世界的にESG投資への関心が高まるなか、三菱UFJ国際投信は2020年2月6日、日本初となるS&P/JPXカーボン・エフィシェント指数に連動する投資効果をめざすETF『MAXISカーボン・エフィシェント日本株上場投信』(証券コード:2560)を上場した。同ETFの特色や組成の狙いについて、三菱UFJ国際投信 取締役副社長の西本浩二氏に聞いた。

GPIFが唯一採用した環境株式指数。定量項目で企業を評価

西本 浩二氏
三菱UFJ国際投信株式会社
取締役副社長
西本 浩二

『MAXIS カーボン・エフィシェント日本株上場投信』の組成の狙いは。

西本 近年、欧米の友人との交流を通じ、世界的なESG(環境・社会・ガバナンス)、なかでも気候変動への取り組みの活発化を肌で感じている。一方で日本では気候変動問題に対する関心が依然として低く、海外との問題意識の差には危機感を覚える。

グローバルな金融マーケットの潮流から、日本だけがいつまでも取り残されることはあり得ないと思う。日本の機関投資家は、今後ますますESG投資へ注力していくだろう。その手段の一つとしてお役立ていただけるよう、当ETFを組成した。

S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数の特徴を教えてほしい。

西本 企業の炭素効率性(売上高当たり炭素排出量)に着目した指数だ。TOPIXを構成する2159銘柄を投資ユニバースとし、流動性基準、情報開示基準、不祥事モニタリングによってスクリーニングした1730銘柄で構成されている(2019年12月末時点)。これだけ多くの企業を含むESG関連指数は珍しい。構成銘柄のカバレッジが広いので、十兆円規模の資金でも運用可能だ。キャパシティの大きさも、当指数の魅力といえる。

各銘柄の構成比率は、炭素効率性と環境情報の開示状況を基にウエイト付けをする。その際、セクターによって炭素効率性は大きく異なるが、セクターの構成比率はTOPIXと同様となるように調整し、同一セクター内の銘柄比率は炭素効率性を重視するという点が特徴だ。単に炭素効率性の優れた企業のウエイトを重くするだけでは、効率性の低いセクターの比重が極端に少ない構成になりかねない。しかし、そういった炭素効率性の低いセクターの企業こそ、効率性が改善した際のインパクトは大きい。機関投資家によるエンゲージメントの必要性は高く、指数に組み入れる意義も大きいといえる。

また、ESGの評価基準は定性的なものが多いなか、S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数では定量項目で企業を評価する。透明性が高く明確な基準があることは、企業にとっても改善へのモチベーションになるだろう。同指数は世界最大級のユニバーサル・オーナーであるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国内で唯一選定した環境株式指数だ。GPIFの国内株式残高に占めるESG投資の割合6.0%は、機関投資家にとって一種のベンチマークといえる(2019年3月末時点)。

TOPIXとほぼ同等のパフォーマンス。信託報酬は0.1375%以内(年率、税込)の低水準

パフォーマンスはどうか。

西本 S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数はTOPIXをユニバースとし、同程度のリスク/リターンプロファイルを維持する。その結果、過去10年間においてTOPIXとほぼ同等のパフォーマンスを実現した(図表)。当指数に連動することをめざす『MAXISカーボン・エフィシェント日本株上場投信』は流動性も考慮されていることから、TOPIXに投資するETFの代替としても活用可能だ。ESGの投資枠に縛られない、積極的な運用が可能な点も当ETFのメリットといえる。

S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数とTOPIXのパフォーマンス

コストが非常に低い点も魅力的だ。

西本 同じ指数に連動するETFにおいて、先発した商品ほど信託報酬が高く、後発になるごとにコストが低くなるのが一般的だ。しかし当ETFは、日本初のS&P/JPX カーボン・エフィシェント指数に連動する商品にも関わらず、信託報酬0.1375%以内(年率、税込)、指数商標使用料年率0.015%以内と非常に低廉なコストに抑えた。これは、一部大手のTOPIX連動ETFと同水準だ。

TOPIXと同等のパフォーマンスが期待され、同時に炭素排出量の削減に寄与できる当ETFを投資しやすい費用で提供することは、当社の社会的責任を果たすうえでも意義深い決断となった。現在、機関投資家が運用しているTOPIX連動の資金は巨額だ。そのうちの一部の資金でもこういった指数に振り向けられれば、気候変動問題への好影響が期待できるだろう。

2020年は気候変動対策元年。民間部門の情報開示が加速

今後の機関投資家におけるESG投資の潮流をどう見通すか。

西本 2017年6月のTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による最終提言を受け、国内では2019年5月にTCFDコンソーシアムが設立された。金融機関では、「全銀協」「生保協会」「損保協会」「投信協会」などの協会に加え、「全メガバンク」「大手生保」「大手損保」「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」などが入会し、会員数は飛躍的に増加した。

今後はこれらの金融機関を中心に、民間部門における気候変動リスクおよび企業経営に関する情報開示を求める動きが推進されるだろう。具体的な行動を起こすタイミングとしては、2020年が元年になると見込んでいる。当ETFの上場が、カーボン・エフィシェントの観点から気候変動問題の解決に向けた一助となれば幸いだ。

進化するMAXISシリーズ

三菱UFJ国際投信では、TOPIXや日経225などの既存ETFの商品性改善に日々努めるとともに、投資家の選択肢を広げるべく、新ETFの上場を積極的に行なっている。

2020年1月9日には『2558 MAXIS米国株式(S&P500)上場投信』、『2559 MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信』を信託報酬0.0858%以内(年率、税込)で上場した。これらにより、MAXISシリーズのラインナップは20本、純資産総額4兆円を突破した(2020年1月10日時点)。
https://maxis.mukam.jp

「S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数」は、S&P Globalの一部門であるS&P Dow Jones Indices LLCまたはその関連会社(「SPDJI」)および株式会社日本取引所グループの商品です。「東証株価指数(TOPIX)」に関する知的財産権その他一切の権利は東京証券取引所に帰属します。

【投資リスク】基準価額の変動要因:基準価額は株式市場の相場変動による組入株式の価格変動等により上下します。また、組入有価証券等の発行者等の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価の影響を受けます。これらの運用により信託財産に生じた損益はすべて投資者のみなさまに帰属します。したがって、投資者のみなさまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失を被り、投資元本を割り込むことがあります。投資信託は預貯金と異なります。主な変動要因は、価格変動リスク、信用リスク、流動性リスクです。上記は主なリスクであり、これらに限定されるものではありません。くわしくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。

【お客さまにご負担いただく費用について】

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お客さまが保有期間中に信託財産で間接的に負担する費用
運用管理費用(信託報酬):以下により計算される①と②の合計額とします。①日々の純資産総額に対して、年率0.1375%(税抜 年率0.125%)以内をかけた額 ②有価証券の貸付の指図を行った場合、その品貸料の55%(税抜50%)の額
その他の費用・手数料:監査費用、有価証券等の売買委託手数料、保管費用、信託事務にかかる諸費用等。
*上記の費用・手数料については、売買条件等により異なるため、あらかじめ金額または上限額等を記載することはできません。受益権の上場費用、追加上場料(追加上場時の増加額に対して0.00825%(税抜 0.0075%))、年間上場料(毎年末の純資産総額に対して最大0.00825%(税抜 0.0075%)
対象指数の商標(これに類する商標を含みます。)の使用料(信託財産の純資産総額に上限年率0.015%をかけた額)

※上記の費用(手数料等)については、保有・約定金額または保有期間等により異なるため、あらかじめ合計額等を記載することはできません。

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