金融機関が財務健全化に向けて財務上のリスクの一部を投資家に移転する動きが、機関投資家の新たな投資先として注目を浴びる。アクサ・インベストメント・マネージャーズ・グループのオルタナティブ・インベストメント事業部門(アクサIMオルツ)の砂子知香氏は2025年4月11日、東京都内で開催されたJ-MONEYカンファレンス(主催:J-MONEY)で、リスク移転戦略の魅力や特徴を説明した。

信用リスクの一部を保証する

アクサ・インベストメント・マネージャーズ オルタナティブ営業部 シニア・セールス・マネージャー 砂子 知香氏金融危機以降、伝統的な銀行の融資縮小に伴い、ノンバンクによる貸付が拡大している。そうしたノンバンクの貸出債権に投資するプライベートクレジット(以降、PC)が機関投資家の新たな収益源として注目を高めてきたが、その大半はダイレクトレンディング(以降、DL)への投資であった。そんな中、PC市場では最近、ニッチゆえに専門性や複雑性が高い分、追加的な収益が期待できるスペシャリ
ティファイナンス(以降、SF)と呼ばれる新たな分野が盛り上がりを見せている。

そのSFの中で、アクサIMオルツが長年、力を入れて提供してきた戦略が、本日ご紹介したいSRT(Significant Risk Transfer)投資だ。SRTは直訳すれば「重大リスクの移転」となる。

名前だけでは分かりにくいが、要は銀行が保有するローン債権の信用リスクに対する金融保証取引がSRTだ。投資家が、銀行のある債権プールに対して損失発生時に補償を行う義務を負い、代わりに定期的な“保証料”を受け取るという内容だ。金融機関は近年、資本規制の強化に伴い債権ポートフォリオのリスクが課題となって、SRTの需要が高まっている。

実際、アクサグループの中核的な保険会社アクサでも、DLやバンクローンと併せて投資することでクレジットポートフォリオの補完・分散を担える投資対象として、このSRTへの投資に注目し、長年運用を続けてきた。なぜか。それは次のように魅力的な投資妙味があるためだ。

まず、SRTが対象とするローンは企業向けのみならずリテール、不動産向けまで広く含むため、裏付けとなるローンが多様性に富む。DLの大半がBtoBビジネスやヘルスケア関連の企業向け貸出であるのに比べると、非常に分散されたクレジット投資である。例えばアクサIMオルツのSRT戦略では、その裏付けとなるローンは数千件にのぼる。低リスクである上、株式やほかのクレジット資産の値動きとの相関が低いため、安定感のある投資対象と言える。
 
また安定したキャッシュフローの存在も魅力の一つだ。しかも流動性プレミアムに加えて、取引の交渉やストラクチャリングに高度な専門性が必要になる複雑性が、追加的なプレミアムとして利回り水準を押し上げる。ほかのクレジット資産と比較して、良好なリスク対比リターンが見込める格好だ。
 
ちなみに対象とするローンによって格付水準は様々だが、おおむね中~大規模の企業向け貸出を対象とするSRTは投資適格以上だ。何より債権管理の専門家である金融機関が仲介機能を継続しているローンを対象としていることが、パフォーマンスの信頼性に寄与している。特にアクサIMオルツが投資するSRTは信用リスクのすべてを投資家に移転するものではないため、対象ローンを保有する銀行が投資家と同じ目線でローンの管理・保全や、いざというときの回収に心血を注ぐ。普段市場に出回らない銀行管理下にある良質なクレジット資産に投資できることが、SRT投資の一番の魅力かもしれない。
 
SRTはいくつかの取引形態があるが、もっとも一般的なのはクレジットリンク債を通じた取引だ。例えば、ある銀行が100億円分のローンに対する信用リスクを10%ヘッジしたい時、10億円を補償するクレジットリンク債を発行して、投資家に購入してもらう。投資家は、期中、同債券のクーポンとして定期的に保証料を受け取り、満期に元本10億円を受け取る。もし対象ローンに実損が発生すれば、その分元本が取り崩される形だ。なおこの時、クーポンはあくまで“保証料”であるため、対象ローンのキャッシュフローとは関係なく支払われる。

なおアクサIMオルツのSRT戦略では、中小企業向けの貸出が多数入るSRTに投資する際、「実損のうち、○○ドル以上の損失のみ補償する」といった契約を結ぶことで、必要以上の信用リスクを取らない工夫を凝らしている。
 
クレジットリンク債は多くが金融保証ではなくCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を組み込むものになるが、CDSは時価変動の影響を受けるのに対して、SRTは時価リスクがない。またCDSはデフォルトが発生するとすぐに損失が確定するが、SRTの場合はデフォルト後、銀行が回収努力をした結果、それでも発生した実損だけを補償する契約になる。

SRT市場のベストを厳選

最後に、アクサIMオルツのSRT運用の強みについて少しご紹介したい。

アクサIMオルツはアクサIMグループのオルタナティブ投資部門として2000年に設立。現在約120名のプロフェッショナルが、グローバルでおよそ9兆円のPCを運用している。その中でSRTチームには、業界経験が平均で20年を超える11名の専門家が在籍。ソーシングから分析、ストラクチャリング、交渉、取引の執行に至るまで、独自に運用を行っている。このチームが、SRT市場のほぼ全ての案件を分析し、ごく一部のベストな案件を厳選して、戦略に組み入れている。

■SRTの全方位から投資機会をソーシング
■SRTの全方位から投資機会をソーシング
出所:アクサIMオルツ、2024年6月30日。説明のための表示です。
弊社の取引実績(2000~2024年)に基づくSRT市場における割合を参考のため表示です。
* CVAとはCounterparty Valuation Adjustmentのことです。

2025年現在、アクサIMオルツのSRT戦略は9号ファンドまで募集されており、1号ファンドの設定からの25年間で約9200億円もの投資を集めてきた。他社と一線を画す長い運用経験の中では主要地域の大手銀行と堅固な関係性が確立されており、2000年以降、110案件以上のSRT取引を手掛けてきた実績がある。ローンの対象地域・セクターも非常に多様で、25年間でSRTがカバーするほぼすべてのローンセクターに分散して投資を行ってきた。アクサIMオルツの運用チームによれば、SRTで安定した運用成果を出すために最も重視すべき点が分散投資だという(図表)。
 
ただし、数を増やせば良いわけではない。最良の結果を得るために、アクサIMオルツのSRT戦略では市場動向を注視し、アクティブかつダイナミックにセクター配分を変更している。この機動力を持った調整能力こそ、ダウンサイドリスクを抑制しながら高いリターン水準を実現するカギだ。
 
実際に1~9号ファンドまでの各SRT戦略のリターン(年率米ドルベース、為替ヘッジ後)は、足元で概ね8~12%程度と、一般的なDL戦略と比べても魅力的な水準だ。しかも先述した110超の取引のうち、損失が発生したのは1件だけ。ファンドレベルでマイナス計上したことは一度もない。
 
近年、SRT投資に参入する大手運用会社も増えてきているが、まだアクサIMオルツほど分散されたポートフォリオのSRT戦略を運用し、提供できているところはない。新たな投資機会であるSRTを検討される際には、ぜひアクサIMオルツの戦略を思い出してほしい。

当資料は、アクサ・インベストメント・マネージャーズが作成したものです。
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