プライベート・エクイティ(PE)市場がかつてない規模で拡大するに伴い、その二次市場(セカンダリー市場)も急速に活況を呈している。そんな中、2025年5月16日に開催されたJ-MONEYカンファレンス(主催:J-MONEY)で、フランクリン・テンプルトン傘下の運用会社レキシントン・パートナーズのパートナー、ジョン・リー氏が登壇。昨今のトランプ大統領の政策に端を発する不透明感のある市場環境の中で注目される投資機会として、PE市場におけるセカンダリー投資の魅力を紹介した。

PEセカンダリー投資とは

ジョンリー氏
レキシントン・パートナーズ
パートナー
ジョン・リー

昨今のような先行き不透明な市場環境下で、ポートフォリオの安定性と収益性の両立を図るためのひとつの解決策として、PE市場におけるセカンダリー投資を提案したい。
 
本日は3つの問い――「What(セカンダリーPEとは何か?)」「Now(なぜ今が好機なのか?)」「Why(なぜこの戦略に目を向けるべきか?)」を通じて、セカンダリーPE投資の魅力をお伝えする。
 
まず、「What」から。PEのセカンダリー市場とは、一次市場(プライマリー市場)で組成されたPEファンドの持分が売買される二次市場である。イメージしやすく言えば、新車市場に対する中古車市場のような存在である。そもそもPE投資は、資金の出し手であるリミテッド・パートナー(LP=投資家)と、専門的な運用能力を持つジェネラル・パートナー(GP=ファンド運用者)が、10年以上の“長期契約”を結ぶことで成立する。この時、その投資資金は契約期間中ロックされることが前提となるため、流動性は著しく限定される。
 
しかし、LPまたはGPいずれかの都合により、契約期間中にPEファンドの持分を売却したいというニーズが生じる場合がある。このような流動性ニーズに応えるのがセカンダリー市場である。セカンダリー市場の存在はPE投資における自由度を高める重要な役割を担っていると言える。

PEセカンダリー市場を拡大させる構造的な要因

 
次に「Now」だ。セカンダリーPEの市場規模を左右する要因には、「在庫」と「回転率(ターンオーバーレート)」が挙げられる。ここでいう「在庫」は、それまでコミットされたプライマリーPEの総量を指す。そして「ターンオーバーレート」は、LPがPEファンド持分を売却する頻度を意味する。
 
ご承知の通り、近年PEの市場規模は急激に拡大しており、セカンダリー市場の潜在的な「在庫」として、十分な厚みがあると言える。
 
一方で、ターンオーバーレートは足元で低迷しているものの、今後の上昇が見込まれる。注目すべきは、LPが保有資産を手放す兆しが散見されることだ。LPがPEファンドの持分を売却する理由としては「規制対応」「流動性需要」「資産配分比率の調整」「運用責任者の交代」などがある。例えば、規制対応においては、バーゼルⅢに基づく自己資本比率規制の厳格化や、ストレステスト制度の導入の影響で、銀行が保有する非流動性資産(特にPEファンド持分)に対するリスクウェイトが引き上げられ、結果として資本コストが上昇した。このため、金融機関はバランスシートの効率化を迫られ、保有資産の見直しを進める中で、PEファンド持分をセカンダリー市場で売却する動きが広がったことがある。
 
今後、顕著な動きとして予想されるのは、「流動性需要(資金繰り)」による売却である。2022年以降、市場のボラティリティは上昇し、プライマリーPE投資のエグジットが減速、その結果としてLPが受け取れる分配金の減少が見られた。こうした中、資金繰りに苦慮する一部のLPは、PEファンドの持分をセカンダリー市場で売却する動きを見せており、このトレンドは現在も続いている。
 
PEセカンダリー市場のさらなる拡大は、当社のようなセカンダリー・バイヤーにとって、投資機会の拡大を意味し、より多様な軸で分散されたセカンダリーPEのポートフォリオを構築する助けになる。

既知のポートフォリオに投資するセカンダリーの優位性

 
最後に「Why」、すなわち、なぜ機関投資家がセカンダリーPE投資に目を向けるべきかお話ししたい。第一の理由は「ブラインド・プール・リスク(投資先の不透明リスク)の軽減」である。

PEに限らず低流動性資産のプライマリー投資では、GPに資金をコミットする段階で投資先企業が未確定であることが多く、LPは見通しの立たないまま資金を預けることになる。一方、セカンダリーでは、すでに組成から4~5年が経過し、7~8割の資金が実際に投資された後のPEファンド持分を対象とするため、既存のポートフォリオの中身を精査し、将来の見通しを一定程度織り込んだ上で意思決定できる。
 
第二に、セカンダリー投資では低流動性資産のハードルの一つである「Jカーブ(投資から実際に投資先がリターンを生み出すまでのタイムラグ)」の影響の緩和も可能になる。最初の投資からある程度時間が経った段階のファンドに投資できるためだ。実際、当社のセカンダリーPEファンドでは、投資後まもなく分配が始まり、その後も安定的なキャッシュリターンが継続しているケースが少なくない。
 
第三に、投資成果のばらつき(リスク)を抑制する効果もセカンダリー戦略の利点として述べておきたい。PE投資は本質的にリスクの高い資産である。特に新興国のベンチャー投資などでは、投資成果のばらつきが顕著であるが、セカンダリーでは、投資開始から数年が経過しており、すでに実績が出ている案件を選別できるので、期待収益の安定性を高められる。
 
そのほか、1回の取引で数十本から百本超のファンド持分を一括取得することもあり、地域、戦略、ビンテージ・イヤー、さらにGP(スポンサー)といった多くの観点で、柔軟かつ高度な分散を図ったポートフォリオ構築が可能になる(図表参照)。

■セカンダリー取引(LP主導型取引)のイメージ
セカンダリー取引LP主導型取引のイメージ
出所:レキシントン・パートナーズ。注:上記は、レキシントン・パートナーズの過去の実績を踏まえて条件を設定した仮想的な
セカンダリー取引の例です。あくまで例示を目的として提示したものです
※クリックすると拡大します

実際に当社戦略では、1件のディールで18年分のビンテージ・イヤーにまたがるPEファンドへのエクスポージャーを得たケースもある。こうした強みを土台に、セカンダリーPE戦略は、特に足元のような金利や市場のボラティリティが拡大する局面において、ポートフォリオの安定性向上に寄与すると考えている。
 
当社は、あらゆる市場局面で安定かつ魅力的なリターンを追求するという投資哲学のもと、セカンダリーPE市場の拡大の一端を担ってきた。今後もセカンダリー投資におけるパイオニアとして、セカンダリー投資の魅力を伝え、付加価値ある戦略の提供に努めていく所存である。

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フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第417号
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一般社団法人第二種金融商品取引業協会