金利の先行き見通しが不透明な局面が続くなか、格付け・利回り・流動性の高い安定運用資産として機関投資家の間で注目度が高まっているのが、ローン担保証券(Collateralized Loan Obligation:以下、CLO)だ。CLOの本場である米国で確かな実績を持つジャナス・ヘンダーソン・インベスターズの債券クライアント・ポートフォリオ・マネジメント ヘッドのジェシカ・レオンチーニ氏に、投資対象資産としてのCLOの魅力と、日本の機関投資家が同社のCLO戦略に投資するメリットを聞いた。

AAA CLOでデフォルト事例はない

ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズのCLO戦略
ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズ(米国拠点)
債券クライアント・ポートフォリオ・マネジメント ヘッド
ジェシカ・レオンチーニ

米国では利下げ、日本では利上げと方向性は異なりますが、機関投資家には金利変動に備えてポートフォリオの見直しが進んでいます。

ジェシカ 足元の米国経済は、消費も企業収益も堅調です。ただし、一部の自動車ローン会社の経営破綻など個別の企業リスクが顕在化している面もあります。保険会社や年金基金など将来の支出に備えて長期マネーを運用する機関投資家の間では、他資産との相関性が低く、高いインカムが期待でき、かつハイクオリティの投資先への関心が高まっています。

そのような機関投資家のニーズに応える資産としてCLOが注目を集めていますね。

ジェシカ CLOは、主に非投資適格の企業向けの融資(レバレッジドローン)を裏付けとした変動金利型の証券化商品で、米国では1980年代後半に登場しました。CLOのオリジネーターがコラテラル・マネージャーと呼ばれる資産運用会社を採用し、通常、150~450ほどのバンクローンを買い集め、束ねたものを担保に発行します。

米国では1980年代から、信用格付けの低い企業向けの融資であるレバレッジドローンがハイリスク・ハイリターンの金融商品として証券会社などで盛んに販売されました。

冒頭で、マーケットでは一部の企業リスクが顕在化しているとの指摘がありました。非投資適格の企業向けの融資が原資産で大丈夫でしょうか。

ジェシカ BB以下の裏付資産からAAAといった高格付けの証券化商品を組成できるのかと疑問に思われるかもしれません。しかし、これこそがCLOの最大の魅力であり、金融法人や年金基金から高い支持を集めている理由です。

オリジネーターが、レバレッジドローンのポートフォリオを基にトランシェ構造を設計し、元利金の支払い順序を決定します。支払いが最優先されるAAA格、次がAA格、A格、BBB 格、BB格という構造です。原資産であるレバレッジドローンで発生した損失は低格付けのトランシェから順に吸収される「優先劣後構造」であるため、AAA格などの上位のトランシェほど安全性が高まります。

事実、米国CLO全体では、最上位のトランシェに相当するAAA CLOでデフォルト事例はありません。

金融法人や年金基金などの長期マネーの投資先にふさわしい安全性の高さですね。

ジェシカ CLOは、米国では保険会社や年金基金などの安定運用先として人気で、市場規模はAAA格を中心として順調に拡大しています(図表1)。

■図表1 AAA格を中心に順調に拡大するローン担保証券市場
図表1 AAA格を中心に順調に拡大するローン担保証券市場
出所:BofA Global Research
期間:2011年12月31日~2025年9月30日

CLOは2008年のリーマン・ショックを受けて格付け基準化が厳格化されました。AAA格といった格付けが取得しづらくなったことにより、原資産のバンクローンで発生した損失を吸収する低格付けのトランシェの構成比率が増えました。結果として、AAA格など高格付けCLOの安全性が高まり、安定運用先としての優位性が一層高まったのです。

なお、2009年以前に発行されたCLOを「CLO 1.0」、格付け基準が厳格化された2010年以降に発行されたものを「CLO 2.0」と呼びます。図表1のように、現在の米国市場では安全性が向上したCLO 2.0がほとんどを占めています。

米国では多くの機関投資家がCLO ETFを活用

米国の機関投資家はどのような手法でCLOに投資していますか。

ジェシカ 大きく2つのアプローチがあります。まず個別のCLOをそれぞれ吟味したうえで投資する方法がありますが、一定以上の資金とCLOの投資妙味を分析するリソースが必要です。

