国内外の有力な運用会社とのネットワークとエッジの利いた商品カバレッジで、年金基金や金融機関などからの支持を拡大しているのが独立系ゲートキーパーの上田八木証券だ。今回は注目度の高まっている2つのオルタナティブ戦略を、運用担当者のコメントとともに紹介する。

【TOP MESSAGE】上田八木証券のゲートキーパーとしての強み

国内外の有力な運用会社との強力なネットワーク

上田八木証券川東史和氏
上田八木証券
代表取締役社長
チーフ・インベストメント・オフィサー
川東 史和

上田八木短資グループの一員として2007年に開業した上田八木証券は、年金基金、学校法人、ファミリーオフィスなどのお客様を対象とした投資一任業務と、金融法人のお客様を対象とした私募投資信託販売業務を主な業務として行っています。

2000年頃から国内外の優良なヘッジファンドなどオルタナティブ戦略を提供してきた当社は、長年にわたり築いてきた国内外の有力な運用会社との強力なネットワークと強固なリサーチ能力を活かして、オルタナティブ戦略を含む膨大な運用商品の中から国内投資家のニーズにマッチした優れた商品を探索し、提供しています。年金など向けの投資一任業務の受託額と、私募投資信託の取り扱い残高は着実に増加しており、2025年3月末時点で合計2000億円近くとなっています。
 
これからも「多様な金融商品と投資家をつなぐ『かなめ』となり、投資家利益の向上に努める」使命を全うすべく真摯に社業に取り組んでまいります。

リムロック社の短期デュレーション戦略

残存期間が短い割安銘柄を組み合わせるマルチセクター外国債券投資

金利上昇時でも下値抵抗力を発揮

リムロックのポールCウエストヘッド氏
リムロック・キャピタル・マネジメントLLC
マネージング・ダイレクター/
最高経営責任者
ポール・C・ウエストヘッド

年金基金など長期マネーを運用する機関投資家の債券ポートフォリオでは、通常、債券インデックスをベンチマークとするパッシブ運用やアクティブ運用が中軸を担うケースが多い。それらのインデックスでは平均デュレーションが7~8年程度と長く、昨今のような金利上昇局面においてはパフォーマンスが悪化する傾向がある。

そこで注目を集めているのがリムロック・キャピタル・マネジメントLLC(以下、リムロック社)の短期デュレーション戦略だ。図表1は、上田八木証券が作成した円債とヘッジ付外債を組み合わせた「債券パッシブ運用モデルポートフォリオ(円ベース)」と、リムロック社の戦略を比べたもので、縦軸がリターン、黄色の菱形がボラティリティを表す。

■図表1:債券代替としてのリムロック社の優位性
債券代替としてのリムロック社の優位性
出所:Rimrock Capital Management, LLC、上田八木証券。2025年3月31日現在
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2025年3月末時点の過去5年(年率)では、モデルポートフォリオのリターンはマイナスの一方、同戦略は円ヘッジ後で、取ったリスクを上回る3.21%のリターンを獲得。2007年1月の設定来(年率)では、モデルポートフォリオがリスクに見合ったリターンをあげられていないのに対し、同戦略はほぼ対等の4.77%を確保している。同戦略の下値抵抗力の強さは債券代替としての優位性を示している。

図表2は、同戦略とモデルポートフォリオの18年間のパフォーマンスを円ベースで指数化して比較したもので、網掛け部分は金利上昇局面だ(2025年3月末時点)。長らく続いた低金利環境のあとで最近のモデルポートフォリオの収益は振るわなかった。為替ヘッジコストの重さもその要因だ。一方、リムロック社の短期デュレーション戦略は2020年のコロナショックの一時的な落ち込みを除いては、金利の変化に過度に振り回されることなく堅調に推移している。

■図表2:短期デュレーション戦略と債券パッシブ運用のパフォーマンス比較
短期デュレーション戦略と債券パッシブ運用のパフォーマンス比較
出所:Rimrock Capital Management, LLC、上田八木証券。2025年3月31日現在
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「マルチセクター外国債券投資の同戦略は、残存期間が短く割安な米国のCMBS(商業用不動産ローン担保証券)やRMBS(住宅ローン担保証券)、社債、バンクローンといったコーポレート・クレジットなど、多様な債券を投資対象としています。満期保有を前提とした『インカムポートフォリオ』に『ポートフォリオヘッジ』を組み合わせて安定運用を目指す全天候型ファンドで、円ヘッジ後も十分なリターン水準を達成しています」(リムロック社 マネージング・ダイレクター/最高経営責任者のポール・C・ウエストヘッド氏)

