HSBCグローバル・アセット・マネジメントのマルチアセット運用戦略の特徴について、同社のドイツ拠点で運用を担当するババック・キアニ氏に話を聞いた。(取材日:2018年5月11日)

ババック・キアニ氏
HSBCグローバル・アセット・マネジメント
ディレクター ポートフォリオ・マネジメント共同責任者
ババック・キアニ

欧州の機関投資家はマルチアセット運用をどう見ているか。

キアニ 低金利の環境が続くなかで、多くの投資家がベンチマークありきの運用から、絶対収益追求型にシフトしつつある。これまでは債券中心の運用だった投資家が、マルチアセット運用に軸足を移し始めているのがここ数年の流れだ。現在、HSBCの資産残高のなかでマルチアセット運用は約17%を占めており、近年急速に伸びている。

各資産の見通しやリスク要因について。

キアニ 全体像としてはリスク資産を選好している。総じて株式には強気、先進国国債には弱気な投資スタンスを取っている。一方で新興国の現地通貨建て債券は強気に見ている。リスク要因としては、政治リスクがボラティリティに影響を与える可能性がある。またインフレ率が市場予想よりも上振れするリスクがあると見ている。

マルチアセット運用戦略と運用体制の特徴とは。

キアニ 過去の市場データを基に各資産のリスク寄与度が均等なリスクパリティポートフォリオを組み、そこに我々のハウスビューとローカルビューを加えて最終ポートフォリオを決めるというプロセスが特徴だ。データだけに頼らず、市場の短期的な動きを加味したうえで投資判断を行っている。

ハウスビューとは、世界中の運用責任者が月次で戦略会議を行い、そこで決定されるアセットクラスごとの方向性のことだ。そのグローバルなビューを踏まえて、ドイツ国内での会議で各アセットクラスの責任者が話し合い、ローカルビューが決められる。

我々のマルチアセット運用では、顧客のリスク許容度に基づき、リスクコントロールと安定的なリターン獲得の両立を目指す。バリュー・アット・リスクによる厳密なリスク管理を行っており、2009年の運用開始以降、2017年度を除いてプラスの絶対リターンを継続してきた。顧客のガイドラインに応じて、テーラーメイドでポートフォリオを組成できるのも我々の強みだ。