アムンディ・ジャパン アセット・ベース・レンディングが景気後退期にも利回りを補完する
コア・ミドル市場の企業に注目
アムンディが提携している米国の独立系運用会社、ファースト・イーグルのダイレクト・レンディング戦略は、コア・ミドル市場に注目し、EBITDAベースで500万~5000万ドルの中規模企業を投資対象とするのが大きな特徴だ。コア・ミドル市場の企業は、金利水準やコベナンツ(財務制限条項)などの融資条件よりも、ディール成約の確実性を重視する傾向にある。そのため、案件獲得競争が激しいアッパー・ミドル市場の大企業に比べると、非効率性が保たれてリターン水準が維持されやすい。
ファースト・イーグルでは、セクターごとに特化したオリジネーションを実現している。テクノロジーやヘルスケアなど景気後退期でもある程度、安定した資金需要が見込めるセクターを重視し、各セクターに強みを持つ中堅規模のPE運用会社と共同で案件を構築していく。運用会社によっては地域別に担当者を付けるケースも多いが、ファースト・イーグルではあえてセクター別に担当者を割り当てることで、ソーシングの専門性を高めている。
例えばヘルスケアの担当者には、細かく分類されたサービスセクターごとに、「償還の確かさ」や「需要と供給のアンバランス」といったファクターの影響度を評価したヒートマップが配付される。影響度は小さい方から緑色、黄色、赤色で示され、各担当者はなるべく緑色が多いサービスセクターの案件をソーシングする。いわば担当者に対する指示書のようなものである。PE運用会社でも同じようなアプローチが取られているため、共同で案件を構築していく際に大いに役立つ。
ヒートマップの内容を見ると、アニマルヘルスでは緑色や黄色が並ぶなかで唯一、「市場レバレッジ要求」が赤色になっている。アニマルヘルスは現在、非常に人気の高いサービスセクターである分、ボロワー優位でレバレッジの高い貸し出しを要求してくることも多い。その点は要注意というサインだ。
同じく歯科では唯一、「金利上昇」が赤色になっている。歯科においては、いったん患者になると継続して通うケースが多いため、安定した顧客基盤が見込めるが、金利上昇局面でコストが増加した際に、それを保険診療である患者の診療価格に転嫁しにくい。その点は要注意であることを示している。
コロナ禍を経て案件獲得率が上昇
米国ダイレクト・レンディング市場の近況について注目点が2つある。ひとつは、米国金利の上昇が頭打ちとなったのに伴い、それまで低調だったシンジケート・ローンの回復基調が鮮明になったこと。もうひとつは、PEスポンサーが付いた新規合併関連案件において、ダイレクト・レンディングとシンジケート・ローンのいずれもスプレッド水準が低下傾向にあることだ。
米国では2023年まで高金利環境が続き、景気減速への懸念から企業価値に対する評価が高まらないという事情もあったため、M&A案件の供給サイドが弱かった。そんななかでシンジケート・ローンが回復し、レンダーの貸し出し意欲が強まったことで、需給関係からスプレッドが低下したと考えられる。ただし、低下が目立つのは主としてアッパー・ミドル市場であり、ファースト・イーグルが注目するコア・ミドル市場においては、スプレッドの下がり方も比較的緩やかである。
ファースト・イーグルのダイレクト・レンディング戦略について、ソーシング案件数と実際の案件獲得数(成約数もしくはタームシートを発行した案件数)の関係を見ると、2018年と2019年は3~4割の勝率だった。それが2020年以降は6割を超え、現在も同水準で安定的に推移している。
その背景として、コロナ禍におけるファースト・イーグルの柔軟な対応がポイントになったと考えられる。例えばボロワーの事情を勘案し、貸し出し元本の支払いを猶予して、利払い分だけを返済してもらうなどの対応を取った。また、ダイレクト・レンディングと同時にDDTLという与信枠を設定し、ボロワーの突発的な資金需要に100%対応した。コロナ禍という異常な環境下でも確実に資金提供の実績を示したことで、その後にボロワーの評価が高まったわけである。
担保価値に基づく貸し出しも行う
アセット・ベース・レンディングを手掛けている点も、ファースト・イーグルならではの特徴だ。アセット・ベース・レンディングは企業に売掛金や在庫、知的財産権・商標権などの担保を差し入れてもらい、それらを清算した際の価値に基づいて貸し出しを行う。
通常のキャッシュフロー・ベース・レンディングは企業のEBITDAに基づくため、景気後退期には貸し出しを伸ばすことが難しい。アセット・ベース・レンディングでは景気後退期でも担保資産の価値が期待できるうえ、相対的に利回りも高く、キャッシュフロー・ベースのダイレクト・レンディングを補完する機能があるといえる。
具体的な取引事例として、ジェシカ・シンプソンに対するタームローンの実行を紹介する。彼女は米国のシンガーソングライターだが、並行してアパレルやコスメなど、さまざまなライセンス事業を展開している。2015年に資金捻出のため、株式の一部をSQBという会社に売却したのだが、コロナ禍の影響で事業はうまく行かず、最終的にSQBは破産オークションを通じて個々のブランドの売却を画策した。
それを見たジェシカは、自分が大事に育てたブランドが破産オークションに出されるのは耐えられないということで、それらを買い戻すための資金を2021年11月にファースト・イーグルから借りたわけだ。これはアセット・ベース・レンディングであり、知的財産権が担保として差し出された。
ローンの期間は4年だったが、1年目は元本100に対して103を、2年目は同102を、3年目は同101を、それぞれ割高で返済するコールプロテクションが付いていた。ジェシカはSQBからブランドを買い取った後に、ソーシャルメディアなどを駆使して事業を急回復させ、半年後の2022年5月には全額返済した。すなわちファースト・イーグルには元本比で103が返ってきたわけで、クーポンやOID(元本割引)とともに半年間で非常に高い収益の案件となったのである。
我々はファースト・イーグルのダイレクト・レンディング戦略を、オープンエンド型とクローズドエンド型の2形態で日本の投資家に紹介したいと考えている。オープンエンド型では、米国籍非上場BDCへの投資を希望する投資家向けに、ルクセンブルク籍フィーダーファンドを用意する予定。クローズドエンド型では、2024年11月にファーストクローズ予定の米国籍LPSと同様のファンドの設定を検討中だ。
【ファースト・イーグル ダイレクト・レンディング戦略のリスクおよび手数料】
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