「責任ある投資家」としてのエンゲージメント活動【寄稿】アムンディ・ジャパン 岩永泰典氏
欧州最大の資産運用会社アムンディは、年次でエンゲージメント活動を総括するレポートを作成しており、このほど2024年版である「Engagement Report 2024」をリリースした。「責任投資」を基本理念の一つに掲げるアムンディは、企業が長期に渡る価値創造を行う上で、実効性あるガバナンス、環境や社会の領域の重要問題における企業のリスク管理や耐性、そして、同時に社会や経済全体に対して企業が与える重大な負荷の緩和・削減が不可欠である、との考えを堅持し、発行体の行動変容を促す取り組みを続けている。以下では、Engagement Report 2024で網羅的に報告されている活動のポイントを紹介したい。

岩永 泰典, PhD, CFA
アムンディ・ジャパンチーフ・レスポンシブル・インベストメント・オフィサー
2014年アムンディ・ジャパン入社、CIO兼運用本部長を務めたのち、2020年7月に日本でのチーフ・レスポンシブル・インベストメント・オフィサーに就任。責任投資を推進するとともにスチュワードシップ活動を統括。前職のブラックロック・ジャパンではグローバル・資産戦略運用部長、取締役CIOを歴任。ペンシルバニア大学ウォートン・スクールにてMBA、EDHECリスク・インスティチュートよりPhDを取得。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会認定アナリスト。
エンゲージメント実施状況

2024年にアムンディは、グローバルに2883の発行体との間でエンゲージメントを実施し、その内訳は、北米850、欧州737、アジアではエマージング諸国891、日本を含めた先進国で405となっている。これらの対象が主要指数に占める割合を時価構成比でみると、株式では、MSCI World 90%、同Emerging Market 72%、社債ではBloomberg Global Corporate 77%、JPM CEMBI Diversified Investment Grade 57%であり、顧客ポートフォリオにおいて相当な割合でエンゲージメントが実施されたことを示す結果となった。

エンゲージメントの期間は平均3年であり、その間の進捗はグループに共通のデータベースで管理している。2024年のはじめに進行中の事案で年内にクローズしたのは全体の9%であり、そのうち45%で何らかの改善がみられた。2024年より取り組んだトピックには、医療テクノロジー分野におけるAI(人工知能)活用と安全性・データ管理の問題、また、新興国ソブリン発行体との間で教育や就業機会などにおけるジェンダー平等(SDG目標5)などがある。
エンゲージメント・テーマ
アムンディがエンゲージメントで取り上げている課題は次の5つに分類される。①低炭素経済への移行、②自然資本保全、③人的資本と人権、④顧客および地域社会関係者の権利保護、⑤持続的成長のためのガバナンス。ちなみに、この5つはSDGsを構成する17のゴールにも関連付けが可能である。
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