2024年9月6日のJ-MONEYカンファレンスでは、来日したフェデレーテッド・ハーミーズのプライベート・クレジットCIO(最高投資責任者)パトリック・マーシャル氏が、「設定来デフォルトゼロ」という驚異の安定感が注目を集める『欧州ダイレクトレンディング戦略』の魅力を存分に語った。当日のプログラムの模様をダイジェストでお伝えする。

「DL運用への入口」を目指して設計・運用

パトリック・マーシャル氏
フェデレーテッド・ハーミーズ
プライベート・クレジット責任者
パトリック・マーシャル

「設定来デフォルトゼロ」という驚異のパフォーマンスを誇るフェデレーテッド・ハーミーズ『欧州ダイレクトレンディング戦略』の安定運用の秘訣をCIO自らが語るとあって、厳しい残暑の中でも、カンファレンスの会場となった東京コンベンションホールには多くの人が集まった。

同戦略は信用力が高く、かつ投資家有利な条件でローンを発行しやすい北欧地域(スウェーデン、ドイツ、ベネルクス3国など)のスモール・ミドルマーケットに注目するダイレクトレンディング戦略だ。なおかつ弁済順位の高い担保付シニアローンのみに投資することで、安全性とアルファ収益の双方を追求する。

最初に登壇したのはフェデレーテッド・ハーミーズ・ジャパン 機関投資家営業の藤岡耕三氏。藤岡氏は米国でリテール向け金融商品を提供していた運用会社フェデレーテッドと、大手電話会社の企業年金を出自とする英国のハーミーズが2018年に合併して設立された同社の経歴を説明しつつ、伝統資産、プライベート資産、そしてESG関連のスチュワードシップにわたる、同社が現在展開する幅広いソリューション・ラインアップを説明した。

「2024年3月末時点で、フェデレーテッド・ハーミーズのグローバルな運用資産残高は約118兆円。なおESG関連分野のエンゲージメント代行や議決権行使助言などを含む助言対象資産は、約274兆円で、70社ほどが利用している」(藤岡氏)

その後、藤岡氏に紹介されて登壇したのがテネオ・パートナーズのシニア・マネージャー 田川聡氏。テネオ・パートナーズは外国籍ファンドを専門とする証券会社で、『欧州ダイレクトレンディング戦略』の販売会社だ。田川氏は「本戦略について日本における販売・情報提供は当社が担当している。ぜひ気軽にお声かけいただきたい」と挨拶した。

3番目に登壇したのが、『欧州ダイレクトレンディング戦略』のCIOで、2015年にフェデレーテッド・ハーミーズのプライベート資産ビジネスの立ち上げを担ったパトリック・マーシャル氏だ。

マーシャル氏は2015年当時を振り返り、「ダイレクトレンディング(DL)戦略を提供する運用会社は既にたくさんあったが、そのほとんどがハイリスク・ハイリターンな内容だった。そこで、途切れることなく安定したインカム収益を享受でき、低リスクで安心して運用してもらえるDL戦略を提供することで、魅力的なDL戦略に多くの機関投資家がエントリーできるようにしたいと考えた」と、戦略設定の背景を述懐するところから話を始めた。

北欧大手4銀行からローン情報が舞い込む

田川 聡氏
テネオ・パートナーズ
シニア・マネージャー
田川 聡

マーシャル氏いわく、その理想を実現すべく試行錯誤の末に辿り着いたというのが、低リスクで安定したDL戦略を提供するための「5つのポイント」だ。

その概要は、①弁済順位が高く、厚いエクイティクッションによる下方リスク抑制が期待できる「シニア担保付ローン」に投資対象を絞ること、②債権者に有利な法律体系が整う北欧地域へのフォーカス、③ローンの条件交渉を投資家優位で進めやすい中小企業(EBITDAが3000万~7億5000万ユーロ規模)に貸し出し対象を絞ること、④小売や旅行など、シクリカル(景気敏感)なセクターを避けること、⑤ポートフォリオの分散を高めること――。

この5つのポイントすべてを網羅するよう設計され、生み出されたのが、本カンファレンスの主役である『欧州ダイレクトレンディング戦略』だ。

ただし、同戦略の「設定来デフォルトゼロ」を支える差別化要因はこれだけに留まらないというのが、マーシャル氏の講演の要点となった。その最たるものが、北欧を拠点とする4つのパートナー銀行(ダンスケ銀行、ナットウエスト銀行、KBC、DZバンク)との連携により、他の運用会社がリーチできないローン案件にアクセスが可能というオリジネーション機会の圧倒的な豊富さだ。

藤岡 耕三氏
フェデレーテッド・ハーミーズ・ジャパン
機関投資家営業
藤岡 耕三

「契約により、パートナー銀行は欧州各地で申し込みのあった”全ての”ローン案件を当社に紹介する義務がある。当社は各行から寄せられる多種多様なローン案件を独自の分析を通じて入念に精査し、魅力的な条件の借り手企業を厳選できる。そうして厳選した企業に対して、銀行が提供するローンと並行して当社が自らストラクチャリングしたローンを提供する」(マーシャル氏)

いわば、銀行が先に集めたローン案件のプールから「極めて有望な案件」を厳選し、後出しの形で独自のローンを提供する仕組みだ。もちろん提供するのは万が一の場合に弁済が優先されるシニアローンだ。しかも銀行が先に融資したシニアローンとの間で、一方が優先されるのではなく両ローンの弁済順位を平等とする「パリパス条項」が定められている。

競合を排除したい銀行側からローンの誘い

この“美味しすぎる”仕組みを聞いて、「パートナーの4行はわざわざフェデレーテッド・ハーミーズに自社のローン情報を教えるメリットが無いのでは?」と疑問に思うのは当然だろう。実際に講演当日は聴衆からも同じ質問が飛んだ。

これに対しマーシャル氏は、「2008年の金融危機以降、自己資本規制で各行とも中小企業向け融資のエクスポージャーが十分に取れない一方、シンジケートローンの組成を通じてライバル行が自行の顧客(借り手)に接近するのを回避したい思惑がある。その点、運用会社である当社と組んでタームシートは1つながら貸し手は2社、という形でローン提供すれば、競合を排除した形でクライアント企業により大きな金額のローンを提供することが可能になる」と回答した。

「当社との融資を推進したいパートナー銀行からは、ほとんどゼロ金利であった環境下でも、堅実なキャッシュフローがあって低リスクな半面、7%ほどのイールドが期待できるような良質な案件が頻繁に紹介されてきた。なぜ銀行は当社をパートナーに選ぶのか。それは、長年当社が欧州で各銀行の経営陣と強固なリレーションシップを築いてきたこと、そして経験に裏打ちされた当社の運用ノウハウを信頼してもらえているからだと自負している」

マーシャル氏は講演の最後、「プライベート戦略を提供する多くの運用会社がパートナーシップを強みに挙げるが、『すべてのローン契約の内容を連携する義務』が法的拘束力を持つ形で銀行と取り交わされているのは、当戦略以外に一切ない。4銀行との関係性を土台にした独自のソーシング力こそ党戦略の魅力的なパフォーマンスのシークレット・ソースである」と締めくくった。

質の高いローンへの投資を検討している、あるいは欧州資産の分散を強化したい――。フェデレーテッド・ハーミーズの『欧州ダイレクトレンディング戦略』はそんなニーズを持つ投資家におすすめできるのはもちろん、下方リスクを可能な限り抑制し、枕を高くして安眠したいすべての投資家に注目してほしい内容だ。

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