コリンシア・グローバル・マネジメント コア・ミドル市場のシニアローンに特化。保守的戦略で安定リターンを追求
創業間もない運用会社ながら、グローバルの機関投資家から注目を集めているコリンシア・グローバル・マネジメント。北米・欧州の両地域において、プライベート・クレジット分野に特化した戦略を展開している。コア・ミドル市場に的を絞った投資哲学、テクノロジーを活用した先進的な運用基盤構築により、大規模な運用会社とは一線を画す差別化を進めている。来日した欧州投資責任者マーク・ウィルトン氏、北米投資責任者マーク・フレスナー氏に、現在の運用戦略と今後の展望を聞いた。
保守的な案件にこだわる本流に忠実な投資戦略

欧州投資責任者
マーク・ウィルトン氏
J-MONEYが2人と対談するのは数年ぶりです。コリンシア移籍から1年以上が経過しました。近況はいかがですか?
ウィルトン 大きな変化と挑戦の多い1年でしたが、その分チームとしての結束も強まり、長期的にお客様により良い運用サービスをお届けできる体制が整ってきたと感じています。
移籍当初の重点は、堅固な企業基盤を築き、投資活動開始の準備を整えることにありました。近年、日本においても多くのパートナーシップを築いてきましたが、その一方で、移籍に伴い一部のお客様に混乱を招いてしまったことも認識しております。今後は、信頼の回復とより強固な関係構築に努めてまいります。
設立当初から重視してきた人材投資面では、2024年設立時の17名の投資チームに加え、約1年で14名の新たなメンバーが投資チームに加わりました。もう一つの重点ポイントであったミドル・バックオフィス機能の強化にも注力し、プライベート資産に特化した外部パートナーとの協業や、先進的なテクノロジーへの投資を積極的に進めています。
多くの既存のプライベート・クレジット企業が旧来の複雑な社内システムへの対応に悩まされる中、弊社は最先端のテクノロジーを駆使し、プラットフォームをゼロから構築する機会を得ました。これにより、投資プロセスの効率化、データ透明性・正確性といった社内プロセスに加え、既存顧客への投資関連データや案件情報提供における顧客体験の向上を実現しています。
資金調達面では、グローバルに幅広い機関投資家からの力強い支援を受けています。既に複数のセパレート・マネージド・アカウント(SMA)を通じて数十億ドルの資金を調達し、運用を開始しています。
プライベート・クレジットが世間により浸透し、より多くのリスク調整後リターンに乏しい投資案件が市場に溢れるに至った足元の状況下においても、奇を衒った案件に走ることなく、元来のダイレクト・レンディング投資の本流として、着実に投資妙味のある保守的な案件に限定して投資を行っています。厳しい運用環境下においても、20年超にわたるチームメンバーのプライベート・エクイティ(PE)スポンサーとの関係、および投資先企業との親密性が、質の高い投資機会の提供を可能にしています。
コア・ミドルのシニアローンに焦点。ローワー、アッパーにはない投資妙味
改めて、なぜスポンサー案件、かつコア・ミドル案件に焦点を当てるのでしょうか?
ウィルトン 弊社の戦略はリーダーシップチームがこれまで20年超にわたり成功裡に展開してきた戦略の継続です。北米と欧州のPEスポンサー支援を受けたコア・ミドル市場の企業を対象としたシニアローンに焦点を当てています。弊社は常に保守的な投資哲学を貫いてきました。最優先事項は損失の回避です。
将来的に、資産担保ローンなど隣接分野への投資資産クラスの拡大を検討する可能性もありますが、弊社のビジョンは、同哲学を貫徹し、プライベート・クレジットの専門分野でリーダーシップを発揮する企業となることです。
コア・ミドル市場のPEスポンサー案件が、リスクとリターンの最も魅力的なバランスを提供すると考えています。効果的な参入に必要な資本要件が参入障壁となり、引き続き良質な投資機会が相対的に多く存在する領域となっています。通常、1件の取引に2億ドル~4億ドルのコミットメントが求められますが、多くの運用会社は、そのレベルの資本を調達できず、競争が激化しリスク調整後リターンの低下しているローワー・ミドル市場に押し下げられています。
ローワー・ミドル市場ではドキュメンテーションを厳格にできる利点がありますが、リスク調整後リターンにおいて、これらの小規模な借り手が有するビジネス上の高い信用リスクを正当化することが難しいと考えています。
北米投資責任者
マーク・フレスナー氏
フレスナー また、アッパー・ミドル市場は過密化しており、大規模な資産運用会社やビジネス・ディベロップメント・カンパニー(BDC)は巨額の資金を調達し、効率的に運用するため、ビジネス判断としてメガディールに焦点を移しています。その結果、多くのプレイヤーがコア・ミドル市場から撤退(スタイルドリフト)しています。これらの大規模な取引は、構造的な保護が弱いことに加え、バンクローン市場の価格変動への連動を余儀なくされる傾向にあります。
ウィルトン 長期にわたり一貫して活動し、アッパー・ミドル市場へのスタイルドリフトを回避できる運用会社はごくわずかです。これにより、弊社は投資案件において一層強固な債権者保護を確保し、スプレッド水準の規律を維持し、高度に分散化されたポートフォリオを構築できます。
特に、欧州戦略のポートフォリオにおいては、債権者保護の弱い法制下にある南欧の案件を回避しながら、イギリスのみならずフランスやドイツといった大陸の国々にもバランスよく分散した投資を行い、投資タイミングごとの国別の相対価値を追求できるという観点から真の「汎欧州戦略」を構築しております。

トップクラスのPEスポンサーとの連携は、弊社の案件発掘パイプラインを強化し、投資のライフサイクルを通じて長期のパートナーとして協力することを可能にしています。これらの関係は、単に短期的な個別案件の調達や追加投資機会だけでなく、今後訪れる可能性のある困難な市況に協働して対応する際にも不可欠な要素です。これまでのサイクルにおいて、困難な局面において協働して立ち向かえるPEスポンサーかという点に関しても、長い期間を通してのスクリーニング実績を有しています。
市場センチメントに流されず事業基盤分析を重視する
コリンシアはどのように差別化を図りますか?
フレスナー 大規模な運用会社は、BDCを軸足とする中で、ますます大規模な資金を調達し、大型案件への投資に集中しています。結果、投資先案件の重複やリターンの希薄化が生じています。このような大規模な運用会社にとって、弊社が専門とするようなコア・ミドル市場の案件に投資することは、時間/手間/想定リターン面において効率的なビジネス判断とはなり得ません。
一方、このトレンドは、組織が整い、機敏で戦略を絞った運用会社にとって意味のある投資機会を生み出しています。投資家は、広範な市場リスクではなく、企業固有のリスク精査を反映したポートフォリオを提供するマネージャーを求めています。弊社は、この需要に応えるための最適なポジションにあると自負しています。
特に、マクロ経済の不確実性が高まる時期には、投資家はスプレッド水準に代表されるような短期的な市場センチメントではなく、投資先企業の個別の事業基盤分析に根ざした、中長期的な視座を有するダイレクト・レンディングのマネージャーへ資金をシフトする傾向にあります。これは新型コロナウイルスショック、地政学的ショック、過去の金融危機の時期を通して証明されています。
この記事は、適用される法令の定める意味における投資活動への参加を、勧誘または誘引するものではありません。