野村アセットマネジメント モニタリング強化とPA活用でアセットオーナー・プリンシプルに対応
30以上の質問でヒアリング
昨今、アセットオーナーの皆様を取り巻く状況を鑑み、「資産運用立国実現プランとアセットオーナー・プリンシプル」と、「プライベートアセット(PA)の活用」の観点から、ポートフォリオ構築における今後の検討ポイントをお伝えしたい。
まず一つ目。日本政府は2024年8月、「資産運用立国実現プラン」に基づきアセットオーナーの運用・ガバナンス・リスク管理に係る共通原則となる「アセットオーナー・プリンシプル(以下、AOP)」を策定・公表した。
AOPの原則5では、アセットオーナーは自身または運用委託先の行動を通じてスチュワードシップ活動を実施するなど、投資先企業の持続的成長に資するよう必要な工夫をすべきと示された。スチュワードシップ活動を通じて運用会社へのモニタリングを強化することが求められる。
ここからは、仮にAOPや日本版スチュワードシップ・コードを受け入れた場合を念頭に、どのように委託先へのヒアリングを実施するか、当社の想定するモニタリング・評価手法を一例としてお示ししたい。まず、スチュワードシップ・コードの原則1~7(※1)に対してモニタリング項目を設定した。例えば、原則5(※2)に対しては、「議決権行使・行使結果公表方針の策定状況」「個別議案ごとの行使結果の公表状況」「必要に応じた賛否理由の説明状況」といった具合だ。
- インハウス運用を行わない企業年金基金の場合、自身で議決権行使基準をつくる必要がないという前提に立ち、原則8を含まない
- 原則5:「機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである」
次に、設定したモニタリング項目に対して、対象の運用機関に30以上の質問を投げかけヒアリングを実施。その結果を「良・可・不可」の3段階で評価する(図表1)。運用会社側が詳細な質問項目に回答することは、効果的な“スパーリング”として機能し、AOPに沿った行動が自然と促されると期待できる。
原則5(個別議案ごとの行使結果公表状況) 評価は『B』
事前シミュレーションでNAV検証
もう一つのポートフォリオ構築における今後の検討ポイントは「PAの活用」だ。伝統的資産に対する収益源泉の分散およびポートフォリオ全体のリスク抑制などを目的に、機関投資家のPA投資は拡大の一途をたどっている。ただし、伝統的資産に比べ流動性が低いほか、情報が限定的なことから投資のハードルが高い側面がある。PA投資にあたっては、①基本ポートフォリオにおける配分上限の設定、②ファンド選定における確認事項、③高度なモニタリング手法──を押さえておくといいだろう。
まず、①流動性が低いPA投資では、どこまで流動性を放棄できるか、基本ポートフォリオにおける配分上限を把握することが重要になる。現行の年金制度が継続し、キャッシュフローの安定性が見込める前提においては、積立利率や掛金、給付金といった負債を分析することでPAの配分上限の目安を把握できる。企業年金連合会「企業年金実態調査結果と解説(2022年度)」によると、2022年度の企業年金の積立比率(純資産額/責任準備金)の平均値は121%だ。純資産額の剰余部分は、“年金債務から解放されている資金”と考えられる。流動性を放棄する余地があると言える。
また、一時金選択率が100%のケースにおけるストレスシナリオを想定した今後10年間の年金キャッシュフローを見ると、特別掛金、標準掛金を考慮しても10年間積み上げていくことである程度の資産は残ることが見て取れる(図表2)。その分についてPA投資を行うのも1つの選択肢となるのではないか。
次に、②PA投資では原則として期中での解約が困難なので、ファンド選定の際は入念なデューデリジェンスが不可欠だ。近年は、投資家に要求される説明責任の範囲が拡大しているほか、運用会社のオペレーションに相応の格差があることから、とりわけオペレーショナル・デューデリジェンスの重要性が増している。具体的な検証項目としては、「ファンドストラクチャー、運用の実在性の確認」「GP(ゼネラル・パートナー)・運用会社、投資先企業の訪問」「運用会社のレファレンス、ネガティブ情報、運用者のバックグラウンドチェック」「アドミニストレーター、カストディアンの確認」──などが挙げられる。投資家の負担軽減のため、ゲートキーパーの採用を検討するのもよいだろう。
