方向感が見えない不透明な市場環境では、複数の戦略を組み合わせて運用するマルチストラテジーが有効だ。RBCブルーベイ・アセット・マネジメントの大川畑聡氏は、2024年6月21日に東京都内で開催されたJ-MONEYカンファレンス(主催:J-MONEY)で、マルチストラテジー戦略の有効性について語った。

不透明な市場環境でのヘッジファンド

大川畑 聡氏

足元の投資環境では、先々の不透明感が強く資産選択が難しくなっている。特に、米国の金利政策についての見通しは頻繁に変わっており、2024年の1月には年内に3~6回の利下げを行うと見られていたものが4月には3回程度、最近では1回程度に減少している状況だ。

また、ヘッジコストも見逃せない課題だ。2024年初めにはヘッジコストの大幅な低下が期待されていたが、引き続き金利差が維持されていることからヘッジコストも高止まりし、資産クラスや戦略の選択に制約が生じている。

これまでリスク資産の成長を支えてきた米国経済だが、家計消費に陰りが見え始めた。クレジットカードの延滞率は2020年以降右肩上がりに上昇しており、2024年第1四半期には過去13年間で最も高い水準まで上昇した。

さらに、中東やロシア・ウクライナにおける紛争がエネルギー価格の上昇やサプライチェーンの混乱を引き起こし、各国の政治状況にも大きく影響を与えている状況となっている。2024年は米国の大統領選挙を控えており、その結果次第では金融政策が大きく変化する可能性もあるだろう。

そうしたマクロ環境は、各資産クラスのリターンにも大きな影響を与える要因となる。例えば、新型コロナウイルス禍では金融緩和やパンデミック収束への期待感から多くの資産クラスが上昇する局面もあったが、インフレ・金利上昇のリスクから債券・株式ともに下落し、分散投資が機能しなかった期間も見られる。

ヘッジファンド指数は安定したリターンを上げているものの、カテゴリー別に見るとリターンにバラツキがあり、その時々の経済環境や金融情勢によってリターンが変動している。つまり、ヘッジファンドにも得意・不得意の相場があることから、より効果的なリターンを得るためには複数の戦略に分散することが望ましいと言える。

マルチストラテジーの特徴

マクロ環境の不透明感が高まる中では、複数の戦略を組み入れるマルチストラテジーの活用が一つの選択肢となる。マルチストラテジー指数のリターンを見てみると、1995年以降では2008年と2018年にマイナスリターンとなっているものの、それ以外の年では全てプラスリターンを達成しており、多くの資産クラスが苦しんだ2022年にもリターンを得ている結果となっている。

マルチストラテジーの大きなメリットとしては、複数戦略を取り入れるリスク分散やリターンの多様化によって安定的に収益を狙えることが挙げられる。また、通常多くの戦略を個別に採用すると管理に手間がかかるが、マルチストラテジーだとワンストップで管理できるのも魅力のひとつだ。

一方、マルチストラテジーで複数の戦略に分散することで、個々の戦略のパフォーマンスが高くても、その組み合わせによっては全体のリターンが低下してしまうパターンもある。さらに全体としてはマイナスリターンとなっていても、組み入れている戦略でリターンが出ていれば成功報酬が発生する点にも注意が必要だ。

加えて、管理上のデメリットも軽視できない。マルチストラテジーは多くの戦略を組み入れることで、全体としてどのようなリスクがあるのかが把握しづらい場合や、各戦略の運用内容・結果を把握することが困難になるケースがある。中には長期の解約制限がかかることで、想定したタイミングで売却できない場合もあるようだ。

ブルーベイのマルチストラテジー

当社のマルチストラテジーは顧客からの要望に基づいて開発したもので、前述のデメリットに対応した商品設計となっている。その特徴として、「運用の分かりやすさ」「シンプルなフィー構造」「購入・解約流動性の提供」の3つが挙げられる。

まず「運用の分かりやすさ」について、当社のマルチストラテジーは5つの自社のクレジットファンドを組み入れている。これら個別のリスクポジション管理を行うだけでなく、マルチストラテジー全体のポジションの管理も行っており、全体のリスク管理を明確に把握できる環境が整っている。個別戦略だけでなく戦略全体を通した視点から顧客へのレポーティングにも取り組んでいるため、運用内容への理解を深める設計となっているはずだ。

