プリンシパル・グローバル・インベスターズ 「優先証券」でヘッジ外債部分のパフォーマンスの改善をサポート
債券ポートフォリオのヘッジ外債部分のパフォーマンス低迷に悩む機関投資家は少なくない。その課題解消の資産クラスとして注目を集めるのが「優先証券」だ。プリンシパル・グローバル・インベスターズ(PGIJ)の長谷川華子氏は2024年10月30日、東京都内で開催されたJ-MONEYカンファレンス(主催:J-MONEY)で、優先証券戦略のリターン特性や運用実績を語った。講演のポイントを紹介する。
過去10年リターンはプラス29.75%
年金基金をはじめとした機関投資家の皆様との対話から、債券ポートフォリオの課題としてヘッジ外債部分のパフォーマンス低迷を挙げる方が多いと感じる。この問題を解決するアイデアの一つとして、優先証券の優れたリターン特性や魅力的な運用実績をご紹介したい。
プリンシパル・アセット・マネジメントは、米国アイオワ州で約140年の歴史をもつプリンシパル生命を母体とする金融グループの運用部門だ。運用資産総額は約88兆円で、中長期目線の機関投資家からの受託残高が多い。運用資産の内訳は、株式と債券が約4割、残りの2割が不動産だ。足元では債券や不動産を中心に国内投資家からの受託残高は約1.5兆円にのぼる。
当社の特徴は、投資対象資産や手法が異なる複数の運用会社を傘下に持つマルチブティック型の運用組織だ。プリンシパル本体の運用会社に加え、グローバルに専門性の高い投資アプローチを手がける運用会社を抱える。
優先証券戦略は、そのうちの一社で米国に本拠を構えるスペクトラム・アセット・マネジメントが運用している。同社は1987年の設立から37年間、優先証券一筋で運用資産約3兆円を積み上げた。1990年代のマーケットの拡大とともに成長し、今では優先証券運用の業界最大手だ。日本にはプリンシパルの金融グループ傘下に入る前の1997年に進出し、足元、約50の国内機関投資家に採用いただいており、受託残高は約1400億円にのぼる。10年以上にわたり、投資を継続されている投資家も少なくない。
そもそも長期マネーを運用する機関投資家のポートフォリオにおいて、債券ポートフォリオの一角を占めるヘッジ外債の存在意義とは何か。低金利環境下での円債代替として取り組んだが、実際にはヘッジコストや金利の急騰によって安定した収益源としての役割は果たせていないと感じる機関投資家が多いのではないだろうか。金利低下局面の過去10年間の実績を見ると、むしろポートフォリオ全体のパフォーマンスの足を引っ張ってきたのがヘッジ外債だ。
2024年8月現在の過去1年や過去10年の年率リターン(円ヘッジ)を見ると、世界国債(除く日本)やグローバル総合(除く日本)といったヘッジ外債の収支はトントンといった水準だ。一方、優先証券は、過去1年で7.72%、過去10年では2.64%といずれも良好な実績を残している。
累積リターン(円ヘッジ)では、その差はさらに鮮明だ。世界国債(除く日本)やグローバル総合(除く日本)といったヘッジ外債の過去5年はマイナス17.84%やマイナス13.67%、過去10年でも双方がマイナスリターンに沈んでいるなど衝撃の数字が並ぶ。対する優先証券戦略の過去5 年の累積リターン(円ヘッジ)は4.02%、過去10年では29.75%だ。優先証券は投資適格社債に近い格付けを維持しながら、良好なリターンをあげてきた。
5年金利に連動する変動金利債券
長期にわたって優れたリターン実績をもつ優先証券は、ヘッジ外債のパフォーマンス見直しのポイントである外債部分の利回り改善対策として注目されている。しかし、ハイイールド債やプライベート・デットのような投資不適格級のクレジットリスクおよび流動性リスク、長期債のような金利リスクを積極的に取りにいくものではない。
債券のようにクーポンが定期的に支払われ、株式のように自己資本に組み入れることができる優先証券は、普通社債や普通株式の間に位置づけられる投資対象資産だ。全世界の市場規模は約137兆円で流動性も高い。優先証券の中には、劣後債やAT1(CoCo)債といった性格の異なる多様な証券が含まれている。満期があるもの、または満期はないものの代わりにコール日(早期償還日)があるなど様々な形態で発行されている。
優先証券には他の債券と同様に固定のクーポンがついているが、特徴的なのは5年ごとにベース金利がリセットされる点だ。いわば5年金利に連動する変動金利物の債券といえる。優先証券は一般的には長期債の形態で、発行日以降、5年ごとにコール日が設定されている。コール日を迎えて発行体がコールしない場合、そのコール日時点での5年金利にスプレッドを上乗せしたクーポンレートが、その後5年間適用される。
銘柄の7割、発行体の98%が投資適格
優先証券は、発行体と投資家双方にメリットの多い資産でもある。債券ながら自己資本としてカウントできる。そのため、優先証券の発行によって金融機関は、株式の希薄化を回避しつつ、節税効果も享受しながら、自己資本規制で義務付けられている資本の積み上げが可能だ。
金融機関以外の企業も、信用力確保と普通社債の格付維持へ資本増強が求められ、やはり発行妙味が存在する。
優先証券の銘柄の約7割、各国を代表する大手金融機関を中心とした発行体にいたっては98%とほぼすべてが投資適格である。流動性は高く、デュレーションは5年以下が一般的だ。優先証券は、発行体の破産などのイベント時に投資元本が返済される順番が普通社債より劣後する。企業年金などの機関投資家にとっては、この劣後リスク=劣後プレミアムと取ることでリターン獲得を目指す運用資産だ。
図表の太線で囲った「ネット利回り」は、同じ表の1段目の「最低利回り」から2段目の「デフォルト率(過去10年平均)」を引いた数値だ。このネット利回りを米投資適格債や米ハイイールド債と比較すると、優先証券は信用リスクや金利リスクが抑えられているにもかかわらず、魅力的な利回りが得られている。
なぜ、このような割安なバリュエーションが市場に“放置”されているのか。背景として、優先証券の知名度、資産分類の難しさやダブルギアリング(銀行規制)により投資家の裾野が限られることに加え、法規制などの専門性の高さから運用会社からも投資妙味が見過ごされがちであるといった、投資家・運用会社双方の事情による構造的なプレミアムが乗っている点が挙げられる。
スペクトラム・アセット・マネジメントは、投資プロセスにおいて、この構造的なプレミアムに注目し高位のリターンを獲得してきた。
スペクトラム・アセット・マネジメントでは、日本の機関投資家の皆様にトータル・リターン型や持ち切り型、短期デュレーション型、非金融セクター銘柄特化型など、それぞれのニーズに合わせた優先証券戦略を提供している。発行体のほぼすべてが投資適格で、特徴的なクーポン構造により金利リスクは抑制されているが、劣後プレミアムを源泉とした高い利回りが期待できる優先証券は、ヘッジ外債ポートフォリオのパフォーマンス改善をサポートすると考える。
※記事中で特に断りのないデータは2024年6月末現在
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