もう一つが、複数のCLOを組み合わせて運用するETF(上場投資信託)を通じて投資する手法です。ETFであれば個別CLOへの投資より少ない資金で投資することが可能で、かつ投資先のCLOの分析は運用会社が行うので、個別にCLOを管理する手間を省くことができます。こうした理由から、米国では保険会社や年金基金など多くの機関投資家がCLO ETFを活用しています。

米国の債券アクティブETFのCLOにおけるAUM(運用資産残高)のうち、ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズの米国CLO運用チームが運用するETFのシェアは70%超(2025年9月末時点)に上ります。ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズの米国CLO運用チームは、2022年10月から運用を始めたAAA格中心のCLO戦略のほかにも、BBBCLO戦略、UCITSに準拠したAAA格かつリスク・リテンション規制に対応したCLOのみで構成される戦略など幅広いCLO戦略のラインナップをご提供しています。

まさに、CLO戦略のリーディングカンパニーですね。

ジェシカ ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズの運用には複数の利点があると考えます。

同チームはCLO市場におけるプレゼンスの高さから、CLOの新規発行時に発行体から直接アプローチを受ける数少ない投資家の一社です。CLOには標準化された契約書が存在しないため、当社のような発行額の最大割合を取得する「アンカー投資家」は、その立場を活用してCLOの組成段階から条件交渉に参加できます。例えば、投資家の利益が保護されやすいよう契約内容について投資前に交渉することで、運用の安定性を高めやすく、ガイドラインの調整がしやすいといった利点があります。

証券化商品チームとクオンツアナリストが連携

発行体が頼りにするアンカー投資家としての立ち位置は、高格付けのAAA CLO市場における大きな優位性といえそうです。

ジェシカ 新規発行のプライマリー市場だけでなく、既存商品を売買するセカンダリー市場においても、規模の大きさによるメリットがあります。機関投資家自身が個別にCLOを売買すると取引コストがかさむ傾向が見受けられます。一方、大型のETF経由でCLOに投資すれば、コストを抑えてサイズの大きな取引を行うことが可能です。

ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズのCLO戦略は、他社とどこが異なるのでしょうか。

ジェシカ 特色の一つが証券化商品チームにクオンツアナリストを配備していることです。定量分析やシステム面でのサポートはもちろん、多くのデータを扱う証券化商品分析において、多角的な分析を行うことができます。

他社ではITや別部署のクオンツチームがサポートするケースがあると認識していますが、ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズの米国CLO運用チームは証券化商品チームと席を並べて活動しており、より機動的に実務的なコミュニケーションが可能です。

投資適格社債やMMFを上回るリターン水準

実際に投資している金融法人や年金基金とのコミュニケーションの機会も多いと思います。CLOの収益性について、投資家はどのように評価していますか。

ジェシカ AAA CLOは、デフォルト率が一貫してゼロ%というリスクの低さに加え、利回りの面でも米国投資適格社債や米国国債を上回る魅力があります(図表2)。

■図表2 ローン担保証券の利回りは他の主要債券セクターより相対的に高い
図表2 ローン担保証券の利回りは他の主要債券セクターより相対的に高い
出所:Bloomberg, JP Morgan, Morningstar, 2025年9月末時点.
ハイイールド社債(Bloomberg U.S. Corporate High Yield Index), AAA CLO(JP Morgan AAA CLO Index), 投資適格社債(BloombergU.S. Corporate Investment Grade Index), 米国債券総合(Bloomberg U.S. Aggregate Bond Index), マネーマーケット(S&P U.S.Treasury Bill 0-3 Month Index), 米国国債(Bloomberg U.S. Treasuries Index)
金利上昇局面の安定運用に寄与するCLO戦略を提供
金利上昇局面の安定運用に寄与するCLO戦略を提供

例えば、2025年9月末時点におけるAAA CLOの利回りは4.7%、リスクが1.0%であるのに対し、米国投資適格社債は利回りは4.8%ですが、リスクが7.6%となっています。AAA CLOはリスク対比で非常に魅力的な利回りが期待できることから、米国の機関投資家の間では、MMF(マネーマーケットファンド)などのキャッシュライクな運用資産の代替先としてCLOを採用する動きも見られます。

