J-MONEYカンファレンス「金利変動時代に問われる運用戦略 〜いま改めて見直す株式・債券戦略の魅力〜」 【特別講演】トップエコノミストが読み解く2026年、世界経済の未来図日本は景気と物価の「国産化」の節目。インフレ収まりサービス業が値上げへ
J-MONEYカンファレンス「金利変動時代に問われる運用戦略〜いま改めて見直す株式・債券戦略の魅力〜」が2025年10月9日、東京・日本橋のベルサール東京日本橋で開催された。野村證券 経済調査部 チーフエコノミストの森田京平氏が登壇した当日の「特別講演」の概要をお伝えする。

アベノミクスを彷彿とさせるサナエノミクス「3つの柱」

野村證券
経済調査部 チーフエコノミスト
本日は2026年の世界経済を展望するにあたり、中核となる日米を中心に見ていくこととしたい。最初に自民党総裁に高市早苗氏が選出されたことを踏まえて、日本経済がどうなるのか予測する。その後、米国の状況を概観していく。
本日の時点ではまだ高市首相は誕生していないが、最有力の候補として、彼女の経済政策を考察する。私どもが「サナエノミクス」を分析したところ、大きく3つの柱に整理できる。いずれも、かつての安倍晋三氏の「アベノミクス・3本の矢」を彷彿(ほうふつ)とさせる内容だ(図表1)。
②拡張的な財政運営
③金融政策に責任を持つ政府、ベストな手段を考える日銀
①「国家の危機管理と成長の重視」は、アベノミクスでは3本目の矢の「成長戦略」に相当する。国家安全保障、また健康医療と食糧の安全保障を念頭に置いた危機管理投資と成長投資を行う。このことを通じて「日本を強く、豊かにする」というものだ。
②の「拡張的な財政運営」の中心課題は物価高対策だろう。地方自治体向けの交付金の積み上げや、ガソリン・軽油の暫定税率の撤廃などが軸となる。消費税減税も選択肢として排除されないが、野放図に財政を拡張するのではなく、既存の基金の配布先を変えるなど、いわゆる賢い給付「ワイズ・スペンディング」が念頭にあるとみている。
③に関して高市氏は「金融政策は政府が責任を持つ」と強調してきた。これはインフレについて、現状のコスト・プッシュ型ではなく、デマンド・プル型への移行を意識した金融政策であるべきだという考え方に基づいている。政府・日銀の共同声明(2013年作成)についても、現状に即しているか否かを改めて評価するとしている。
国内景気は緩やかに回復。けん引役はサービス業
ここから国内景気の現状と今後について考察したい。いま景気は緩やかに回復基調にあるとみているが、けん引しているのはサービス業だ。トランプ関税で製造業を中心に景気下押し圧力がかかっているが、サービス業への影響は少なく、ある種の「リスク分散」ができている。
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