ゲートキーパーには、ファンド選定だけでなく、③将来にわたる高度なモニタリングの実施も期待したいところだ。PA投資は、投資期間中に随時キャピタルコールが発生し、ランダムにイグジット(投資回収)を迎える。NAV(純資産価値)が推移したり、運用管理費用が投資開始によらず発生したりと伝統資産にはない特徴がある。そのため、PAのポートフォリオを構築するには、NAVとコミットメント金額など将来にわたる推移をあらかじめシミュレーションすることが重要だ。ある程度見通しを立てておくことで、200億円のエクスポージャーを持ちたい場合は、どのようなファンドを、どう組み入れればNAVが維持されるのかを把握可能になる。
新たなPAプラットフォームを構築
野村アセットマネジメントでは、世界の有力なオルタナティブ運用会社が提供するファンドを組み合わせ、様々なお悩みを持つお客様に最適なソリューションをワンストップで提供するプラットフォーム「野村オルタナティブコネクト」を構築中だ。PA投資はこれまで、企業年金や金融法人、学校法人など機関投資家の皆様を中心に展開してきた。これからはPAにあまり馴染みのないリテールやウェルネスマネジメント層に対しても、プライベートエクイティやプライベートデット、不動産などの様々なファンドを提供していく予定だ。
今回、商品ラインアップが拡充されたことで、より機関投資家の皆様にお役立ちできる部分があるかもしれない。ご関心があれば、ぜひ問い合わせいただきたい。
投資顧問サービスに係るリスクについてお客様のために行なう金融商品取引行為については、株式、新株予約権付社債、公社債等に投資します(投資信託・リミテッドパートナーシップ等を通じて投資する場合を含みます)ので、国内外の経済・政治情勢、金利変動、発行体の業績や財務状況の変化等の影響により、投資する株式、通貨等の価格が下落し、損失が生ずるおそれがあります。また、当商品ではデリバティブ取引を使用することがあります。同取引は証拠金の金額以上のレバレッジを活用して行なうことから、原資産となる有価証券や指数等の変動によって価格も変動し、差し入れた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります。またこのレバレッジの比率は投資方針や国内外の市場環境の変化等により、随時変えていきますので事前に表示することができません。証拠金はデリバティブ取引を行なう期間、発注先証券会社の計算に基づき当社が妥当であると判断した金額を契約資産から預託いたします。
投資顧問サービスに係る費用について投資顧問サービスの対価として、一般に、契約資産額に対して予め定めた料率(a%)の投資顧問報酬が契約期間に応じてかかります。
計算方法:契約資産額×(a%)×契約期間日数/365=該当期間の投資顧問報酬
投資一任契約内で、弊社の投資判断として投資信託を購入する場合があり、この場合は当該投資信託の購入にかかる費用(投資信託の運用報酬、及び販売会社・管理会社の費用の他、投資信託の換金に際し、信託財産留保額がかかる場合があります)が発生いたします。ただし、投資信託を購入する場合のうち、当該投資信託が当社並びに当社グループが設定するものである場合、運用報酬の重複を防ぐために上記の投資顧問報酬の調整を行います。調整の計算方法は個別の契約で別途定めますが、投資顧問報酬金額から当該投資信託に係る運用報酬金額を控除することにより調整をいたします。お客様との取り決めにより投資顧問報酬を成功報酬とする場合があります(また、上記との組み合わせとする場合もあります)。なお、成功報酬については、予め定めた基準等にもとづき実際の運用実績等に応じて投資顧問報酬が変動するほか、お客様と別途協議により取り決めさせていただくことから、事前に計算方法、上限額等を示すことができません。投資顧問報酬とは別に、有価証券売買委託手数料や、有価証券の保管等に係る諸費用が費用として発生し、契約資産から控除されます。またこれらの費用は運用状況により変動するため事前に具体的な料率・上限額等を表示することができません。
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- 商号:
- 野村アセットマネジメント
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- 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第373号
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- 加入協会:
- 一般社団法人投資信託協会/一般社団法人日本投資顧問業協会/一般社団法人第二種金融商品取引業協会