次に「シンプルなフィー構造」について。当社のマルチストラテジーで組み入れている5つの組み入れ戦略それぞれには運用報酬、成功報酬がかからない。運用報酬、成功報酬がかかるのはマルチストラテジー全体に対してのみとなっており、これによってフィーの二重構造を避けられる仕組みだ。こうしたフィー構造から、運用収益が投資家に残りやすい特徴がある。

最後は「購入・解約流動性の提供」についてである。当社のマルチストラテジーでは、流動性のあるパブリック市場に投資することで月次の購入や四半期の解約が可能となっている。これにより、安定したリターンを確保しながらも流動的な売買を提供することを実現している。

ここで、当社のマルチストラテジーの実際の運用実績についても紹介しよう。当社ではフィー控除後の年率リターンを8~10%、リスクを4~6%の目標としているが、直近5年の実績ではリターンが10.38%、リスクが5.87%となっており、非常に良好な水準といえる。直近の5年間には、コロナ禍や2022年の利上げ局面など非常にボラティリティが高い時期も含まれているものの、このような環境下でもリスクを抑えて安定的なリターンを得ることに成功している。

運用戦略としてはクレジットを投資対象とした5つの戦略を組み入れており、各戦略の相関性が低いことが特徴だ。これによって、多様なマーケット環境や経済情勢においても安定したリターンを上げることが可能となっている。

■ブルーベイ・マルチストラテジーの累積リターン(シミュレーション期間を含む)
■ブルーベイ・マルチストラテジーの累積リターン(シミュレーション期間を含む)
出所:RBCブルーベイ・アセット・マネジメント、2024年4月末現在。2012年5月~2024年4月までの月次リターン。2012年5月から2018年4月のリターンは構成する戦略の実績と運用開始時のアロケーション方針に基づいて算出したシミュレーション。2018年5月以降は米ドル建ての実績ネットリターン。*月次の勝率は2012年5月以降でリターンがプラスだった月の割合を示しています。過去のパフォーマンスは、将来の運用成果を示唆・保証するものではありません。

また、当社のマルチストラテジーは個別の戦略と全体の両面からリスクとリターンベースの管理を行っている。たとえば、複数の戦略を組み合わせたときにリスクが足りない、もしくはリスクが過大であると判断した場合、先物などを用いて全体のリスクの調整を行うといった措置も講じている。

こうしたことから、当社のマルチストラテジーでは不透明な環境下でも安定したリターンを提供することが可能だ。現在のような環境下では上手くポートフォリオを構築することが難しい場合もあるだろう。そのようなケースでは、当社のマルチストラテジーを活用いただくことで、幅広い分散投資の機会と安定したリスク調整のリターンを追求することを検討いただきたい。

本記事は2024年6月21日に実施した「J-MONEYカンファレンス」の内容をもとに再構成しました。なお、文中言及されているRBCブルーベイの運用戦略及び運用実績は、情報の提供のみを目的としており、特定の投資商品の取引や資産運用サービスの提供の勧誘又は推奨を目的とするものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。本資料は信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、当社がその正確性、完全性、妥当性等を保証するものではなく、その誤謬についての責任を負うものではありません。本資料に記載された内容は本資料作成時点のものであり、今後予告なく変更される可能性があります。また、過去の実績は将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。なお、当社の書面による事前の許可なく、本資料の全部又は一部を複製、転用、配布することはご遠慮ください。当社との金融商品取引契約の締結にあたっては、下記の投資リスク及びご負担いただく手数料等について契約締結前交付書面等を十分にお読みいただきご確認の上、お客様ご自身でご判断ください。■投資リスク当社との投資一任契約に基づく運用においては、原則、外国籍投資信託を通じて、主に海外の公社債、株式、通貨等の値動きのある資産に投資しますので、基準価額が変動します。従って、契約資産は保証されるものではなく、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は全てお客様に帰属します。主なリスクとして、価格変動リスク、為替変動リスク、金利変動リスク、信用リスク、流動性リスク、カントリーリスク等があります。また、デリバティブ取引等が用いられる場合、デリバティブ取引等の額が委託保証金等の額を上回る元本超過損が生じることがあります。なお、投資リスクは上記に限定されるものではありません。■手数料等投資一任契約に係る費用として、投資顧問報酬をご負担いただきます。また、投資先外国籍投資信託において、運用報酬、管理報酬、信託事務に関する費用等が契約資産から控除されます。これらの費用は、契約内容や運用状況等により変動しますので、その料率、合計額、上限額又は計算方法等を表示することができません。

RBCブルーベイ・アセット・マネジメント

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