ウエリントン・マネージメントの私募債ソリューション

機関投資家のクレジット・ポートフォリオの強化手段として、私募債投資に注目が集まる。長年、米機関投資家に私募債の運用ソリューションを提供してきたウエリントン・マネージメントで私募債運用チームを率いる2人にその魅力を聞いた。

IG社債と同等の格付けで分散性・追加利回りを享受

最近、日本の機関投資家が新たに注目すべき資産クラスとして、「プライベート・プレースメント」、いわゆる「私募債」がよく挙がる。

オヌクワガ プライベートクレジット(以降、PC)の一種である私募債は、特定の投資家に限定して発行される債券だ。ざっくり言えば、PCが有するスプレッド妙味と公募投資適格(IG)社債と同等の信用力を兼ね備える投資先だ。

私募債の信用格付けは、一般的なPCであるダイレクトレンディング(以降、DL)のように格付けがないもしくはハイイールド格ではなく、通常は投資適格級の格付けが付与される。それでいて、私募債には流動性プレミアムが付くゆえに、米国債プラス100~300bps程度のスプレッドを享受できる。より高リスクのDLの利回りには及ばないものの、米国債プラス30~175bps程度の公募IG社債と比べて倍に迫る水準は魅力的だ。

ペレニック 私募債市場の多様性も見逃せない。公募債の発行体は近年、金融や製造業などのセクターに集中する傾向がある。DLも、ドル建てで3~5年の貸付を行うことがほとんどであり、特定年限にディールが集中する傾向にある。他方、私募債市場には大企業から中小企業まで、セクターも金融、ユーティリティ(公益事業)、インフラ・不動産、そしてスポーツチームに至るまで、多様な業種の企業が発行体に名を連ねる。さらに米ドル以外の通貨建ての起債も一般的で、デュレーション(年限)も発行体と投資家の双方のニーズに応じて柔軟に調整される。

複数の通貨建てで、短期から超長期まで、多種多様なセクターが揃う、バラエティ豊かな市場だ。さらに、DL分野で投資家保護などが手薄の契約(コベナンツ・ライト)が増えている昨今、私募債はむしろ保護条項を厚くする「コベナンツ・ヘビー」での発行が慣例だ。投資家にとって、不透明感が強く、景気後退のリスクが高まる足元の運用環境でも、下方リスク耐性は安心材料になる。

■ 私募債の特徴
私募債の特徴
出所:ウエリントン。上記の内容は実際の特性とは異なる場合があり、例示目的で示しています。

「クラブ取引」への参加で高度なカスタマイズ性を提供

私募債に対する機関投資家の関心は。

オヌクワガ 近年、公募IG社債のスプレッドは歴史的な水準までタイト化が進んできたが、私募債市場ではスプレッドは長期平均に近く、両者のスプレッドは拡大中だ。もともと私募債市場は、主に米国の生命保険会社がコア資産として投資してきた。だが近年、公募IG社債と私募債のスプレッド差の拡大を受けて、米国外の金融機関や年金基金などのほかの機関投資家も私募債に収益機会を求めて投資拡大を続けている。

ペレニック 先述した投資の多様性も、機関投資家が私募債に注目する理由の一つだ。公募債と私募債の発行体の重複は約15%で、クレジット投資の分散効果をいっそう高める期待が持てる。また、セクターや年限が比較的硬直的な公募債のポートフォリオを調整する目的で、公募×私募のクロスオーバー運用も注目できよう。公募債だけではどうしてもリスクやセクターが偏ったり、負債デュレーションとのマッチングが図りづらかったりする。一方、私募債のみでは為替ヘッジ・金利ヘッジを行う場合に発生し得る資金手当てニーズへの対応が困難になる可能性がある。そこで、投資家が求める利回り水準、流動性、セクター分散に基づき、公募と私募を組み合わせるクロスオーバー運用は有力なソリューションと言えるだろう。

運用会社には、各投資家のニーズに合わせ「テーラーメイド」で私募債を提案する力が求められそうだ。

オヌクワガ その通りだ。そして高いカスタマイズ性をお客様に提供するためには、同市場の幅広い投資機会へのアクセス力が重要だ。ウエリントン・マネージメント(以下、ウエリントン)では、これまで強みとしてきた公募IG社債投資のグローバルなリサーチ・ネットワークをフル活用し、欧米を中心に世界中の質の高い魅力的な私募債に目を光らせている。特に、ウエリントンの得意分野である公募IG社債の運用で培った分析ノウハウとのシナジーが期待できる分野にフォーカスし、より確信度の高い案件に厳選投資している。

そもそも公募市場ではない私募債は、魅力的な案件を発掘(ソーシング)するのも一苦労だ。多くの運用会社は、幅広い投資家に開放された「エージェント市場」で案件を発掘することが主だが、実は私募債には「クラブ取引市場」というごく限られた参加者にのみ開かれた市場も存在する。

後者の「クラブ取引市場」は、交渉次第で投資家が望むように契約を柔軟にカスタマイズできることが多く、追加的な利回りおよびプロテクションを享受できる期待も高まる。発行体との個人的な信頼関係など、一朝一夕に構築できない要素が求められる難しさがあるが、顧客ニーズに即した案件を自ら獲得できる貴重な“発掘現場”である。これら2つの市場へのアクセスを通じた案件の発掘・創出力こそ、ウエリントンの差別化要因となっている。

■ クレジット市場におけるウエリントンの専門性
ウエリントンの専門性
2024年12月末現在。
*ウエリントンが2024年の投資ユニバースのうち投資実行に至った案件の割合(コミットメントベースであり、ファンディングベースではない点ご留意ください)。

日本の読者にメッセージを。

オヌクワガ 日本では、私募債はまだあまり身近ではないかもしれない。しかし、米生保が長年にわたり一般勘定運用の約3割を私募債に割り当てているなど、実は米国では何十年もの歴史と実績を持つ資産クラスだ。DLのように過去のショック局面における挙動が確認できないという課題もない。投資環境の変化に伴い、私募債は日本の機関投資家の間でも関心が高まるだろう。

ペレニック プライベート=ハイリスク・複雑という先入観を持たれる方が多いと思うが、私募債はそうではない。公募IG社債と同等の高い信用力を持ちつつ、流動性リスクに見合った追加的利回りを享受できるという極めてシンプルな特性だ。世界経済に対する懸念が強まる中、「クレジットリスクを抑えつつ流動性リスクを取りたい」と考える投資家には私募債が有力なソリューションと言えるだろう。

オヌクワガ 私募債の運用において、私たちチームは20年以上の経験を有し、幾多の景気サイクルを乗り越えてきた専門家が揃う。モニタリングやレポーティングまで、包括的な私募債運用ソリューションをプロフェッショナルが提供している。私募債が日本の機関投資家の間で資産運用の選択肢の一つとして認識され、その活用の幅が広がることを期待している。

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ウエリントン・マネージメント・ジャパン・ピーティーイー・リミテッド

  • 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第428号
  • 一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人投資信託協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会