2024年に創立90周年を迎えたジャナス・ヘンダーソンは、伝統的資産・オルタナティブ資産の双方で世界的なアクティブ運用の担い手となってきた。英国を本拠地として、世界中の機関投資家に幅広い運用ソリューションを提供してきた同社の運用に対する考え方や注目する投資機会について、来日した最高経営責任者(CEO)のアリ・ディバージ氏に伺った。

ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズ
最高経営責任者(CEO)
アリ・ディバージ

6000万人以上のエンドユーザーへの貢献

改めて、ジャナス・ヘンダーソン(以下、JH)とはどのような運用会社なのか。

ディバージ 我々がどのような運用会社なのかを説明する際に、JHが掲げる「パーパス(社会的意義)」以上の説明はないだろう。

JHでは、パーパスを「より輝く未来への投資を投資家と共に行うこと」と定めている。これは決して経営陣の一存で決められたものではなく、JHの約2000名の社員が、日々どのようなモチベーションで仕事をしているのか、何にやりがいを感じるのか、どのような責任感を持っているかなどを調査した結果に基づき、社員の総意として策定したものだ。

やや抽象的であるため補足すると、「未来」と「共に」がキーワードになる。まず「未来」についてだが、これは直接JHの顧客になる機関投資家などに限定されるものではなく、お客様のビジネスの先にいるエンドユーザーすべてにとっての「未来」を指す。

我々の投資ビジネスのエンドユーザーは6000万人以上と推計され、単純計算でJHの社員1人当たり3万人以上のエンドユーザーの金融上のウェルビーイングに貢献するという壮大なパーパスだ。大きな責任感を持って仕事をする必要がある。

JHのユニークなところは、顧客となる機関投資家に、それぞれどのようなエンドユーザーを抱えているのか細かく話を聞いている点だ。これは、いま述べた責任感を果たす上で我々の目標の解像度を上げる目的もあるが、同時に機関投資家と同じ目線を共有するためにも大事な行動だ。

プロフェッショナルな機関投資家として、どのような投資をすれば顧客のエンドユーザーの未来をより輝くものにできるのか。それを追求していくことが、顧客の利益の最大化にも繋がるし、ビジネスの枠を超えた絆を生んでくれると信じている。これが2つ目のキーワードの「共に」に含まれる内容だ。

3つのマクロテーマを基に変化の時代の投資機会を捉える

JHでは長期運用について、「ロングターム・マクロ・フレームワーク」という枠組みの下で投資戦略を提供していると聞いた。

ディバージ 世界は非常に大きな変化を迎えている。今思えば、数年前の世界が非常にシンプルにみえるほど、複雑な市場環境になりつつある。

そんな変化の時代にあって、JHでは安定的な長期運用を行う上で、3つのマクロテーマが投資に目を見張るべき影響を及ぼすと考えた。その展望に基づいて長期運用の戦略を立てていく枠組みが、「ロングターム・マクロ・フレームワーク」である。

具体的に見ていこう。まず1つ目のテーマが、戦争・紛争や政治的な対立構造の変化から、サプライチェーンの分断と再構築、政府の規制の変化が観測されていることなどを指す、「グローバルな地政学的構図の変化」だ。

そして2つ目が、「人口動態の変化」。これまでの世界のように人口が増えていくならば、投資におけるターミナルバリュー(永続価値)は常にプラスとみてよかったが、世界的な少子高齢化トレンドはその前提を覆す恐れがある。

最後の3つ目は、「資本コストの変化」である。過去数年間に金利水準が切り上がったことで、タダ同然であった“お金にかかるコスト”が復活した。魅力のないビジネスを行っている企業は資金調達が難しくなるなど、銘柄選別の在り方に大きな影響があるだろう。

