なぜ平均残存期間が1~3年と短い債券に投資するのか。広範な債券セクターのなかで、証券化商品にフォーカスする理由は何か。リムロック・キャピタル・マネジメントLLCのポール・ウエストヘッドCEOは、2025年10月9日に東京都内で開催されたJ-MONEYカンファレンス(主催:J-MONEY)で、マルチセクター短期デュレーション運用の優位性について語った。サマリーを紹介する。

米国1~3年債の有効性が際立つ

ポール・ウエストヘッド氏
リムロック・キャピタル・マネジメントLLC
CEO
ポール・ウエストヘッド

リムロック・キャピタル・マネジメントLLCは1999年に設立された米国の資産運用会社で、債券のマルチセクター短期デュレーション運用に強みを持つ。運用資産総額は約23億ドルにのぼり、そのうち20%が日本の投資家によるものである。債券の本質的価値に重きを置いたバリュー投資のアプローチに基づき、平均残存期間が短い債券にフォーカスするとともに、満期保有前提で広範な債券セクターに投資することで高度な分散を図り、元本毀損リスクの回避にも注力している。

本日ご紹介する『リムロック・ローボラティリティ・ファンド』では、投資する債券の平均残存期間は1~3年である。1954年1月~2025年8月の長期間における米国債の年限別年率リターンと、リスク(年率標準偏差)の関係を見てみよう。年限が1カ月や3カ月、6カ月の債券に比べて、1年の債券ではボラティリティがそれほど高まらないにもかかわらず、リターンが大きく向上することが分かる。

同じような関係性は年限が3年程度の債券まで続くのだが、デュレーションがそれ以上長くなると、リターンには大した向上が見られず、逆にボラティリティが大幅に高まってしまう。これは米国債イールドカーブ上の1~3年ゾーンに、比類なき有効フロンティアが存在することを示唆している。残存期間の短い債券は、満期償還や期限前償還によって資金化が進むため、市場流動性への依存度が低いというメリットもある。

毎月4%分の元本償還と金利収入

我々はより広範な投資機会を求めて様々な債券セクターに投資するが、ここで重要なポイントは、セクター・アロケーションは行っていないという点だ。ボトムアップアプローチを通じて、あくまでも債券一つひとつの担保価値やキャッシュフローなどを分析し、投資の可否を判断している。

『リムロック・ローボラティリティ・ファンド』では現在、エクスポージャーの8割以上が証券化商品で占められ、コーポレート・クレジットの比率は低下しつつある。残存期間の短い債券が定期的に満期を迎えることに加えて、RMBS(住宅ローン担保証券)など元本償還が毎月ある債券を多く保有することで、ファンドに安定したキャッシュフローが継続的にもたらされる。

元本償還と金利収入による毎月のキャッシュフローは過去の平均が4.3%、現在は4%程度となっている。また、毎月得られるキャッシュを使って割安な銘柄に再投資するため、ポートフォリオの保有銘柄は柔軟に変動する。12カ月間で見ると、保有銘柄のおおむね半分が入れ替わる計算である。

2006年末~2025年8月の期間で、証券化商品とハイイールド社債のバリュエーションを、スプレッド水準の「平均パーセンタイル」で確認してみる。平均パーセンタイルは、各商品の現在のスプレッド水準が過去と比べてどの水準に位置しているかを示す。

2008年に世界金融危機が発生した際に、ハイイールド社債のスプレッドは1800bps(ベーシスポイント)まで上昇した。これがハイイールド社債の100パーセンタイルに相当するが、現在では2パーセンタイルまで縮小し、バリュエーションはきわめて割高となっている。証券化商品においても同様にスプレッドの縮小は進んでいるが、それでもまだ30パーセンタイル程度と相対的な割安さが目立つ。そのため、我々は現時点で証券化商品に有望な投資機会を見出し、大きくフォーカスしているわけである。

2006年末~2025年8月の期間において、当ファンドのパフォーマンスを主要な債券指数と比較してみよう。ドルベースの年率ネットリターンは、ブルームバーグ米国総合指数やブルームバーグ・グローバル総合指数を大きく上回っている。また、期間中に米国10年債金利が上昇したいずれの局面においても、ファンドのパフォーマンスは影響を受けていないことが分かる。

■『リムロック・ローボラティリティ・ファンド』の円ベース利回り(2025年8月時点)
■『リムロック・ローボラティリティ・ファンド』の円ベース利回り(2025年8月時点)
出所:リムロック・キャピタル・マネジメントLLC
1. 債券商品の利回りは最終利回り。
2. デュレーションは各指数とリムロック・ローボラティリティ・ファンドの修正デュレーション。赤=コーポレートクレジット指数、オレンジ=債券総合指数、紺=リムロック・ローボラティリティ・ファンド(円)2025年8月時点、費用控除前、為替ヘッジ後。

円ベースの年率ネットリターンを、前述した2つの指数やNOMURA-BPI総合指数と比較すると、設定来、過去1年および過去10年の全てで3指数を上回っている。こうした好パフォーマンスは、各指数と同様のボラティリティ・プロファイルによって実現されており、結果としてシャープレシオやソルティノレシオはいずれの指数よりも高くなっている。

円ヘッジベースでも魅力的な利回り

2025年8月時点で、当ファンドのドルベース利回りは年8.4%となっている。これを円ベースに換算し、諸費用を差し引くと、ネットの円ベース利回りは3.7%だ。当ファンドでは設定来、伝統的な米国総合債券ETFを平均350bps上回る利回りを提供しており、それが円ベースの魅力的なパフォーマンスに繋がっていると言える。

当ファンドがこうした高い利回りを、主要な債券指数よりも短いデュレーションで、低ボラティリティを維持しながら達成している点にはぜひご注目いただきたい。

金融市場には現在、様々な不確実性があふれている。例えば米国トランプ政権による経済政策やFRB(米連邦準備制度理事会)への政治的干渉、粘着性のあるインフレ、米国株やコーポレート・クレジット市場の高バリュエーションなどである。こうした複数の不確実性を背景に、米国金利のボラティリティは高止まりしているが、それは我々にとって投資機会に繋がることを意味する。高ボラティリティに耐えられない投資家が、我々の希望する価格で債券を売りに走る傾向が強まるからだ。

各金融市場では今後12カ月以内に米国が景気後退に陥る可能性を様々な形で織り込んでおり、それらを通じて投資家が見込む景気後退確率を推定することができる。例えばS&P500種指数では平均PER(株価収益率)の倍率が高いことからも分かるように、推定される確率は8%と低い。一方で、米国5年債の価格にはFRBによる今後の利下げが織り込まれており、そこから景気後退確率を推定すると60%になる。

株式投資家が楽観的で、債券投資家が悲観的というのは、いわば世の常である。しかしながら、S&P500種指数と米国5年債が織り込む景気後退確率の差は、過去の例と比べてもあまりに大きい。したがって、当面はよりディフェンシブな運用にフォーカスする必要があるだろう。我々が毎月獲得しているキャッシュフローは、いざという時の備えになると同時に、投資債券のスプレッドが今後劇的に改善した際には大きなリターンの源泉にもなる。

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