証券化商品中心の絶対収益追求型

「インカムポートフォリオ」では、平均残存期間が1~3年程度と短い債券にフォーカス。デュレーションの中央値は1年程度と限定的な金利リスクとし、1.2~1.4倍程度の抑制的なレバレッジで絶対収益を狙う。2025年3月末時点の保有銘柄は、CMBSが35.7%、RMBS派生商品(IO債など)が20.3%、CLO(ローン担保証券)などが20.2%など、証券化商品がそのほとんどを占める。通常、証券化商品は同程度のリスクの社債と比較してより高い利回りが得られるとの同社の分析によるものだ。

「ポートフォリオヘッジ」は、金利の急上昇局面やクレジットスプレッド拡大局面でもポートフォリオを保全するように、デリバティブを有効活用する。対個別銘柄ではなく、ポートフォリオ全体に対するヘッジが基本。デュレーションリスクと流動性リスクなど、個々のリスクファクターがポートフォリオにおいて及ぼす相互作用の把握を重視する。これにより、異なるリスク特性の組入銘柄がそれぞれのリスクファクターを相殺し合うため、結果としてポートフォリオ全体にかかるヘッジコストの低減が可能となる。

■図表3:インカムポートフォリオ セクター別投資比率
インカムポートフォリオ
出所:Rimrock Capital Management, LLC。2025年3月31日現在
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組入銘柄の選定プロセスでは、外部機関の格付けに依拠せず、一つひとつの債券の担保価値やキャッシュフローを徹底的にポートフォリオ・マネージャーが分析し、満期保有が可能かどうかで投資の可否を判断する。残存期間の短い債券でポートフォリオを構築するため、安定した金利収入と元本償還益により、継続的なキャッシュフローが発生する。

これを原資に、ボトムアップアプローチを通じて利回りの高い債券へ再投資していくのが基本アプローチだ。「毎月のキャッシュフローを割安な銘柄に再投資するため、図表3のように、ポートフォリオのセクター別投資比率は銘柄選択の結果として、柔軟に変動します」(ウエストヘッド氏)。

1999年設立のリムロック社は全株式を役職員が保有する独立系の運用会社で、運用資産総額は約3340億円(約22億ドル。2025年3月末時点。1ドル=149.96円換算)。様々な債券の本質的価値を見極めるバリュー運用と高度な分散投資による同社の短期デュレーション戦略は、金利見通しが不透明な時代に頼りになる絶対収益追求型スキームといえよう。

モンロー社のABF(アセット・バックド・ファイナンス)戦略

高度にカスタマイズされたローンの組成と早期回収によって高いリターンの実現を目指す

ローン保有期間は2年未満が中心

モンローキャピタルのアーロンペック氏
モンロー・キャピタルLLC
マネージング・ダイレクター/
オルタナティブ・クレジット・ソリューションズ
共同ポートフォリオ・マネージャー
アーロン・ペック

現代の機関投資家のポートフォリオにおいて、収益の上積みと分散効果が期待できるオルタナティブ戦略は不可欠な存在といえるだろう。ゲートキーパーの上田八木証券が取り扱う数々のオルタナティブ戦略のうち、一般的なダイレクトレンディング戦略からの分散投資を志向する保険会社、年金基金、地域金融機関さらには大学法人からの引き合いが増えているのが、モンロー・キャピタルLLC(以下、モンロー社)のABF戦略だ。

2004年設立のモンロー社は、運用資産総額約3兆1000億円(約216億ドル。2025年7月1日時点。1ドル=143.42円換算)を有するプライベート・クレジット・プロバイダーで、ダイレクトレンディング戦略ではローワーミドル市場における最大手の一角だ。不動産や売掛債権、有形固定資産などを担保にしたローンにより機関投資家の資金運用ニーズに応えるABFは2008年から手がけており、2019年にABF特化型の第Ⅰ号ファンドの運用を開始。現在は第Ⅱ号ファンドを募集中である。

Ⅰ号ファンドのグロスIRR(手数料などを考慮していないドルベースのリターン)は13.6%、手数料を差し引いたネットIRRは11.6%となっている(2025年3月末時点)。さらに、ベース金利が上がっているⅡ号ファンドのドルベース目標ネットIRRは15~17%であり、円ヘッジ後でも十分に高いリターンが期待できるのがモンロー社のABF戦略の最大の魅力だ。

これを支えているのが、精緻な企業・担保分析で迅速に融資を検討・実行し、早期に回収することでリターンを積み上げるローン組成力である(本記事末尾の囲み記事)。

同社のABFローンの保有期間は、過去実績で実に43%が2年未満となっている(図表4)。

■図表4:オルタナティブ・クレジット・ソリューション戦略——償還案件の保有期間
オルタナティブ・クレジット・ソリューション戦略
出所:Monroe Capital, LLC

