キャピタル・グループ オルイン オンラインセミナー開催レポート 先行き不透明な市場環境下での賢明な選択とは? 債券運用と為替ヘッジの動的管理を考える
先行き不透明な金融市場の今後について、どのようなメインシナリオとリスクシナリオを描いていますか。
華村 メインシナリオはソフトランディングと見ています。ただ、コロナ禍とその後の急激な利上げを経た現在のような市場は前例がありませんので、これまで以上にリスクシナリオを意識すべきと考えます。
リスクシナリオは2パターン想定しています。1つ目は高金利に起因する景気後退シナリオで、すでに米国の中小企業のセンチメントは低下していますし、求人数も減っています。2つ目はインフレの再加速シナリオで、11月の米大統領選挙において民主党、共和党いずれの候補者が当選しても、景気が過熱する可能性が残るためです。
数ある債券資産のうち、妙味のあるものはなんでしょう。
金武 投資意義のある債券資産は3種類考えられます。まずヘッジ外債は、キャピタルゲインの獲得や株式との分散が期待できます。金利が低下したときにしっかり債券価格が上昇する「意義ある金利感応度」を持つ長期国債を選ぶことが重要です。
またヘッジ付きの海外のクレジット債にはインカムゲインが見込めます。例えば、米BBB格社債の利回りは逆イールドになっていますので、ボラティリティを小さくしつつより高い利回りが取れる短期クレジット債が有力な選択肢となるでしょう。
そして国内債券もインカムゲインが期待できます。NOMURA-BPIのキャリーが約0.9%、ロールダウンが約0.6%ですので、1.5%とそれなりの利回りを確保できます(セミナー時点)。
足元では利回りが低位にとどまっていますが、ヘッジ外債の投資意義についてどのように考えられますか。
金武 外国債券そのものは非常に魅力的な投資対象と言えます。具体的には、①株式等の他資産対比でも見劣りしないリスク調整後利回りがある、②長期金利が高いため長期保有で応分な利回りが期待できる、③十分な金利低下余地があり景気後退時などに価格上昇が期待できる、といった特長があります。
課題となっている為替ヘッジコストについては、2つの対応策が考えられます。1つ目は、ヘッジコストを吸収できるように債券の利回りそのものを引き上げる方法で、投資先候補としてはクレジット債券などが挙げられます。また2つ目として、為替ヘッジの手法そのものにメスを入れることが考えられます。
このように債券と為替を別々に考える、つまり分別管理がひとつの選択肢となります。
為替ヘッジ手法そのものにテコ入れするとしたら、具体的にどのような方法があるのでしょう。
金武 為替の基礎的理論に基づいてヘッジ比率を変動させる「動的ヘッジ」が有力な選択肢となるでしょう。為替の基礎的理論としては、①短期のモメンタムに着目した「トレンド」、②内外金利差を踏まえた中期目線の「キャリー」、③購買力平価に基づき長期的に割高割安を判断する「バリュー」の3つがあります。いずれも過去の実績を見ると一定程度の説得力のある理論となっています。
動的ヘッジを用いた運用戦略としては、主に①トレンドに着目して為替が円高(円安)方向に振れたらヘッジ比率を上げる(下げる)といったオペレーションを行う「ダイナミック・ヘッジ戦略」や、主に②キャリーと③バリューに注目して理論的に上昇(下落)すると考えられる通貨を買い建てる(売り建てる)「ルール・ベース戦略」があります。
「最適解」導く柔軟運用こそ債券投資ならではの強み
市場環境に応じて採用すべき債券運用戦略は変わってくると思います。今後予想されるメインシナリオ・リスクシナリオを踏まえると、どのような戦略に妙味が出てくるでしょうか。
華村 今後想定されるシナリオに基づき、代表的な戦略とアセットクラスをリストアップしました(図1)。例えば景気後退の局面では、金武さんの言う「意義ある金利感応度」が重要となり、株式との分散や利下げによるキャピタルゲインが狙えるディフェンシブなポジションをとるべきでしょう。他方で景気が再過熱する局面では、成長率上昇を背景にクレジット物の妙味が増します。債券は非常に戦略の選択肢が多く、あらゆるシナリオに応じて「最適解」のアセットアロケーションを導き出せる特別なアセットクラスなのです。
ただし、シナリオごとに適した戦略はあるものの、前提となるシナリオは常に変わり得るため、特定のストラテジーにベットすべきではないでしょう。重要なのはアセットアロケーションを組むためにシナリオを読むことではなく、シナリオの変化に応じてアセットアロケーションを変えられる柔軟な戦略を採用することです。
柔軟な戦略の典型例としては、株式からの分散や景気後退局面に備えたディフェンシブなポジショニングを重視する「コア型フレキシブル運用」や、市場の状況に合わせて効率的なインカム獲得を追求する「マルチインカム運用」の2つが挙げられます。
具体的に、キャピタル・グループではどのような債券運用戦略を提供しているのですか。
華村 コア型フレキシブル運用では「グローバル・トータルリターン債券運用(GTRB)」、マルチインカム運用としては「マルチ・セクター・インカム運用(MSI)」を提供しています。
まずGTRBは、ブルームバーグ・グローバル総合指数をベンチマークとし、200bpsの上乗せリターンを狙う戦略です。インデックスにはない特徴として、2つの柔軟性を取り入れました。
柔軟性の1つ目はリスク自体の調節機能です。グローバル総合指数では常時ある程度の金利リスクをとらざるを得ませんが、GTRBではその時々とるべきリスクに応じてポートフォリオを見直します。例えば23年後半は、金利が下がってくる可能性が高いと分析し、金利リスクを大きく上げてしっかりリターンを追求しました。
もう1つの柔軟性が、投資先の内訳の調節です。グローバル総合指数では必ずしも投資効率が良くない通貨にも応分のポジションを割いており、投資効率が最適化されていないことがうかがえます。対してGTRBでは、機動的にポジションを入れ替えることによって投資効率の最適化を目指します。例えば通貨の中でもラテンアメリカなどのエマージング市場へ配分したり、金利資産の中でも一部でリスクを取ってハイイールド債券に配分したりしています。
もう一方の戦略であるMSIは、リターン源泉の多様化により、より高いインカムゲインを追求していくものです。金利の高止まりが続く、いわゆる「Higher for Longer」となっている現市場にまさにマッチした戦略と言えるでしょう。
当戦略の特徴としては、長期目線でベストな資産配分比率の目安をベンチマークとして定めつつも、画一的にベンチマークを守るのではなく、配分変更に柔軟性を確保していることが挙げられます。例えばハイイールド債の中立比率は45%としていますが、最大比率65%、最低比率25%と上下20%の幅を持たせるようにしているのです。戦略の柔軟性が功を奏したのがコロナ禍です。コロナ禍ではリスクアセットが大きく下落しましたが、MSIでは中央銀行による景気の下支えを織り込みハイイールド社債のアセットアロケーションをそれまでの20%から50%まで引き上げました。結果としてこの選択は正しく、2020年は米国投資適格社債や米国ハイイールド社債など他のアセットを大きく上回る11.8%のリターンを達成しました(図2)。最大ドローダウンも他資産よりおおむね小さく、回復に要した日数もわずか74日と相対的に早かったことも付言しておきます。
※本記事は2024年5月15日に実施した「オルイン オンラインセミナー」の内容をもとに再構成しました。
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