世界的なアクティブ運用会社であるJHの知見がますます発揮される環境になっていると感じる。どのような資産クラスに投資妙味が生まれていくと考えているか。

ディバージ パッシブ運用からアクティブ運用に注目がシフトするトレンドは既に世界的なものになっている。その中で、投資妙味という観点では、前述したようなマクロテーマを踏まえてより勝者と敗者が明確に分かれていく小型株にまず注目すべきだろう。JHでもグローバル小型株を対象とするアクティブ戦略には非常に力を入れており、パフォーマンスも良好だ。

特に、世界が大きく変化する中では、各社のイノベーション(技術革新)に焦点を当てて選別することが重要になる。単に技術革新の種を持つだけでなく、技術革新を実現までもっていける力がある企業に投資することが大事だ。

ほかには、人口動態やサプライチェーンの変化に伴い、不動産にも同様に大きなチャンスが生まれるだろう。また、人口動態の変化に注目すれば、ヘルスケア分野の投資機会に目を向けない手はない。ヘルスケア分野の中でもバイオテクノロジーに投資するJHの戦略は、非常に良好なパフォーマンスを発揮している。

チャンスとともにリスクも高まる環境であるからこそ、ヘッジファンド戦略で絶対リターンを追求することも重要な選択肢になる。変化の中で没落するビジネスをショートすることで、超過リターンを得る期待が高まるためだ。

市場の動向を見据えて、専門運用会社を傘下へ

JHではほかにも、マルチアセット、オルタナティブ資産を含めた広範な資産クラスにまたがる運用ソリューションを提供されている。

ディバージ ユニークなところでは、「アダプティブ戦略」というものも提供している。これはノーベル賞を受賞した経済学者のマイロン・ショールズ博士が運用チームに参加している戦略で、市場のレジーム(状態)変化をフォワードルッキングにとらえることで超過利益の獲得を目指す内容だ。

具体的にはオプション取引のデータからレジーム転換を予測し、株や債券をはじめ各資産のアロケーションを市場の後追いではなく、フォワードルッキングな視点で調整する戦略だ。変化の時代でこそ威力を発揮する戦略として、高度な運用を志向する機関投資家の間でご好評いただいていている。

特に機関投資家の皆様には、こうした様々な資産クラスの組み合わせを通じて、顧客の望むリスク・リターンを実現するポートフォリオ提案を行うことで、より効率的な資産運用に貢献できると考えている。

■ジャナス・ヘンダーソンの運用資産残高における資産クラス別構成比
ジャナス・ヘンダーソンの運用資産残高における資産クラス別構成比
2024年9月末時点
■トータルリターンがベンチマークを上回った割合
トータルリターンがベンチマークを上回った割合
*各資産クラスの戦略で過去3年、5年、10年のトータルリターンがベンチマークを上回った割合(2024年9月末時点、運用資産残高ベース)
注:上記は過去の実績であり、将来の運用成果を示唆・保証するものではありません。

日本でもプライベート資産への投資が当たり前になってきた。

ディバージ プライベート資産は多くの運用会社、機関投資家が取り組むところになっているが、そのため想定するほど投資妙味が高くない場面も散見されるようになっている。

例えば現在ダイレクトレンディング(DL)戦略に投資する場合、プライベートエクイティ(PE)ファンドが既にスポンサーになっている企業に対する融資となるケースが大半になっている。その場合、慎重なデューデリジェンスが行われないこともあり、時間の経過とともにリターンが低くなる一方、リスクだけが高くなる可能性がある。

多くの機関投資家は、既にPE運用を手掛けており、PEへの資金の偏りを分散するためにDL戦略を検討しているかもしれない。そのとき注意したいのは、前述のようにPEと同じ案件にDLが提供されるケースが多くなっていることから、PEとDLの相関も高まっていることだ。

こうした事情を踏まえて、JHでは、アセットバック(担保資産付き)型のプライベートクレジット(PC)投資に注力している。実際、JHは同分野の投資に強みを持つ、米シカゴを拠点とするビクトリー・パーク・キャピタル(以下、VPC)という運用会社を昨年買収し、PC運用の強化を図ったところだ。