2008年のリーマン・ショックを機にCLOの安全性が改善されるなど、機関投資家の安定運用先として歴史が長く、進化している点も安心材料です。

ジェシカ CLOの歩みを振り返ると、ほとんどの時期において、他の資産クラスより魅力的なスプレッドを提供してきました(図表3)。

■図表3 他の資産クラスと比較して、歴史的に魅力的なスプレッドを提供
図表3他の資産クラスと比較して、歴史的に魅力的なスプレッドを提供
出所:Janus Henderson Investors, JPMorgan, Bloomberg, Morningstar  2025年9月末時点
注記:CLO スプレッドは DM、社債スプレッドはブルームバーグUS Corp 1-3yrのOASを使用

世界の経済・金融市場を揺るがすイベントが発生したときのボラティリティの低さも、長期・安定運用を目指す機関投資家にとって投資しやすい要因の一つであると考えられます。ロシアのウクライナ侵攻に端を発した2022年のグローバル規模の物価高騰の局面では、米国債券総合、ハイイールド社債、米国株式の騰落率が軒並み二桁のマイナスに沈んだ一方、AAA CLOはプラスを維持しました。

AAA CLOの金利変動耐性は
相対的に高め

利下げ、利上げなどの金利変動に対してはいかがでしょうか。

ジェシカ 現在、FRB(米連邦準備理事会)は利下げに対する過大な期待を牽制しつつ、景気減速にも配慮しており、金融政策の難しい舵取りを迫られています。図表4は、FRBの過去の利下げ、利上げ局面での主要資産のリターンをまとめたものですが、過去の金利変動局面では、AAA CLOが相対的に安定したリターンをあげてきたことが見て取れます。AAA CLOは、金利変動に対する耐性が相対的に高いといえるでしょう。

■図表4 FRBの利下げ、利上げ局面での主要資産のリターン
図表4 FRBの利下げ、利上げ局面での主要資産のリターン
出所:Bank of America Global Research, Bloomberg, ICE Indices.

安定運用志向の機関投資家のポートフォリオでは、資産分散の観点から、伝統的資産との相関性の低さもポイントになります。

ジェシカ AAA CLOは米国国債とは逆相関、米国債券総合やMBS(住宅ローン担保証券)とも低相関です(図表5)。日本の機関投資家のみなさまも、ポートフォリオの一部に米国国債を組み入れているケースが多いのではないでしょうか。AAA CLOに代表される高格付けのローン担保証券戦略は、これら米国債券と低相関であることから、併せ持ちすることによってポートフォリオの安定性を高める効果が期待できます。

■図表5 AAA格のローン担保証券は伝統的資産と低相関
図表5 AAA格のローン担保証券は伝統的資産と低相関
出所:Bloomberg、JPモルガン
基準日:2025年9月末(過去10年)
注記:各インデックスの日次リターンを使用(J.P Morgan CLO AAA Index, S&P 500 Index, Bloomberg
U.S. Aggregate Bond Index, Bloomberg U.S. Treasury Indexなど)、全て米ドルベース

最後に、日本の機関投資家へのメッセージをお願いします。

ジェシカ 米国では、2022年3月以降の利上げ局面で固定金利型の債券などが苦戦しました。そんななか、変動金利型で高格付けのCLOは相対的に安定したリターンが期待できることから、米国ではMMFのような安定運用資産の代替先としても普及しました。他の資産クラスとの分散効果や、ETFを活用することで、意図したタイミングでポートフォリオに組み入れたり、売却できる流動性の高さも機関投資家にとって魅力的なポイントだと思います。

■図表6 ジャナス・ヘンダーソンのAAA CLO戦略のAUMと運用実績
図表6 ジャナス・ヘンダーソンのAAA CLO戦略のAUMと運用実績
出所:ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズ
基準日:2025年9月30日

金融政策を巡るグローバルの環境は大きく変化しています。AAA CLOはリーマン・ショック以降の様々な環境変化を乗り越え、進化してきました。日本の機関投資家のみなさまが長期安定運用を行うための有望な投資対象の一つとして、是非、ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズの米国CLO運用戦略をご検討いただければ幸いです。

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