファイナンス・イベントと運用業務が重なると忙しいですね。特に昨年2024年は母体が米国の大手上場ホームビルダーを数千億円規模で買収したのですが、そのために当社として初めて外債を発行するなど、多様な資金調達を行いました。また現在は、2026年度にスタートする次期中期経営計画の策定などに取り組んでいます。
それだけの仕事量だと、普通の会社ではどちらかの専業ですよ。
奥村 そのような企業が多いようですね。ただ当社の場合は企業年金基金の常務理事と事務長が専任で、運用執行理事は以前から母体との兼務が通例です。運用会社などとの「窓口」は事務長、給付や裁定などは常務理事が責任者といった具合に住み分けができています。過去には私自身が事務長を担当していたこともあり、全体の状況をある程度は把握しながら、今は運用面にポイントを絞った業務を行っています。
積水ハウス企業年金基金の概要
- 所在地/大阪市北区大淀中1丁目
- 設立年月/厚生年金基金の代行返上で2004年9月に設立
- 資産総額/2,876億円
- 加入者/20,017人 受給者/4,119人
- 予定利率/2.5% 期待運用収益率/3.0%
(いずれも2025年3月末現在)
アクティブとヘッジファンドを全廃
奥村さんが事務長として、運用資産のモニタリングや入れ替えなどを担当していたときにポートフォリオを大きく見直したそうですね。
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