同社はリーマンショック前の2007年に米国シカゴで創業し、シカゴ、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドンに拠点を置いている。VPCの運用プロフェッショナルは平均25年超の運用経験を持つ、PC投資の専門家集団だ。

■(ご参考)VPCの主要2戦略の実績と概要
VPCの主要2戦略の実績と概要
出所:VPC
注記:上記はVPCの運用の特徴を説明するためのものであり、実際の運用が上記の通りに行われるとは限りません。
過去の実績は将来のパフォーマンスを保証するものではありません。
*1 VPC ABOC戦略コンポジット:2010年7月2日以降に運用を開始した複数のVPCクレジット・ファンド(クレジット投資の一部を構成しているエクイティを含む)により構成
*2 VPC LAOC戦略:25超の投資を通じ、100超の弁護士事務所等との提携による投資案件のエクスポージャー(ルックスルー方式による)
*3 キャリー収益、管理報酬、ファンド費用控除前。非米ドル通貨建ての取引に係るキャッシュフローは前述の時点の為替レートで米ドル換算。グロスIRRはVPCの未実現評価額の推定値に基づき算出しているため、実際の実現評価額に基づき算出した数値と異なる可能性があります。

昨年はVPC以外に、欧州のETFフランチャイズのタブラと、中東でオルタナティブ運用を提供するNBKキャピタル・パートナーズを買収した他、一昨年には北米中心にプライベートウェルス向けオルタナティブ戦略のディストリビューション・プラットフォームを提供するプリバコア・キャピタルとジョイントベンチャーを立ち上げた。

このように、高い専門性を持つ多様な運用会社を傘下に揃え、豊富な運用ソリューションのラインアップから顧客にベストな運用アイデアを提供していくことは、ブティック型運用会社であるJHにとって重要である。今後も、顧客サービスの向上に資するM&Aは検討する価値があると考えている。

■最近、ジャナス・ヘンダーソン傘下に加わった運用会社

ジャナス・ヘンダーソン傘下に加わった運用会社

日本におけるビジネス、投資機会についてはどのようにみているか。

ディバージ 実は、JHが現在の日本法人にあたるジャナス・ヘンダーソン・インベスターズ・ジャパンの前身を設立したのは1986年で、ちょうど『J-MONEY』(当時は『ユーロマネー日本語版』)の創刊と同じ年だ。

ブティック型の草分けとして上陸し、それから35年以上の長きにわたり、日本の機関投資家との関係を築いてきた歴史を持っている。日本の投資家から預かる運用額は100億米ドル規模だ。ここまで日本に深く長くコミットしてきた外資系運用会社も珍しいと思う。

それでもなお足元の環境を見ると、投資先としてもビジネス先としても、我々は日本へ一段と「Bullish(強気)」にいくべきだと思わざるを得ない。政府が資産運用立国実現プランを打ち出しており、民間における「貯蓄から投資へ」が進み、国全体で保守的すぎた従来の資産運用や金融市場の在り方を見直す改革が進んできている。

特にスチュワードシップ・コードの改訂などを通じて、コーポレートガバナンス改善が進んでいることは、アクティブ投資家としては優良な企業を選別する追い風だ。欧州顧客向けにJHの日本株チームが運用する日本株ETF(上場投資信託)は、いまJHで非常に人気が高いプロダクトの1つだ。

今後ますます日本の機関投資家の皆様と共に将来の成長に貢献する投資を追求していけることは、JHにとっても大きな意味を持つ。ぜひ今後も、ご贔屓賜りたい。

アリ・ディバージ氏

当資料は、ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズ・ジャパン株式会社(本書において「当社」といいます。)により作成されたものです。当社は、お客様との投資一任契約等に基づき、お客様の資産の運用を行います。当資料は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。運用実績などの記載内容は過去の実績であり、将来の成果を示唆・保証するものではありません。記載内容は資料作成時点のものであり、予告なく変更されることがあります。
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Janus Henderson Investors

ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズ・ジャパン株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第57号
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