同社は120名超の運用プロフェッショナルを擁し「クレジットファースト・ゼロロス」の哲学のもと、担保の質を見極め、複数のコベナンツ(財務制限条項)を設定するなど高度にカスタマイズしてリスク調整後のリターン確保を目指している。同社のプラットフォームの強みを存分に活かしているのがABF戦略といえよう。

「Ⅰ号ファンドはキャピタルコールが迅速だったうえ、ファイナルクローズからわずか3年半でDPI (実現倍率)が0.44倍と高いことが多くの機関投資家から高い評価をいただいています。ほとんどの案件に最低MOIC(早期償還の際でも最低限返済を求める投下資本倍率のしきい値)を設定しており、ローンの早期返済は運用パフォーマンスの上昇要因とポジティブにとらえています」(モンロー社 マネージング・ダイレクター/オルタナティブ・クレジット・ソリューションズ 共同ポートフォリオ・マネージャーのアーロン・ペック氏)

3種類の担保資産でリスク分散

モンロー社のABF戦略では、投資対象案件を担保の類型やローンスキームなどによって3つのグループに分けている(図表5)。不動産を中心に複雑な取引構造を伴う優良な担保付ローンの「クオリティ・アセット・ベース」、資産担保付き金融商品や売掛債権を担保とするローンの「スペシャルティ・ファイナンス」、そして市場のディスロケーションなどにより借り手が一般的な資本市場へのアクセスに課題を抱えている場合の「オポチュニスティック・クレジット」だ。

■図表5:テーマ別資産の概観
テーマ別資産の概観
出所:Monroe Capital, LLC
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これら3分野のローンに幅広く対応できることが、市場環境に左右されにくく、リスクが分散されたポートフォリオの構築を可能としている。

「足元のABF市場では、関税リスクや景気後退懸念を背景にスプレッドが拡大するなどボラティリティが高まっています。一方、関税でマージン悪化に直面する企業が資産担保型ファイナンスを求め、銀行のリスク回避により資本集約セクターでのローン需要が高まる環境は、案件ごとの投資妙味を精緻に分析し、相対取引で素早くローンを組成、そして回収する私たちのABF戦略にとってチャンスと見ています。当社の投資パイプラインは質・量ともに充実しており、日本の機関投資家の皆様にも積極的にご活用いただきたいと思います」(ペック氏)

複雑な担保を評価しローンを組成するモンロー社の融資実行力

~米国の発電事業者のケース~

モンロー社は、長年の関係を持つPEスポンサーからの依頼で、発電事業者のA社が保有する複雑な資産群を担保とする3500万ドルの第一抵当権付開発ローンを実行した。

担保となったのは、ウエストバージニア州の天然ガス田、船舶埠頭と発電施設を擁するオハイオ州の複合ターミナル用地、ガス水素混合タービンを用いた発電施設。モンロー社は電力業界に関する自社の知識を活用するとともに、地場の複数の業界専門家とのディスカッションを通じて資産価値を精査し、高い最低MOIC(最低返済倍率)などの保護条項に加え、3つの主要資産を担保としたことでLTV(有利子負債比率)9.5%という非常に魅力的な条件で融資を行った。

その後、データセンター需要で複合ターミナル用地の期待価値が高まったことで、A社は低利での借り入れが可能となり、PEスポンサーはモンローへの早期返済を決定。ローンは実行から1年足らずで全額返済され、保護条項に従い高いMOICを達成した。

出所:Monroe Capital, LLC

(注:上記の事例は投資プロセスを説明するためのものであり、すべての投資を代表するものではありません。)

当資料は、上田八木証券が情報提供を目的に作成したものであり、当資料による特定の有価証券の取得を勧誘するものではありません。過去の実績は将来の運用成果を示唆または保証するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されておりますが、当社はその正確性・完全性を保証するものではありません。投資顧問契約に基づき助言する対象又は投資一任契約に基づき投資を行う対象の種類は、お客様と協議の上決定させて頂きますが、対象とする金融商品及びデリバティブ取引等は、様々な指標等の変動の影響を受けます。従って、投資顧問契約又は投資一任契約の対象とさせて頂くお客様の資産において、元本欠損を生じるおそれがあります。投資一任契約に基づく投資の実行等に伴う費用は、お客様の負担となりますが、これらはお客様が資産の保管をご契約されている機関(信託銀行等)を通じて、ご負担頂くことになります(弊社にお支払頂くものではありません)。対価および費用の合計額については、契約資産額、保有期間、運用状況等に応じて異なりますので、表示することはできません。詳細は、契約締結前および契約締結時交付書面をご覧下さい。

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