アクサ・インベストメント・マネージャーズ 緩やかな経済成長がクレジット資産の追い風に。積み上がるキャリー収益のクッション効果がボラティリティを抑えるCIOが語る2025年の経済見通し
景気後退への懸念が囁かれながらも粘り強く堅調を維持してきた2024年のグローバル経済。 2025年の経済・投資環境はどうなるのだろうか。アクサ・インベストメント・マネージャーズ・グループ、アジアCIOのエカテリーナ・ビゴス氏に、2025年の経済見通しとクレジット投資の魅力について聞いた。(記事内容は2024年11月15日時点)
企業投資と消費の強さが米経済の下支えに
2024年は米国経済がリセッション(景気後退)に陥ると懸念する見方があったものの、実際には市場参加者の予想以上に粘り強さを見せた。米国経済を支えた要因の一つと考えられるのが、企業投資の強さだ。国内半導体産業の振興を目的とするCHIPS法やIRA(インフレ抑制法)の税額控除が適応された結果、投資が大幅に増加した。加えて、AI(人工知能)の技術革新がさらなる投資を誘致。これらが企業の生産性向上、ひいては米経済の成長につながったとみられる。
もう一つ、米経済を下支えしているのが消費の堅調さだ。2024年10月に発表された9月の米雇用統計は雇用者数の増加や失業率の低下を示しており、労働力不足の懸念が沈静化に向かった。これは、移民による労働供給が増加したことが大きく寄与した結果と考える。雇用情勢の改善により、いったんは落ち込んだ消費者心理が回復しているため、今後もレイオフ(人員削減)が広がらない限り消費が大幅に縮小する可能性は低い。2025年も米経済の底堅さは維持されるのではないか。
もっとも、インフレ率は未だFRB(米連邦準備理事会)の目標値まで低下しておらず、その抑制のレベルによっては金融政策の方向性が変化するシナリオを想定しておく必要がある。2025年から始まるトランプ政権の第二期目では、移民規制のほか、強硬な関税政策が供給サイドのショックを誘発し、インフレが引き起こされるかもしれない。政策については油断せずに注視する必要がある。
また、金融政策に対する市場関係者の期待感も実体経済に影響を与えうる。足元の金融緩和は、今後12カ月間に累計2%の利下げが実施されるとの予想に基づいているが、金融政策が巻き戻されれば、経済成長の逆風となるだろう。
欧州に目を転じると、2024年のEU全域のGDP(国内総生産)はプラス0.7%を見込み、2025年は潜在成長率を下回るプラス0.9%にとどまる見通しだ。経済成長の度合いは米国に比べ弱いものの、景気後退の心配は見られない。足元では、家計の可処分所得が過去最高水準で、新型コロナウイルス禍前の米国より高いほど、貯蓄率が増加しているのが大きな特徴だ。地政学的緊張の高まりなどに起因する消費者の不安から貯蓄志向が高まっているとみる。欧州経済のさらなる成長には、その家計貯蓄をいかに消費に回すことができるかがポイントになるだろう。
インフレも米国と異なり、急速に減速している。ECB(欧州中央銀行)は2025年にかけて、主要政策金利である中銀預金金利をインフレターゲットである2%に達するまで会合ごとに25ベーシスポイントずつ引き下げると、当社では予想している。
翻って日本では、マイナス金利政策の解除という金融政策の正常化の動きが今後も継続されるのかに注目したい。日本経済に染み付いたデフレマインドによりインフレが完全に浸透していないことから、経済成長は未だ脆弱だ。個人消費が回復するのを忍耐強く待つ必要があるだろう。日銀による政策金利の0.25%への引き上げの影響は、物価を押し下げる効果があるものの、金融引き締めによる景気の下振れリスクとなる可能性があるため、現在の政策金利水準は2024年末まで維持され、2025年中は0.5%にとどまる公算が大きい。
クレジット資産は引き続き底堅いパフォーマンスを提供
ここまで見通しを述べてきたが、2025年も引き続きマクロ経済や投資家のセンチメント(市場心理)は綱渡りのような不確実性を持ち、特にリスク資産はボラタイルな運用となる可能性が高い。クレジット資産を取り巻く環境も同じだが、こちらはキャリー収益(債券保有による金利収入)が積み上がっていくことで“クッション”の役割を果たすため、価格の下落幅を抑える効果が期待されるのが魅力である。
なお経済成長が著しいとインフレ抑制のため金融引き締めが実施され、反対に経済成長が弱すぎれば景気後退から企業業績にマイナスとなる可能性がある。現在のように経済成長率がプラス圏で、かつ緩やかに上昇傾向にある環境はクレジット投資にとって追い風だ。堅調なマクロ経済やレジリエントなファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)などが足元のスプレッド水準を支えている現在の環境が続くとすれば、クレジット資産には引き続き底堅いパフォーマンスが期待されるだろう(図表)。
また、資金調達コストが2024年夏から現在までに100ベーシスポイント低下したことで、とりわけ格付けの低い企業は、今後より安い水準で資金調達ができるという点でプレッシャーが軽減されただろう。クレジットのデフォルト率は、過去平均を大きく下回る低水準で推移している上、格上げとなる銘柄が増えているのもクレジットにとって好材料となっている。
一方、中小企業の中にはまだボラティリティの影響を受けやすく、格下げやデフォルトリスクのある企業も少なくない。投資にあたっては、その点を認識した上で、デフォルトしたりキャリー収益を希薄化させたりする恐れのある企業を適切にスクリーニング(除外)する必要があるだろう。マネジャー選択の際は、投資先のデフォルト率に注意を払い、損失を回避するプロテクション能力に長けた運用者を選ぶことが非常に重要だ。
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