ブラウン・アドバイザリー 機動的な資産配分とアクティブな金利リスク管理による柔軟なポートフォリオ運用を実践
景気が減速に向かうと予想されるフェーズにおいては、制約のない十分に分散されたポートフォリオ構築が重要となる。ブラウン・アドバイザリーの村澤俊之氏とライアン・メイヤーバーグ氏は、2024年4月12日に東京都内で開催されたJ-MONEYカンファレンス(主催:J-MONEY)で、同社の概要および同社が提供するグローバル債券戦略について語った。そのサマリーを紹介する。
景気後退の様相に変化が生じた
村澤 ブラウン・アドバイザリーは米国ボルチモアに本社を置く資産運用会社で、米国各地やロンドン、シンガポールなど世界1 8カ所に拠点を展開している。
1998年に米国の投資銀行アレックス・ブラウンからのMBOにより設立されて以来、独立系の運用会社として常に長期的な視点で運用ソリューションを提供してきた。2023年末時点で顧客資産残高の総計は約22兆円に上っている。
2008年に日本向けビジネスを開始し、21年からは日本の運用会社などを通じてグローバル株式戦略や米国株式戦略を提供している。日本の投資家へ向けたサービス拡充と新しい運用戦略の提供を目的として、2023年4月には東京オフィスを開設した。本日は当社のグローバル債券チームのポートフォリオ・マネジャーであるライアン・メイヤーバーグより、「機動的資産配分を行うグローバル債券ポートフォリオの考察」と題してお話をさせていただく。
メイヤーバーグ 17世紀の英国の思想家トマス・ホッブズは、著作『リヴァイアサン』のなかで「政府なくして人間の生活は貧しく厄介で残忍かつ短い」という意味の論考を展開している。このステートメントについて、今日のグローバル経済と照らし合わせながら改めて考えてみたい。
1870年~1945年の75年間に世界の景気サイクルは19回あり、景気拡大の平均継続期間は50カ月(4.2年)だった。その後、1945年~2007年の62年間に景気サイクルは11回あり、景気拡大の平均継続期間は68カ月(5.7年)だった。ここで重要なのは、景気後退の様相に変化が生じたことである。リセッションの平均継続期間を見ると、1870年~1945年では21カ月だったが、1945年~2007年では11カ月と概ね半分の長さに短縮している。
こうした変化の背景として、例えば各国中央銀行の緩和的な金融政策が挙げられる。さらに各国政府が積極的な財政介入を行うとともに、グローバル化を通じて世界的な経済成長を促進し、リセッションのダメージを緩和してきたという側面もある。かくしてホッブズ派が言うように、人々にとって厄介で残忍な経済状況を避けるうえで、政府の役割が非常に重要であることが示されたわけだ。
新たなポートフォリオ管理が重要に
メイヤーバーグ 続いて2007年~22年の期間に世界経済は低インフレ・低ボラティリティの環境が常態化し、とくに08年の世界金融危機後は企業のデフォルト率がかなり低くなった。中央銀行による異例の量的緩和に加えて、銀行や自動車メーカーなどの救済に公的資金が投じられ、コロナ禍においては巨額の財政支援策が展開されたためである。しかし、そんな好ましい環境も転機を迎えつつあるようだ。
ここにきてインフレ懸念が再び浮上し、サプライチェーンの持続可能性が疑問視され、労働者の発言力が増してきている。人口動態は先進国、新興国ともに厳しくなりつつある。各国政府の政策には「内向き」なものが目立ち、結果としてグローバル化が巻き戻され、世界貿易量の減少につながっている。
そんななか、公的な介入は限定的となっている。政府債務が拡大し、中央銀行のバランスシートも膨れ上がり、介入余地が低下しているからだ。しかし、それは金融市場にとって必ずしも悪いことではないかもしれない。いわゆるニューノーマルとは「通常の経済への回帰」を意味する。業績の悪い企業は淘汰され、バリュエーションは投資家のリスクを的確に反映するようになる。今後はより短期的かつボラティリティの高い景気サイクルの可能性が高まってくるだろう。
新しい経済環境下では、これまでとは異なったポートフォリオ管理が求められてくる。適応力と強靭さ、柔軟性を兼ね備えた運用に向けて、制約のない十分に分散されたポートフォリオの構築が重要となる。ベンチマークをアウトパフォームするうえで最も信頼できるのは、投資可能な資産クラスや地域が広範な「グローバル債券運用」である。そして、グローバル債券運用においてはスタイルも重要だ。我々のアプローチは、トップダウンとボトムアップを組み合わせることにより、景気サイクルを通じて好パフォーマンスの達成を目指すものである。
機動的アプローチが資産保全に寄与
メイヤーバーグ 景気サイクルはいくつかのフェーズに分かれており、各フェーズによって必要なリスク水準と資産の組み合わせは違ってくる。例えば、景気の回復フェーズにある場合。世界金融危機後がこれに当たるが、当時、債券のクレジット・スプレッドは過去最大を記録していた。我々はポートフォリオのリスクを最大限に高め、その大半をハイイールド債などのスプレッド商品で取ったが、十分に報われるリターン水準が実現した。
昨今のように景気が減速に向かうと予想されるフェーズでは、我々はポートフォリオのリスクを最低水準まで低下させる。信用リスクを減らし、金利リスクを増やすなど、ポートフォリオのリスク構成は景気の回復期とまったく異なるものとなる。こうした行動には2つの理由があり、ひとつは債券のリプライシングに伴う大幅なリターン低下への備え。もうひとつは、株式と逆相関を持つリターンの確保だ。
ファンダメンタルズのボトムアップ・リサーチを通じて、有望な国や企業をピックアップしていくことも欠かせない。これはポートフォリオのαを創出するうえではもちろん、重大な損失を回避するためにも非常に重要である。今後はリスクのコストが高まっていくなかで、企業のデフォルト率も上昇すると予想される。投資家は個別銘柄のリスクに配慮し、ポートフォリオのリターン低減を避けていかなければならない。
我々が提供する「ブラウン・アドバイザリー・サステイナブル・トータル・リターン債券戦略」では、かなりアクティブに金利リスクを管理し、制約のない柔軟なポートフォリオ運用を実践している。当戦略に比べると、例えばブルームバーグ・グローバル総合トータル・リターン指数などのベンチマークにおいては、デュレーションリスクが相当に高くなっている。
最も重要な事実は、こうした機動的なアプローチを用いることで、我々が顧客の資産保全に寄与してきたということだ。欧米の中央銀行による利上げやロシア・ウクライナ戦争、中東の紛争といった地政学リスクも乗り越えてきた。我々の戦略は過去2年間で、非常に限定的なドローダウンしか経験していない。この2年間は私の23年の運用キャリアにおいて最も厳しい局面だったと思われるが、ベンチマーク対比で年平均190bpsのアウトパフォームを記録している。
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