大浦 裕一郎
ラッセル・インベストメント
コンサルティング部
コンサルタント
大浦 裕一郎

本連載の第1回で述べたように、企業年金の資産配分では国内債券比率を削減し、ヘッジ外債比率を引き上げる動きがみられた。

下表の通り、国内債券は、長きにわたる金融緩和や、平均償還年数長期化から利回りや金利リスクの観点でみると、他国・地域対比分が悪いといえる。最近は債券枠における国内外区分を撤廃し、グローバル債券として統合する動きもみられる。このケースでアクティブ運用を活用すると、国債債券比率は運用者の考える投資機会に応じて変化することになる。

外国債券で用いられる政策ベンチマークとしては、国債のみで構成される指数からクレジットを含む総合債券指数を採用する企業年金が増えている。現在債券市場において日本では54%、ユーロ圏では59%の債券がマイナス金利になっている*。低金利政策が継続される中、クレジットリスクをとって債券ポートフォリオの利回りを高める必要があった。

債券をはじめとする低リスク資産では、ヘッジ外債以外の選択肢も模索されてきた。国内債券の代替としては金利上昇リスク回避を目的とした短期資金保有を検討されるケースもあったが、現マイナス金利政策下では短期資金であっても資産価値が徐々に目減りするため、これを受け入れがたい企業年金が多い。別の選択肢として、収益源泉やリターンパターンは異なるものの、低リスクのマルチアセット戦略やレラティブバリュー型のヘッジファンドを用いて安定的な収益獲得を目指すケースもある。

債券高は一時的に分散効果に影響の可能性も

利回りは低くとも、金利性資産は株式に対し低相関であり、ポートフォリオにおいて引き続き長期的にはヘッジ機能が期待される。一方で、歴史的な低金利の下、各国債券のバリュエーションは高い状態が続く。2018年後半のような急速な金利上昇局面では、株式市場の下落を伴ったように、一時的に分散効果が失われる可能性があることも認識する必要がある。

また直近米国長期金利は上昇傾向にあるが、いわゆる過剰流動性の環境が継続すれば、今後年限の長い債券であってもタームプレミアムは期待しづらい時期が続くかもしれない。

制約をカバーする投資手法の検討

金融緩和の影響を債券投資における制約と考えると、これをカバーするよう資産全体の視点から戦略を検討する必要がある。債券枠における対応としては、優れたアクティブ運用戦略を選定することができれば、リスク管理や追加的な収益源泉として資すると考える。

資産全体の利回りを向上する観点からは、クレジット資産の活用が進んでいる。次回は企業年金のクレジット資産投資動向を取り上げる。

* 2020年12月末時点におけるブルームバーグ・バークレイズ・日本総合指数およびユーロ総合指数におけるマイナス金利債券の時価総額比率(米国ドルベース)。

【図表】各債券指数の特性値など

【図表】各債券指数の特性値など
2020年12月末時点。上記は過去の実績であり、将来の投資収益等の示唆あるいは保証をするものではなく、またその結果の確実性を表明するものではありません。インデックスは資産運用管理の対象とはなりません。またインデックス自体は、直接投資の対象となるものではありません。インデックスには運用報酬がかかりません。 * ヘッジコストは、ドル円およびユーロ円の3ヵ月フォワードポイントおよびスポットレートより算出。年率。マイナスの値はヘッジプレミアム。 ** 相関係数は、各指数収益率(外国債券指数は円ヘッジ指数を用いた)のMSCI World指数に対する相関係数を算出(2020年12月末時点, 過去120ヵ月)。 出所:野村證券, FTSE, Bloombergのデータをもとにラッセル・インベストメント作成

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