ヌビーン・ジャパン オルタナティブ資産や米国地方債に強み。急成長を遂げるNuveenの運用戦略
米国地方債の引受業者として、米国で設立されたNuveen(ヌビーン)。創業125周年を迎える同社は、グローバルに27拠点を有し、運用資産残高が1.1兆ドル(約160兆円)に上る、世界有数のアクティブ運用会社だ。債券、株式、オルタナティブ、マルチアセットなど幅広い運用戦略を提供する。同社の日本法人であるヌビーン・ジャパンは、設立してわずか5年で運用資産が約3兆円に拡大した。躍進の理由について、代表取締役社長の鈴木康之氏に聞いた。
年金保険組合を親会社に持つ。米国地方債ではトップシェア
Nuveenとは、どのような資産運用会社なのでしょうか。
鈴木 Nuveenは機関投資家様や個人投資家様を対象に、伝統的資産やオルタナティブ資産など幅広い投資戦略を提供しています。日本法人のヌビーン・ジャパンは2018年に設立したばかりですが、本邦投資家様からの受託資産は約3兆円まで拡大しました。
当社の最大の特徴は、親会社であるTIAA(米国教職員退職年金/保険組合)の資産運用部門という点にあります。当社はグローバルに約160兆円の資金を運用していますが、その多くはTIAAの自己資金です。当社は投資家様の資金を受託して運用するアセット・マネージャーとしての側面と同時に、自社グループの資金を運用するアセットオーナーとしての側面を持ち合わせています。
日本法人を立ち上げて5年ほどで、急成長を遂げた理由は何でしょうか。
鈴木 日本の機関投資家様のニーズに合ったさまざまな運用戦略を提供していることに加えて、投資家様の資金とともに親会社の資金を運用することでお客様と「同じ船」に乗り、利害を一致させており、フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)の面での信頼感は大きいと思います。
お客様に充実したクライアント・サービスを提供できるように、資産規模の拡大に伴い、人員も増強してきました。新たに移転した東京のオフィスでは現在30名ほどの社員が勤務しており、管理職含めて半数が女性社員となっています。また、社員の定着率が非常に高いことも、お客様との信頼関係の構築につながっていると考えています。
どのようなアセットクラスや戦略に強みがあるのでしょうか。
鈴木 今回はNuveenが提供している幅広い戦略のなかでも、米国地方債とオルタナティブ資産、責任投資の3つについてお話ししたいと思います。
Nuveenは米国地方債の引受業者として事業をスタートしていることもあり、米国地方債のアクティブ運用ではグローバルで最大のシェアを有しています。80名を超える専任チームが、足元30兆円程度の米国地方債を運用しています。100年以上にわたって築き上げてきた地方自治体や引受業者などとの信頼関係を背景に、起債される米国地方債のなかでも質の高いものがNuveenに集まってきます。資産規模だけでなく運用実績においても、米国地方債におけるNuveenの地位は揺るがないものとなっています。
プライベートデットや不動産・農地・森林の運用も世界最大級
オルタナティブ資産では、主にどのような戦略があるのでしょうか。
鈴木 不動産、プライベートデット、インフラのほか、農地や森林などへの投資戦略を扱っています。プライベートデットの運用体制としては、北米のチャーチルに加え、2022年には欧州のアークモントが傘下に加わりました。米国と欧州の両方で最大級の運用マネージャーを有している点は大きな特徴です。不動産投資も、世界有数の運用残高となっています。農地投資に関しては、Nuveenが世界トップの運用規模を誇ります。
農地および森林投資は、資産規模に対する運用者の数が他の資産と比べて多く、管理・運用に手間がかかる資産です。実際に、米国だけでなく欧州、オーストラリア、南米など、農地や森林がある地域にも運用担当者を配置しています。カーボンニュートラルへの機運の高まりに合わせて、こうした資産への投資家様のニーズも高まっています。また、農地投資は企業にとって、SDGs(持続可能な開発目標)の一つである「飢餓をゼロに」へ対応できるというメリットもあります。今後さらに力を入れていきたいアセットクラスです。
顧客目線で長期にわたって安定したリターンを目指す
責任投資への取り組みについても教えてください。
鈴木 Nuveenは国連責任投資原則(UNPRI)の署名機関であり、東京金融賞2020のESG投資部門や、環境省の第3回ESGファイナンス・アワード・ジャパン金賞などの受賞歴があります。農地や森林投資など、社会貢献につながる投資を実践していることがこうした評価につながりました。
その他、議決権行使も重視しています。例えば「女性取締役を増やしましょう」という提案など、株主の立場から社会を変える取り組みを進めています。責任投資の観点でも、一部の企業やセクターを投資対象から外すのではなく、「投資したうえで、株主として経営者に働きかける」というアプローチを取ります。
Nuveenは社会貢献活動にも取り組んでいます。
鈴木 一例として、数年前から大学での金融教育に力を入れています。2023年には関東・関西・中部の大学を中心に、金融や資産運用に関する講義を無償で提供しています。受講した学生からの評価も非常に高く、「投資が社会貢献につながるとは思っていなかった」といった感想もありました。こうした活動を通じて、学生の金融リテラシーの向上や資産運用業界全体の発展に貢献していきたいと考えています。
ヌビーン・ジャパンとしての今後の目標について教えてください。
鈴木 まずは日本のお客様のニーズに合った魅力的なアセットクラスを提供することです。これまで金融機関様を中心にビジネスを展開してきましたが、今後は年金基金様や大学基金様、あるいは個人投資家様に向けてもサービスを展開していきたいと考えています。
Nuveenグループは非上場のために短期的な利益を追う必要がなく、お客様と同じ目線で長期的なリターンを目指せることが強みの一つです。また、私たちのきめ細かなサポート体制は、解約率の低さにも表れています。今後も運用においてリスク調整後リターンの向上を目指すとともに、お客様に寄り添ったサービスをさらに強化していきます。
※記事内の残高などは2023年6月末時点の数値に基づきます。
ヌビーン・ジャパン株式会社
東京都千代田区丸の内2丁目7番2号 JPタワー18階
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第3132号
一般社団法人日本投資顧問業協会/一般社団法人第二種金融商品取引業協会加入
https://www.nuveen.com/ja-jp