ブラウン・アドバイザリー 行動バイアスの軽減で実現する機動的な資金配分戦略
アルファの鍵は「打率」と「長打率」の両立

日本オフィス代表
村澤 俊之氏
ブラウン・アドバイザリーは米国ボルチモアを本拠地とするアクティブ型の資産運用会社である。もともとは米国最古の投資銀行であったアレックス・ブラウンの資産運用部門として設立され、その後アレックス・ブラウンが1990年代後半にドイツ銀行に買収された際にMBO(経営陣が参加する買収)によって独立系の運用会社として設立された経緯がある。近年では米国以外での展開を積極的に行っており、日本においても2023年に東京でオフィスを開設した。
我々が提供するグローバル株式運用では『グローバル・リーダーズ戦略』をフラッグシップ戦略としている。近年のマーケットはマグニフィセント・セブンを中心に一部の銘柄によって市場が牽引されているため、大手ファンドで保有銘柄が重複する傾向にある。
そうなると、投資家としては分散投資をする意味があるのか、パフォーマンスも似てくるのではないかといった疑問が出てくるだろう。しかし、他社大手8つのファンドと弊社の『グローバル・リーダーズ戦略』の過去10年間のパフォーマンスを比較すると、おおむね市場平均を上回るファンドが多いものの、アルファの幅にはバラつきがあることが分かる。
弊社では、勝てるポートフォリオ運用には優れた銘柄を選定するだけでなく、確信度の高い銘柄にしっかりと資産を配分することが重要だと考えている。野球に例えるなら、優れた銘柄選定を行う力を「打率」としたとき、大きく勝つ銘柄をしっかり保有して負け銘柄への保有を小さく留める力が「長打率」となり、この両立を実現することが優れた運用への鍵となる。
行動バイアスを軽減する資産配分プロセス
資産配分プロセスでは、意思決定における行動バイアスを軽減するために運用チームでは「コーチ」と呼んでいるが、外部のコンサルタントを活用している。コンサルタントには四半期ごとに行った投資判断をレビューしてもらい、「合理的ではない判断はなかったか」「もしあったとするなら今後どうすればそのような判断を避けられるのか」といったことを議論している。そのうえでルール化できるものはルールを構築し、投資プロセスの枠組みを実装している。
我々が特に対処しているのが「損失回避バイアス」「後悔回避バイアス」「授かり効果」の3つの行動バイアスだ。損失回避バイアスとは、利益と損失では同じ金額でも損失の方が大きく感じられるというバイアスである。資産運用では、この損失回避バイアスによって損失を確定させたくないという思いから損切りをためらったり、反対に含み益が今後損失になってしまうことを恐れて早めに利益確定をしてしまったりする傾向にある。
次の後悔回避バイアスは、「あの時ああしていればよかった」と後悔すること自体を恐れるバイアスだ。例えば、一度買うと決めた銘柄が上がっていくと「もう少し安く買いたい」という思いから必要な分を買い切れなかったり、逆に売却を決めた銘柄について「もう少し戻ったタイミングで売ろう」とためらい、速やかな売却ができずに傷を広げてしまったりすることがある。
最後の授かり効果は、「自分が所有しているものに対して客観的な価値よりも高い価値を感じる」バイアスだ。投資においては既に保有している銘柄に対してリスクを過小評価していたり、逆に投資価値を過大に評価したりする傾向にある。
行動バイアスを克服する3つのルール
弊社では、こうした行動バイアスを回避するためにそれぞれルールを設けている。まず損失回避バイアスを克服するためのルールとして「ドローダウン・レビュールール」を導入している。このルールでは買値から絶対値で20%、もしくはベンチマーク対比で20%アンダーパフォームした場合は、その銘柄の投資仮説の再検討を行う。その結果、下落が市場要因による一時的なものだと判断できるのであれば投資を継続し、併せて必ず買い増しを行うといった仕組みだ。
反対に、下落が一時的なものではなく投資仮説が恒久的に損なわれたと判断した場合には全て売却するルールとなっている。2つめの後悔回避バイアスに対しては「後悔回避ルール」を設けており、買い・売りの判断を行った場合は速やかに投資行動に移すことを定めている。具体的には2カ月以内に予定したポジションを全て実行することとしている。
最後の授かり効果には、「ブランクシート・レビュールール」を設けている。これは四半期ごとに白紙ベースで保有銘柄を見直すというものだ。保有比率順に保有銘柄を並べ、保有比率が下位4分の1に該当する銘柄については「本当に保有し続ける価値があるのか」ということを厳しい目でレビューしている。
徹底したルールに基づく実践事例
これらのルールを徹底して資金配分を行った事例をいくつか紹介しよう。まずは米国のアルファベットだ。アルファベットは弊社の中で確信度が非常に高い銘柄で、運用開始以来ずっと保有しているものである。
直近2年では、2023年の第1四半期にドローダウン・レビューを行っているが、これはChatGPTのリリースや、MicrosoftによるOpenAIへの出資が行われた結果、AI分野で劣勢になるのではないかという懸念から20%を超えるドローダウンが発生したものである。
弊社ではドローダウン・レビューの結果、Googleの本源的なビジネスの強みは変わらないと判断し買い増しを行っている。その後うまく株価が反転し、2023年後半にかけては利食い売りを行った経緯がある。
その他、2025年4月のトランプ米大統領による関税が発表された際はリスク調整で売りを行ったり、2020年以降は米国司法省によるアンチトラスト裁判の行方を見ながら調整を行ったりするなど、その都度必要な調整を行っている。
次に、米国で消費者信用情報サービスを行っているエクスペリアンについての例だ。米国における消費者信用情報ビジネスは実質3社の寡占状態にあり、その中でも最大手であるエクスペリアンについては非常に強みがあると考えてきた。2025年の4月に大きく下落したところで新規投資先として買いを入れているが、その後短期間で大きくリバウンドした結果となっている。「2カ月以内に必要な量を買い切る」という後悔回避ルールを徹底した結果、成功へと繋がった例だと言えるだろう。
実際に弊社『グローバル・リーダーズ戦略』のパフォーマンスを見ると、運用開始来でMSCI ACWI指数に対して3%ほどのアルファが取れている状況だ。また、より集中投資型の『グローバル・フォーカス戦略』についても運用開始来MSCI ACWI指数に対して約5%のアルファを生み出している。

いずれの戦略においても銘柄選択だけではなくポジション調整を含めた資産配分が大きな原動力となっていると言える。
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